ハラスメント問題の留意点

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INDEX


はじめに

  1. メンタルヘルス問題をめぐる状況
  2. メンタルヘルス防止のためのハラスメント対策
  3. パワーハラスメント対策
  4. セクシャルハラスメント対策
  5. マタニティハラスメント対策
  6. 結語

 はじめに

従業員のメンタルヘルス対策をどうすればよいだろうか…
従業員からパワーハラスメント被害の訴えがあった…
メンタルヘルスを患った従業員が復職希望を出してきたがどうすればいい…

企業は人の集合体であり、労使関係が伴います。そして、労使関係の発生に伴い、労働問題も不可避的に発生します。企業経営を続けていく上では、労働問題を避けて通ることはできないといえます。

一方、些細と思われた労働問題への対応を誤れば、会社の経営全体を揺るがすトラブルにも発展しかねません。

労働問題は、労働契約法等、労働諸法によって規律されています。

労働諸法では、労働者保護に重点が置かれています。したがって、労働問題となった場合、経営者側は厳しい立場に置かれていることを認識する必要があります。

大切なことは、まず未然に労働トラブルの発生を防ぐことです。そのためには、職場環境を整備するとともに、就業規則や秘密保持規程など、十分な社内ルールを整備することが必要です。

また、すでに労働問題が起きてしまった場合には、問題の原因を見極めた上で、適切な対応をとる必要があります。

労働問題の解決方法は、交渉のほか、ADR、民事訴訟や労働審判等、多岐にわたります。個別の事案に応じて、適切な解決方法を見極める必要があります。

私たちは、労務トラブルには数多く携わってきました。労務問題を円滑に進めるためにはいくつものポイントがあります。

本コラムでは、労務問題の典型例であるハラスメント問題について解説いたします。なお、本コラムにおける法規制及び法解釈については、今後の法改正・解釈の変遷や議論の集積等により変更される可能性があることにご留意ください。

 

 1. メンタルヘルス問題をめぐる状況

1. メンタルヘルス不調の労働者の増加


① ハラスメントトラブルの増加傾向

人手不足が叫ばれる昨今、労働者の権利意識の高まりとともに、労務トラブルは年々増加傾向にあります。

労務トラブルの中でも、「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は平成14年度には約6600件、平成23年度には約4万5900件と増加しています (厚生労働省発表)。

② 被害の深刻化

そして、労務トラブルは年々増加傾向にあるだけでなく、その被害も深刻化しています。ときには、労務トラブルが、うつ病、自傷行為・自殺等、深刻な被害にまで発展するケースも少なくありません。

③ 被害者だけでなく加害者の人生にも影響する

また、労務トラブルは、被害者だけの問題ではない、ということも特徴として挙げられます。

例えば、パワーハラスメントが問題となるケースでは、パワハラ加害者は社内では高評価のケースもあります。そして、パワハラの申告によって、加害者も左遷・降格等を受けることがありえます。

④ 当事者だけでなく会社にも影響する

さらに、労務トラブルは、従業員同士の問題にはとどまりません。

被害者の訴えの対象が加害者だけでなく使用者にも向かった場合、ハラスメント被害がきっかけにその他の訴えも加わってくる可能性があります。例えば、上司のパワーハラスメントがきっかけとなって被害者従業員が提訴する場合、上司だけではなく会社も訴えた上、会社に対しては未払残業代請求もあわせて行ってくることがありえます。

 

2. メンタルヘルス問題に伴う責任


このように、労務トラブルがひとたび発生すれば、従業員同士のトラブルにとどまらず、会社全体にも波及し、ひいては会社の運営にも深刻な影響を及ぼしかねません。

メンタルヘルスに起因する労務トラブルが発生すれば、会社も以下のような責任を負うリスクが生じます。

① 民事責任
(ア)損害賠償責任等

② 行政責任
(ア)労基署による行政指導
(イ)企業名公表

③ 刑事責任
(ア)労基法違反
(イ)書類送検とは限られない(逮捕・起訴もありうる)

