ビットコイン等の仮想通貨を活用した金融商品と法規制

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INDEX


はじめに

  1. 仮想通貨を用いた金融商品
  2. 結論
  3. 仮想通貨販売に係る主な法規制
  4. 仮想通貨FXに係る主な法規制
  5. 仮想通貨投資信託に係る主な法規制

 

 はじめに

Fintech(フィンテック)とは、Finance(フィナンス)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語ですが、その一分野として、ビットコイン等に代表される、インターネット上で電子的に取引される仮想通貨が注目を集めています。

これまで、そもそも「仮想通貨」とは何かについて、法律上の位置づけも定義も明確になされていませんでしたが、2016年5月25日に成立した改正資金決済法により、初めてその定義が明確に規定されることとなりました。また、改正資金決済法により、仮想通貨の取引所を運営する事業者に対して、「仮想通貨交換業者」として登録を義務づけ、種々の規制を課すこととなりました。

2016年12月28日、改正資金決済法の詳細を定める政令案・府令案が公表されるとともに、2017年3月24日、これらに対するパブリックコメント回答[1]及びガイドライン[2]が公表されています。

改正資金決済法は、本年6月3日までに施行されることとされており、同法における「仮想通貨」の定義や仮想通貨交換業者に対する各種義務の内容については整理が進んできた一方、金融商品取引法をはじめ、他の法令における仮想通貨の法的位置づけや規制の有無等については依然として不明確な部分が少なくありません。今後、証券会社等の金融商品取引業者が仮想通貨交換業者と提携して仮想通貨の売買等に進出することが予想されるものの、このようなビジネスが法的に許容されるのか、必ずしも判然としません。また、本年3月11日、米国においてビットコインETFの上場審査が否認されましたが、日本においてもビットコインのような仮想通貨を投資対象とするファンド等が登場することが想定されます。

そこで、本コラムでは、改正資金決済法に基づく「仮想通貨」の法的位置づけや取扱業者に対する規制の概要を紹介するとともに、ビットコイン等の仮想通貨を活用した金融商品を組成・販売する際に係る法規制の概要を紹介することとします。なお、本コラムにおける法規制及び法解釈については、今後の法改正・解釈の変遷や議論の集積等により変更される可能性があることにご留意ください。

[1] http://www.fsa.go.jp/news/28/ginkou/20170324-1/01.pdf
[2] http://www.fsa.go.jp/news/28/ginkou/20170324-1/19.pdf

 

 1. 仮想通貨を用いた金融商品

2016年5月25日に成立した改正資金決済法により、いわゆる仮想通貨の「取引所」に代表される、業として仮想通貨の売買・交換等を行う者は「仮想通貨交換業者」に該当し(改正資金決済法2条7項)、内閣総理大臣の登録が必要となります(同法63条の2)。すなわち、今後は、ビットコインのような仮想通貨を業として売買等を行う場合、「仮想通貨交換業者」として改正資金決済法に基づき登録義務等の規制に服することが明確になりました。

それでは、このような仮想通貨交換業者(=取引所)と提携し、仮想通貨交換業者以外の個人・企業が①仮想通貨の販売を行ったり、②仮想通貨の証拠金取引を行ったり、③仮想通貨を投資対象とする投資信託を組成・販売しようとする場合、そもそも法的に可能でしょうか。また、法的に可能であるとして、いかなる規制が問題となりうるでしょうか。

<想定ケース>

①  仮想通貨交換業者から購入した仮想通貨を自社店頭で販売(以下「仮想通貨販売」といいます。)

②  仮想通貨の証拠金取引(以下「仮想通貨FX」といいます。)

③  仮想通貨を投資対象とする投資信託(以下「仮想通貨投資信託」といいます。)

 

 2. 結論

①仮想通貨販売、②仮想通貨FX、③仮想通貨投資信託いずれも現行法上は可能であるものと思われます。ただし、それぞれについて、主に以下の法規制に留意が必要です。

 *:銀行又は銀行持株会社の子会社などが上記スキームを実施する場合、別途銀行法上の業務範囲規制にも留意が必要となります。

**:仮想通貨投資信託については、主として仮想通貨以外の「特定資産」に対して投資する場合を前提としています。また、投資信託の組成に当たっては、仮想通貨を信託財産とする信託の受託、投資信託財産を仮想通貨に投資する運用について別途検討が必要となります。

