ポイント
  1. 製品偽装は、特定の分野だけに限って起きるものではありません。常に自社にも起こる可能性があることを念頭に起きましょう。
  2. 製品偽装を規制する法律は、多数ありますので、法令調査を慎重かつ丁寧に行いましょう。
  3. コンプライアンスリスクとして①調査報告書の適正かつ公正さ、②民事裁判、③刑事裁判、④行政対応、⑤株主対応(株主代表訴訟を含む)、⑥レピュテーションリスクという6つに整理できます。

製品偽装は分野に関係なく発生します

製品偽装は、特定の商品、分野だけで起きるものではありません。例えば、「地元で取れた新鮮な素材を使用」と表示しながら、輸入した材料を使用した製品を製造、出荷すること、建築基準法上の耐震基準を満たしていないにもかかわらず国が定めた耐震構造以上の基準を備えた安心安全な建築物として販売すること、カシミア以外の素材を使用しているにもかかわらずカシミア100%と表示したセーターを販売することなど例を上げると枚挙にいとまがありません。

法律による表示規制

以下では、法律の規制をいくつか紹介します。表示規制は、様々法律が関連しますので、販売する商品に応じた法令調査を慎重かつ丁寧に行う必要があります。

食品表示法

食品衛生法、日本農林規格等に関する法律(JAS法)、健康増進法の食品の表示に関する規定を統合した法律となります。

平成25年6月28日に公布され、平成27年4月1日に施行されました。なお、経過措置は令和2年3月末日となっています。

不正競争防止法

原産地、品質等を誤認させる表示や、他社の有名なロゴ等を不正に使用する行為等が禁止されています。

不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)

広告や宣伝等の実際の表示よりも良いものでもお得でもなかったような一般消費者に誤認される表示を規制しています。

民法

虚偽表示を行えば、契約の錯誤無効や詐欺による取消されます。

消費者契約法

業者が商品の内容・品質・価格・支払方法などについて事実と違う説明をし、消費者が業者の説明により誤認した場合には契約を取り消す等の規制をしています。

刑法・軽犯罪法

欺罔により錯誤を生じさせて財産的処分行為を行わせることは刑法の詐欺罪に該当します。

また、公衆に対して物を販売し、若しくは頒布し、又は役務を提供するにあたり、人を欺き、又は誤解させるような事実を挙げて広告をした者は軽犯罪法第1条第34号に該当します。

コンプライアンスリスク

改めて製品偽装の不祥事事例で紹介したコンプライアンスリスクを整理します。

① 調査報告書の適正かつ公正

調査報告書の内容の適正さ、調査チームの調査対象企業からの独立性・中立性・公正さを備えたメンバーであることが大切です。

調査報告書に対する信頼が低ければ、更に別の法律事務所に対して依頼するなどの費用、時間がかかり、企業としての評価を下げます。

② 民事裁判

違約金を支払うよりも手付解除により低額で金銭的解決ができるにもかかわらず、違約金を支払う選択をしても損害軽減義務が認められなかったと判断する裁判例から、想定される金銭的賠償額以上に金銭的リスクを見積もる必要があります。

③ 刑事裁判

結論として罰金1000万円になりましたが、不正競争防止法第22条第3号では、3億円以下の罰金と定められています。また、犯罪事実と認定されますので、ブランドが著しく毀損されます。

④ 株主対応

株主に対する説明責任だけではなく、取締役に対する責任追及の訴えに対する対応等を迫られます。

また、監査役の調査の結果としてにより責任追及の訴えを提起しないと判断しても、株主から調査内容についての責任や会社としての対応を問われかねません。

株主代表訴訟が提起された後、訴訟に補助参加するか否かもふまえたリーガルリスクを検討する必要があります。

⑤ 行政対応

各省がプレスリリースにて対象企業を公表し、問題の原因の究明、調査、報告等を要請します。さらに、違反是正の改善計画案の提出、実施の報告、進捗状況の報告等の対応をする必要があります。

⑥ レピュテーションリスク

①ないし⑤が各報道機関で報道されることによるブランドイメージの毀損、信用回復に向けた活動、特別損失による損害の計上、事業売却を見据えた企業の存続としての戦略立案などの対応をする必要に迫られます。

まとめ

以上より、製品偽装は、分野に関係なく起こりうる問題であり、また多数の法令違反となりうるリスクや、裁判による多額の損失、ひいては企業の存続が危ぶまれる事態に発展する問題となります。