④ 信用リスク
(ア)企業名公表
(イ)SNS、インターネットによる拡散
(ウ)「ブラック企業」扱い

ハラスメント問題の留意点

そこで、労務トラブルの大きな原因の一つである、メンタルヘルス対策を意識することが重要となります。

 

3. 従業員の健康管理のポイント


① 従業員の健康を守るためには企業が黒字である必要

もっとも、従業員のメンタルヘルス対策を実施するためには、どうしてもコストがかかります。

従業員の健康を守るためには、会社の経営状況自体も健康である必要があります。

そのためにも、企業の業績を上げることを常に意識しなければなりません。

 

② 業績改善の土台は従業員の健康

一方、企業の業績を上げるために、従業員に無理を強いてばかりでは、何のために企業の業績を上げる必要があるのかという目的と矛盾することになります。

そして、企業が業績を上げるためには、従業員が健康を維持しながら継続的に業務に取り組むことができる環境を作らなければなりません。

企業が業績を改善する土台は、従業員の健康にあることに留意する必要があります。

③ 従業員の健康の土台は信頼関係

そして、従業員の健康管理を適切に行うためには、企業と従業員、双方が何を目標として活動しているのかを考えなければなりません。

企業と従業員、双方の目標が合致するためには、信頼関係を基礎とすることが大切です。

 

4. ストレスチェック制度の概要


なお、メンタルヘルス対策の施策として、ストレスチェック制度が導入されました。

ストレスチェック制度とは、ストレスに関する質問票(選択回答) に労働者が記入し、それを集計・分析することで、自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査を指します。

労働安全衛生法の改正により2015年12月1日より施行・義務化されています。

労働者が50人以上いる事業所では、2015年12月から、毎年1回、この検査を全ての労働者に対して実施することが義務付けられます(契約期間が1年未満の労働者や、労働時間が通常の労働者の所定労働時間の4分の3未満の短時間労働者は義務の対象外)。

ストレスチェック制度は、「うつ」などのメンタルヘルス不調を未然に防止するための仕組みとなっています。

ストレスチェック制度は、2015年12月1日から2016年11月30日までの間に、全ての労働者に対して1回目のストレスチェックを実施する必要があります。

 

 2. メンタルヘルス防止のためのハラスメント対策

1. ハラスメントを巡る最近の傾向


前記のとおり、ハラスメントトラブルは年々増加傾向にあります。そして、ハラスメント被害は深刻化を増しています。概要を整理すれば、以下のようになります。

ハラスメント問題の留意点

 

2. ハラスメントの典型例


メンタルヘルスの原因となるハラスメントには様々な種類がありますが、特に典型的なハラスメントは以下の3つになります。

① パワーハラスメント
② セクシャルハラスメント
③ マタニティハラスメント

 

3. ハラスメントの責任類型


各ハラスメントが発生した場合の責任類型を整理すると、以下のようになります。

それぞれの場面や当事者の関係性によって、いずれの責任類型が主な問題となるかは異なりますが、ハラスメントトラブルが発生した場合には、以下のいずれの責任が問題となりうるかは注意する必要があります。

(1)加害者の法的責任
  ① 労働契約上の責任(就業規則違反)
  ② 民事責任
  ③ 刑事責任
(2)使用者の法的責任
  ① 民事責任
  ② 刑事責任
  ③ 行政責任
(3)労災補償
(4)加害者の道義上の責任
(5)使用者の経営責任・レピュテーションリスク

上記責任類型に留意した上で、典型的な各ハラスメントについて説明します。

 

 3. パワーハラスメント対策

1. パワーハラスメントとは


パワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます。

パワーハラスメントにあたるかどうかを判断するポイントは、以下の2点です。

  1. 上司から部下に対するものに限られず、職務上の地位や人間関係といった「職場内での優位性」を背景にする行為が該当すること
  2. 業務上必要な指示や注意・指導が行われている場合には該当せず、「業務の適正な範囲」を超える行為が該当すること