 

 3. 仮想通貨販売に係る主な法規制

1 改正資金決済法上の規制

(1)仮想通貨の定義

2016年5月25日、資金決済法の改正が成立(以下「改正資金決済法」といいます。)し、同年6月3日に交付され、施行は公布日から1年以内とされ、遅くとも2017年6月3日までに施行されることとされています。

改正資金決済法は、以下のいずれかに該当する場合、「仮想通貨」に該当するものとして定義しています(改正資金決済法2条5項1号・2号)。

(1号仮想通貨)

物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

 

(2号仮想通貨)

不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

 典型的には、ビットコインが1号仮想通貨に該当します。なお、Suica等の電子マネーは「不特定の者に対して使用する」という要件を充足しないため、1号仮想通貨には該当しません。

また、それ自体は1号仮想通貨に該当しないものであっても、1号仮想通貨と相互に交換できる財産的価値であれば、2号仮想通貨に該当します。具体的には、ビットコインと相互に交換できるEther等のデジタル通貨は、1号仮想通貨に該当しない場合であっても、2号仮想通貨に該当します。

 

(2)仮想通貨交換業の定義

そして、以下のいずれかの行為を業として行う場合、「仮想通貨交換業」に該当し(改正資金決済法2条7項各号)、登録を受ける必要があります(同法63条の2)。

(a)      仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換(≒ディーリング業務)
(b)      (a) に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理(≒ブローカレッジ業務)
(c)      その行う(a)又は(b)に掲げる行為に関して、利用者の金銭又は仮想通貨の管理をすること(≒有価証券等管理業務)

したがって、自らビットコイン等の仮想通貨の売買を行う場合はもちろん、仮想通貨交換業者である取引所の代理店として仮想通貨交換業売買の媒介又は代理を行う場合も、「仮想通貨交換業」に該当し、仮想通貨交換業者として登録を受ける必要があることとなります。

 

(3)仮想通貨交換業者に対する規制

改正資金決済法上、仮想通貨交換業者に対して、以下の規制が課せられることとなります。詳細については、「仮想通貨交換業者に関する内閣府令[1]及び「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係16仮想通貨交換業者関係)[2]をご参照ください。

業務に関する規制

(改正資金決済法63条の8以下)

・   情報の安全管理のために必要な措置

・   委託(再委託等を含む)に係る業務の適正かつ確実な遂行を確保するために必要な措置(委託先への指導など)

・   利用者の保護を図り、及び、仮想通貨交換業の適正かつ確実な遂行を確保するために必要な措置(仮想通貨と法定通貨との誤認防止のための説明、契約内容についての情報提供など)

・   利用者の金銭・仮想通貨の分別管理及び分別管理の状況についての外部監査[3]

・   金融ADRなど苦情処理・紛争解決に係る措置

監督に関する規制

(改正資金決済法63条の13以下)

・   帳簿書類の作成・保存義務

・   当局に対する事業年度ごとの報告書の提出義務

・   当局に対する一定期間ごとの利用者の金銭・仮想通貨の管理に関する報告書の提出義務

・   当局による立入検査等

・   当局による登録の取消し、業務停止命令又は業務改善命令

自主規制団体に関する規制(改正資金決済法87条以下)

・仮想通貨交換業者の自主規制団体である一般社団法人としての認定資金決済事業者協会に関する規定を整備

 

2 改正犯収法上の規制

2016年5月25日、犯罪による収益の移転防止に関する法律の改正が成立(以下「改正犯収法」といいます。)し、2017年6月3日までに施行されることとなります。

改正犯収法上、仮想通貨交換業者は、新たに「特定事業者」[4]に指定され、仮想通貨交換業に係る業務が「特定業務」[5]、顧客との各取引が「特定取引」[6]に該当し、以下の義務を負うこととなります(改正犯収法2条2項31号、30条等)。

