【相談例】

当社が開催しているイベントや行事に、具合が悪そうな人が入場しようとしたとき、どのような対応をすれば良いでしょうか。

例えば、具合の悪そうな人について、入場制限等を行うことは問題ないでしょうか。

【回答】

  1. 原則としては、「体調不良の方のご入場はお控えください」等と伝え、自主的なご協力を求めるべきであると思われます。
  2. しかし、このような呼びかけに応じていただけない場合には、具合が悪そうな方の入場等を制限することも可能であると思われます。
  3. 入場制限等の対応をする場合には、その措置が差別的なもの(例えば、特定の国籍を有する人に対してのみ入場制限をするなど)にならないようご注意いただく必要がございます。

【解説】

1 はじめに

令和2年5月11日現在、日本全国に緊急事態宣言が発出されています。そして、同日現在、日本国内の新型コロナウイルス感染症の感染者数は、15798人にのぼります[1]

このような状況においてイベント等を開催する場合、イベント等の参加者が新型コロナウイルス感染症に感染することを防止するため、具合の悪そうな方については、イベント等へのご入場をお控えいただく必要がある場合も存在するように思われます。

2 入場制限の方法

(1)任意の対応

具合の悪そうな方が入場を希望する場合は、「ご入場はお控えください」等と説得し、自主的な協力を求めるという方法が考えられます。

(2)施設管理権を根拠とする入場制限

しかし、自主的なご協力をいただけないことも考えられます。

そして、自主的なご協力をいただけない場合には、施設管理権に基づき、具合の悪そうな方について、入場制限を行うことも場合によっては可能と思われます。

ただ、施設管理権を根拠に全ての入場制限が許容されるものではなく、入場制限の方法が差別的なもの(例えば、特定の国籍を有する人に対してのみ入場制限をするなど)にならないようご注意いただく必要がございます[2]

例えば、入場制限を行うにあたって、入場制限の条件として、「37.5度以上の熱があり、体調不良の方の入場はお断りいたします」等と定めることも一案かと思われます。

3 まとめ

以上のように、イベント等に具合の悪そうな方が入場しようとしている場合は、①まずは任意での協力を求め、これに応じてもらえないようであれば、②差別的な方法にならないよう注意しつつ施設管理権を根拠に入場を制限するべきであると思われます。

[1] 厚生労働省 新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年5月11日版)

[2]参考になる裁判例として、原告らが、被告が経営する公衆浴場に入浴しようとしたところ、外国人であることを理由に入浴を拒否されたことについて不法行為に基づく損害賠償を求めた事案がございます(札幌地判平成14年11月11日)。同事案では、「外国人一律入浴拒否の方法によってなされた本件入浴拒否は,不合理な差別であって,社会的に許容しうる限度を超えているものといえるから,違法であって不法行為にあたる。」と判示されました。