ミスを犯した部下に注意や指導をすること自体は、職務の円滑な遂行上、一定程度許容されます。

よくある誤解として、注意や指導すべてがパワーハラスメントとして許されないと勘違いする方がいますが、適切な注意や指導であればパワーハラスメントには該当しないことになります。

 

2. 企業のパワーハラスメント防止義務


企業には、このようなパワーハラスメントが職場内で行われないよう防止すべき義務があります。パワーハラスメント防止義務に関する裁判例として、参考となるものをご紹介します。

① 就業(職場)環境配慮義務

【福岡セクハラ事件・福岡地判平4.4.16労判607号】

使用者は、労働者が労働するにあたり「その生命、身体等の安全の確保」をするよう配慮すべき義務があり(労契法5条)、その具体的内容の一つとして、労務遂行に関連して労働者の人格的尊厳を侵し、その労務提供に重大な支障を来す事由が発生することを防ぎ、又はこれに適切に対処して、職場が労働者にとって働きやすい環境を保つよう配慮する注意義務があると解される。

② 職場いじめ防止義務

【誠昇会北本共済病院事件(さいたま地判平16.9.24労判883号】

使用者は、「雇用契約に基づき、信義則上、労務を提供する過程において、 労働者の生命及び身体を危険から保護するように安全配慮義務を尽くす責務 を負担していたと解される。具体的には、職場の上司及び同僚からのいじめ行為を防止して、労働者の生命及び身体を危険から保護する安全配慮義務を負担していた」

【日本土建事件(津地判平21.2.19労判982号】

「職場内の人格権侵害が生じないように配慮する義務としてのパワーハラスメント防止義務に違反した」

 

3. パワーハラスメント6類型


パワーハラスメントには様々な態様がありますが、厚生労働省のホームページでは、以下の6つの類型に分類されています。

  1. 身体的な攻撃
    暴行・傷害
  2. 精神的な攻撃
    脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
  3. 人間関係からの切り離し
    隔離・仲間外し・無視
  4. 過大な要求
    業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
  5. 過小な要求
    業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
  6. 個の侵害
    私的なことに過度に立ち入ること

 

4. パワーハラスメント違法性の判断基準


前記のとおり、すべての注意や指導がパワーハラスメントに該当するわけではありません。

パワーハラスメントは人格権侵害の一類型と考えられており、以下の3つの要件を満たした場合に違法性があると判断されます。

  1. 問題となっている業務命令等が、業務上の必要性に基づいていないもの
  2. 外形上、業務上の必要性があるように見える場合であっても、当該命令等が不当労働行為目的や退職強要目的など、社会的に見て不当な動機・目的に基づいてなされていること
  3. 当該命令等が労働者に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を与えること

以上の3つの要件を整理すると、以下のようになります。

ハラスメント問題の留意点

5. パワーハラスメントの裁判例


このように、パワーハラスメントはその判断が微妙なところもあり、適法か違法かの判断に悩ましいケースもあります。

参考までに、パワーハラスメントが肯定された裁判例と、否定された裁判例を紹介します。

【パワーハラスメント 肯定例】

  1. いわゆる「仕事外し」を原則として違法と判断した裁判例(松蔭学園事件(東京地裁平成4年6月11日労判612号、東京高裁平成5年11月12日判タ849号)参照)
  2. 上司の部下に対する電子メールでの「やる気がないならやめるべき」といった言葉を含む叱咤督励について、許容限度を超えて名誉感情を侵害したとして不法行為責任を肯定した裁判例(A保険会社上司事件(東京高裁平成17年4月20日労判914号))

【パワーハラスメント 否定例】

上司による厳しい指導・指摘は、上司がなすべき業務上の指示の範囲にとどまるものであるとして、安全配慮義務違反及び不法行為責任を否定した裁判例(医療法人財団健和会事件(東京地裁平成21年10月15日労判999号))

 