資金洗浄・テロ資金供与対策規制(改正犯収法2条2項31号、30条等)

・   取引時確認義務

・   確認記録・取引記録の作成、保存義務

・   疑わしい取引の当局への届出義務

・   体制整備義務(教育訓練の実施、社内規程の整備、統括管理者の選任等)

・   仮想通貨交換業者の利用者の本人確認用の情報(ID・パスワード等)の授受(なりすまし目的の場合、又は正当な理由のない有償の場合に限る)は、その勧誘・誘引とともに禁止

 

3 金商法上の規制

まず、ビットコイン等の仮想通貨は、金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)上の「通貨」「有価証券」「商品」いずれにも該当しません。そのため、取引所等の仮想通貨交換業者から仮想通貨を購入し、自社の窓口等で仮想通貨を販売する行為については、そもそも金商法の規制対象とはならないものと思われます。

なお、今後、仮想通貨交換業者との業務提携は、証券会社等の金融商品取引業者と行われることもあるかと思いますが、その場合、金融商品取引業者による仮想通貨の売買は、「金融商品取引業」には該当しません(金商法2条8項各号)。

もっとも、当該行為は、「その他の付随業務」(金商法35条1項柱書)又は届出業務(同条2項)として許容される可能性があります。また、これら「その他の付随業務」又は届出業務に該当しない場合、承認業務(金商法35条4項)に該当するか検討することになりますが、この場合、金融庁の承認を得た上で実施する必要があります。

 

4 その他

(1)倒産法上の取扱い

仮想通貨交換業者の破産手続、会社更生手続、民事再生手続等が行われた場合において、顧客が当該仮想通貨交換業者に預けた仮想通貨の取扱いは判然としません。もっとも、一定の場合には、取引所に預けた仮想通貨は、「破産者に属しない財産」(破産法62条)として、取戻権が認められるものと思われます。

 

(2)民事執行法上の取扱い

仮想通貨に対する民事執行は、「その他の財産権に対する強制執行」(民事執行法167条)の対象となるものと思われ、理論上は執行不能財産とはならないものの、発行者がおらず、実効性確保に問題が残るものと思われます。

 

(3)銀行法上の取扱い

銀行や銀行持株会社の子会社が仮想通貨販売を行う場合、当該業務が銀行等の業務範囲内であることが必要となります。

この点、仮想通貨は「通貨」ではないため、その取扱いは銀行の固有業務(銀行法10条1項)には該当しません。

もっとも、たとえば銀行や銀行持株会社の子会社である証券会社等が仮想通貨販売を行う場合、「金融関連業務」(銀行法16条の2第2項第2号、52条の23第1項)又は「従属業務」(同法16条の2第1項11号)として許容されるものと解することも合理的と思われます。ただし、金融関連業務を限定列挙する銀行法施行規則17条の3第2項各号において、現在のところ仮想通貨交換業の規定はありません。

[1] http://www.fsa.go.jp/news/28/ginkou/20170324-1/04.pdf
[2] http://www.fsa.go.jp/news/28/ginkou/20170324-1/19.pdf
[3] 財務に関する書類に加えて、公認会計士又は監査法人による監査報告書の添付が求められており、前提として会計監査を受ける必要があります。

[4] 改正犯収法2条2項31号
[5] 改正犯収法施行令6条14号
[6] 改正犯収法施行令7条1項1号ヨ・タ・レ

 

 4. 仮想通貨FXに係る主な法規制

1 改正資金決済法上の規制

仮想通貨のデリバティブ取引は、決済時に仮想通貨の現物の受渡しを行う場合は、「仮想通貨の交換等」として「仮想通貨交換業」に該当する一方、差金決済のみであれば「仮想通貨交換業」の定義に該当しないこととされています[1]

したがって、差金決済のみを行う仮想通貨FXであれば、「仮想通貨交換業」に該当しないため、改正資金決済法上の規制を受けないものと思われます。

 

