【ポイント】

  1. 会社がマスクを支給するのであれば、従業員へのマスク着用指示は業務命令として行うことが可能
  2. 会社がマスクを支給しないのであれば、従業員へのマスク着用指示を行うことは難しい
  3. 会社がマスクを支給した上でマスク着用を指示したにもかかわらず着用を無視した場合には、業務命令違反になりうる

【相談例】

新型コロナウイルス感染症対応のために、出社する従業員にはマスク着用をお願いしたいと思いますが、このような業務命令は可能でしょうか。

【回答】

会社が従業員のためにマスクを支給することを前提とするのであれば、従業員にマスク着用を命じることは安全配慮義務の履行として可能と考えられます。

もっとも、会社がマスクを支給せずに従業員の自己負担でマスクを用意させるのであれば、事実上マスクを用意できない従業員も生じることになり、マスク着用を業務命令として出すことはできないでしょう。

【解説】

安全配慮義務とマスク着用の業務命令

新型コロナウイルス感染症対策の一つとして、マスクの着用が推奨されています。

会社が従業員に対する安全配慮義務の一環として、マスクを支給した上で従業員にマスクの着用を指示することは、業務命令として可能と考えられます。

マスクを従業員の自己負担で用意させる場合

一方、会社がマスクを支給せず従業員の自己負担でマスクを用意させるのであれば、事実上マスクを用意できない従業員も生じることになり、マスク着用を業務命令として出すことはできないでしょう。

業務命令に従わない場合の対応

なお、会社のマスク着用指示に従業員が従わない場合の対応ですが、会社がマスクを支給したにもかかわらず従業員が着用しないのであれば、業務命令違反ということになります。会社の業務命令違反という場合には、懲戒事由にも該当しうることになります。

もっとも、マスク着用指示は、あくまでも従業員の健康を考慮した安全配慮義務の一環として行っているものですから、従業員にも趣旨を理解して応じてもらうように説明することが望ましいといえます。

一方、会社がマスクを支給していない場合には、そもそも従業員に対してマスク着用の指示をすること自体ができないと考えられます。