6. パワーハラスメントに伴う会社のリスクと対策


パワーハラスメントが発生した場合、会社には以下のリスクが生じる恐れがあります。

(1)不法行為責任

  • 使用者責任(民法715条)

(2)債務不履行責任

  • 使用者は、労働者の安全に配慮する義務を負っている(労働契約法5条)
  • パワハラが生じた場合、職場環境整備義務及び職場環境調整義務に違反したものとして、債務不履行責任(民法415条)を問われる場合があり得る
  • 従業員が派遣労働者であった場合、派遣会社(派遣元)だけでなく、派遣先会社の責任でもあるため、派遣先でパワハラが生じた場合、派遣先も責任を負う可能性がある

(3)レピュテーションリスク

  • パワハラが訴訟に発展した場合、「ブラック企業」等とレッテルを貼られるおそれがある

 

7. パワーハラスメント発生時の対応


パワーハラスメントトラブルが発生した場合には、会社としては迅速に対応する必要があります。

従業員同士の問題であるとして会社側で取り合わないような姿勢を示していれば、会社側の安全配慮義務違反を問われるおそれもあります。

また、会社が被害者の受けた苦痛やプライバシーに配慮すべきであることは当然ですが、十分な事実関係も調査・確認せずに一方的に加害者とされる側を処分してしまうと、今度は加害者とされる側から適正手続違反に基づく責任追及をされるおそれがあります。

会社としては被害者側と加害者側、双方に対して誠実に対応しなければならず、難しい判断を迫られることになります。

(1)ヒアリングの実施

  • 会社が迅速な対応を怠った場合、不作為を理由として損害賠償責任を負う可能性がある(横浜地裁平成16年7月8日判時1865号、大阪地裁平成21年10月16日参照)

(2)事実関係の精査

  1. 客観的資料の収集(メール、メモ、写真等)
  2. 相談者からのヒアリング
  3. 加害者からのヒアリング
  4. 第三者(同僚等)からのヒアリング

(3)社内処分の検討

  • 加害者が被害者に対して逆恨みをするケースも(名誉毀損等)
  • 懲戒処分の妥当性の検討(過去の事例とのバランス)
  • 被害者保護の徹底

(4)再発防止策の構築

  1. 管理職を対象にしたパワハラについての講演や研修会の実施
  2. 一般社員を対象にしたパワハラについての講演や研修会の実施
  3. パワハラについての相談窓口の設置
  4. 就業規則等の社内規程への盛り込み
  5. アンケート等による社内の実態調査

 

 4. セクシャルハラスメント対策

1. セクシャルハラスメントとは


セクシャルハラスメントとは、相手方の意に反する性的言動をいいます。

セクシャルハラスメントは、パワハラと異なり、不法行為上の違法性があるとまでは言えなくても、被害者は、その主観に基づき必要な措置をとるよう行政手続や労働審判で要求することが可能と考えられます。

この点、性に関する言動に対する受け止め方には個人差や男女間で差があり、セクハラにあたるか否かについては、(被害者である)相手の判断が重要である旨明示されていることが参考となります (人事院規則10−10「セクシュアル・ハラスメントをなくすために職員が認識すべき事項についての指針」 )。

 

2. 企業のセクシャルハラスメント防止義務


企業には、このようなセクシャルハラスメントが職場内で行われないよう防止すべき義務があります。

セクシャルハラスメント防止義務に関する裁判例として、参考となるものをご紹介します。

【福岡セクハラ事件・福岡地判平4.4.16労判607号】

使用者は、労働者が労働するにあたり「その生命、身体等の安全の確保」 をするよう配慮すべき義務があり(労契法5条)、その具体的内容の一つとして、労務遂行に関連して労働者の人格的尊厳を侵し、その労務提供に重大 な支障を来す事由が発生することを防ぎ、又はこれに適切に対処して、職場が労働者にとって働きやすい環境を保つよう配慮する注意義務があると解される。

 