2 改正犯収法上の規制

証券会社等の金融商品取引業者が仮想通貨FXを行う場合、金融商品取引業者は、「特定事業者」であり、その行う業務全般が「特定業務」[2]に該当するものの、現状、仮想通貨のデリバティブ取引は「金融商品取引業」に該当せず、また、差金決済のみであれば改正資金決済法上の「仮想通貨交換業」にも該当しないため、「特定取引」に該当せず、改正犯収法による規制対象とはならないものと思われます。 

 

3 金商法上の規制

前記のとおり、仮想通貨は「通貨」「有価証券」「商品」いずれにも当たらず、仮想通貨FXは現状、「店頭デリバティブ取引」(金商法2条22項1号)に該当しないため、金商法の規制対象とならないものと思われます。

もっとも、仮想通貨も「資産」には該当することから、今後、金商法2条24項4号の「政令で定めるもの」に仮想通貨が指定され、将来的に仮想通貨のデリバティブ取引が金商法上の規制対象となる可能性があります。

また、仮想通貨FXは、「金融商品取引業」には該当しないものの、付随業務、届出業務又は承認業務として許容されるものと思われます。 

 

4 銀行法上の取扱い

銀行法上の仮想通貨FXの法的な位置づけとしては、「金融関連業務」又は「従属業務」として許容されるものと解することも合理的と思われます。

[1] 「事務ガイドライン(第三分冊:金融関係会社 16 仮想通貨交換業者関係)」I-1-2
[2] 特定業務とは、「金融に関する業務その他の政令で定める業務」をいい、具体的には、特定事業者である金融商品取引業者が行う業務全般が特定業務に該当することとされている(犯収法別表中欄、犯収法施行令6条1号)。

 

 5. 仮想通貨投資信託に係る主な法規制

1 投信法上の規制

まず、投信法上の「投資信託」に該当するためには、信託財産を主として「特定資産」に対する投資として運用することが必要となります(投信法2条1項・施行令3条)。しかしながら、仮想通貨自体は「特定資産」には該当しません

したがって、仮想通貨投資信託を投信法上の「投資信託」として販売するためには、主として仮想通貨以外の「特定資産」に対する投資として運用する必要があるものと思われます。

なお、信託法上、信託の対象は財産権に限られず、「財産」とされており(信託法2条3項)、仮想通貨も財産的価値が認められ、委託者の財産から分離することが可能である以上、「財産」として信託の対象となりうるものと思われます。また、信託業法上も受託可能財産は制限されていないため、法的には信託銀行や信託会社において仮想通貨の信託を行うことは可能と考えられます。

 

 2 改正資金決済法上の規制

主として仮想通貨以外の「特定資産」に投資する仮想通貨投資信託の販売は、あくまで「有価証券」の販売であり、仮想通貨の売買等ではないため、「仮想通貨交換業」に当たらず、改正資金決済法による規制対象とはならないものと思われます。 

 

3 改正犯収法上の規制

 金融商品取引業者は「特定事業者」であり、その行う業務全般が「特定業務」に該当するとともに、主として仮想通貨以外の「特定資産」に投資する仮想通貨投資信託の販売は「金融商品取引業」(金商法2条8項1号)として「特定取引」[1]に該当し、改正犯収法の規制対象となるものと思われます。

 

 4 金商法上の規制

 投資信託の受益証券は「有価証券」に該当する(金商法2条1項10号)ことから、主として仮想通貨以外の「特定資産」に投資する仮想通貨投資信託を組成・販売する場合、「金融商品取引業」のうち「第一種金融商品取引業」(金商法2条8項1号、28条1項1号)として許容されるものと思われます。

 したがって、主として仮想通貨以外の「特定資産」に投資する仮想通貨投資信託を販売する場合、金商法上の規制に留意する必要があります。

 

 5 銀行法上の取扱い

主として仮想通以外の「特定資産」に投資する仮想通貨投資信託の販売は、「金融商品取引業」に該当し、「金融関連業務」として許容されるものと思われます。

[1] 特定取引とは、預貯金契約の締結、為替取引その他の政令で定める取引をいい、金商法2条8項1号から6号若しくは10号に掲げる行為が該当する(犯収法別表下欄、犯収法施行令7条1項1号リ)。

 
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