3. セクシャルハラスメント典型例


セクシャルハラスメントの典型例として、以下のものが挙げられます。

① 身体的接触
  抱きつき、キスをする 等

②   性的発言

  • 恋人の有無についての質問
  • 容貌についての批評
  • 結婚・出産について尋ねる 等

③   異性関係に関する噂の流布

 

4. セクシャルハラスメント違法性の判断基準


セクシャルハラスメントも、パワハラと同様、人格権侵害の一類型とされています。

セクシャルハラスメントの判断基準については、(被害者・加害者)「両当事者の職務上の地位・関係、行為の場所・時間・態様、被害者の対応等の諸般の事情を考慮して、行為が社会通念上許容される限度を超え、あるいは社会的相当性を超えると判断されるときに不法行為が成立する。」(金沢セクハラ事件(名古屋高裁金沢支部平成8年10月30日労判707号))とされています。

 

5. セクシャルハラスメントに伴う会社のリスクと対策


セクシャルハラスメントが発生した場合、会社には以下のリスクが生じる恐れがあります。

(1)不法行為責任

  • 使用者責任(民法715条)

(2)債務不履行責任

  • 使用者は、労働者の安全に配慮する義務を負っている(労働契約法5条)
  • セクハラが生じた場合、職場環境整備義務及び職場環境調整義務に違反したものとして、債務不履行責任(民法415条)を問われる場合があり得る
  • 従業員が派遣労働者であった場合、派遣会社(派遣元)だけでなく、派遣先会社の責任でもあるため、派遣先でセクハラが生じた場合、派遣先も責任を負う可能性がある

(3)行政指導及び企業名公表等

  • セクハラに該当する場合、厚生労働大臣(実際には権限を委任された都道府県労働局長)による行政指導(男女雇用機会均等法29条)の対象となり、企業名の公表制度の対象となる(同法30条)
  • 都道府県労働局長による紛争解決の援助の対象ともなる(同法16条)

(4)レピュテーションリスク

  • 企業イメージの悪化・職場環境の悪化
  • 人材の流出、採用活動への影響

 

6. セクシャルハラスメント発生時の対応


セクシャルハラスメントが発生した場合には、会社としては、迅速に対応するとともに、被害者だけでなく加害者側にも配慮して対応する必要があることは、パワーハラスメントの場合と変わりません。

(1)ヒアリングの実施

  • 会社が迅速な対応を怠った場合、不作為を理由として損害賠償責任を負う可能性がある(横浜地裁平成16年7月8日判時1865号、大阪地裁平成21年10月16日参照)

(2)事実関係の精査

  1. 客観的資料の収集(メール、メモ、写真等)
  2. 相談者からのヒアリング
  3. 加害者からのヒアリング
  4. 第三者(同僚等)からのヒアリング

(3)社内処分の検討

  • 加害者が被害者に対して逆恨みをするケースも(名誉毀損等)
  • 懲戒処分の妥当性の検討(過去の事例とのバランス)
  • 被害者保護の徹底

4 再発防止策の構築

  1. 管理職を対象にしたセクハラについての講演や研修会の実施
  2. 一般社員を対象にしたセクハラについての講演や研修会の実施
  3. セクハラについての相談窓口の設置
  4. 就業規則等の社内規程への盛り込み
  5. アンケート等による社内の実態調査

 

7. セクシャルハラスメントへの事前措置


なお、パワーハラスメントとは異なり、セクシャルハラスメントの場合、使用者側は、セクシャルハラスメント問題が起きないよう事前措置を講じることが要請されています。

以下の4つは、「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成18年厚生労働省告示第615条) による使用者の事前措置の義務とされるものです。

  1. セクハラがあってはならない旨の事業主の方針の明確化とその周知・啓発
  2. 相談に応じ適切に対処するために必要な体制の整備(相談窓口、担当者、人事部門との連携等)
  3. 事後の迅速かつ適切な対応(事実関係の迅速・正確な確認、行為者・被害者に対する適正な措置、再発防止措置)
  4. 相談や事後対応におけるプライバシーの保護、相談や事実確認への協力を理由とする不利益扱い禁止の周知・啓発

 

 5. マタニティハラスメント対策

1. マタニティハラスメントとは


マタニティハラスメントとは、以下の2つを指します。

  1. 妊娠・出産したこと、育児や介護のための制度を利用したこと等に関して、上司・同僚が就業環境を害する言動
  2. 妊娠・出産・育休などを理由とする、解雇・雇い止め・降格などの不利益な取扱い

 

2. マタニティハラスメント典型例


マタニティハラスメントの典型例は、以下のようなケースを指します。

事由

不利益取扱い

【妊娠中・産後の女性労働者】

  • 妊娠・出産
  • 妊婦健診などの母性健康管理措置
  • 産前・産後休業
  • 軽易な業務への転換
  • つわり、切迫流産などで仕事ができない、労働能率が低下した
  • 育児時間
  • 時間外労働、休日労働、深夜業をしない
  • 解雇
  • 雇止め
  • 契約更新回数の引き下げ
  • 退職や正社員を非正規社員とするような契約内容変更の強要
  • 降格
  • 減給
  • 賞与等における不利益な算定
  • 不利益な配置変更
  • 不利益な自宅待機命令
  • 昇進・昇格の人事考課で不利益な評価を行う
  • 仕事をさせない、もっぱら雑務をさせるなど就業環境を害する行為をする

【子どもを持つ労働者】

  • 育児休業
  • 短時間勤務
  • 子の看護休暇
  • 時間外労働、深夜業をしない

 

3. マタニティハラスメント違法性の判断基準


前記2記載の不利益な取扱いは、原則として違法となります。

会社として不利益な取扱いに該当するおそれのある行為をする場合には、労働者からの同意書を取り付けておくことが望ましいといえます。

 

4. マタニティハラスメントに伴う会社のリスクと対策


マタニティハラスメントが発生した場合、会社には以下のリスクが生じる恐れがあります。

(1)不法行為責任

  • 使用者責任(民法715条)

(2)債務不履行責任

  • 使用者は、労働者の安全に配慮する義務を負っている(労働契約法5条)
  • セクハラが生じた場合、職場環境整備義務及び職場環境調整義務に違反したものとして、債務不履行責任(民法415条)を問われる場合があり得る
  • 従業員が派遣労働者であった場合、派遣会社(派遣元)だけでなく、派遣先会社の責任でもあるため、派遣先でセクハラが生じた場合、派遣先も責任を負う可能性がある

(3)行政指導及び企業名公表等

  • セクハラに該当する場合、厚生労働大臣(実際には権限を委任された都道府県労働局長)による行政指導(男女雇用機会均等法29条)の対象となり、企業名の公表制度の対象となる(同法30条)
  • 都道府県労働局長による紛争解決の援助の対象ともなる(同法16条)

(4)レピュテーションリスク

  • 企業イメージの悪化・職場環境の悪化
  • 人材の流出、採用活動への影響

 

5. マタニティハラスメントへの事前措置


なお、マタニティハラスメントに関し、男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法の改正により平成29年1月1日より以下の対応が義務付けられた点にご留意ください。

  1. 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
  2. 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  3. 職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応
  4. 職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置

※これらの措置は、業種・規模に関わらずすべての事業主に義務付けられる

 

 6. 結語

以上が各ハラスメント問題の留意点となります。ハラスメント問題のポイントを整理すれば、以下のとおりです。

1 メンタルヘルス対策への心構え

2 各ハラスメントに伴う法的リスクの整理

3 ハラスメント予防体制を構築することの重要性

当事務所では、メンタルヘルス対策を始め、各労務問題でお悩みの企業様のご相談・ご依頼は随時お受けしています。

メンタルヘルス対策や労務管理は企業の健全・安定的な運営を維持するために必要不可欠な要素といえます。労務管理でお悩みの企業様は、お気軽にご相談ください。

 
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