病院・クリニックにおけるクレーム
「治療の内容や説明に納得できない」「受付や職員の対応が悪い」「電話応対が悪い」「待ち時間が長すぎる」等、患者さんからのクレームに悩まされれている病院やクリニックもあるのではないでしょうか。
クレームの対応が現場職員に任されており、個々の職員の力量頼みになってしまっているケースも多くあります。そうすると職員が疲弊してしまい、離職につながるということもありますので、クレームには組織全体で対応するしくみが必要になります。
クレーム対応について
クレーム対応ついては、マニュアルを作成している病院・クリニックも多いと思いますが、ここではクレーム対応の大原則と活用できるマニュアルについてご説明いたします。
クレーム対応の大原則
複数人で対応をする
クレームの対応は一人では行わず、複数人で行うようにしましょう。数人で対応することで病院側も落ち着いて対応することができますし、患者側が激昂して暴力行為に及んだりすることを防ぐこともできます。
患者のクレームと要求を十分に確認する
クレームを受けるのは嫌なことですが、患者にも患者なりが言い分があります。まずは不快な思いをさせたことをお詫びし、内容をよく聞くようにしましょう。受け手側の態度一つで、相手方の出方が変わることもあります。クレームであっても傾聴を心がけましょう。
患者(家族/関係者)にはできない約束をしない。特別扱いもしない
苦し紛れに付け焼刃で対応をしてしまうと、その後何度も同じ要求が繰り返される可能性があります。そのような可能性を生み出さないために、誠意をもって対応しながらも、安易な対応や約束は慎むようにしましょう。
事案によっては現場職員のみの判断で即答せず、後日回答をする
その場だけで対応しようとすると、無理な要求をのんでしまったりしてその後より大きな問題に発展しかねません。対応が長引きそうな場合や、クレームの内容によっては、病院・クリニック内で対応策を検討したり、顧問弁護士に対策を相談したりしてから回答するのが望ましいといえます。
事案を病院内で共有する
クレームを受けたり、その対応をした場合には、全員が内容を確認できる方法で情報を共有する必要があります。それによって、後日同じ患者からクレームを受けた場合に、スムーズな対応が可能になります。また、事例集のようなものをつくり、定期的に研修等で対応方法を職員が学べる機会を作るようにしましょう。
病院・クリニックも違法行為には気をつける
病院・クリニックが違法行為をしてしまうと、弱みを見せることになり、クレーム対応をしていく上でも不利になります。1)正当な理由のない診療拒否(医師法第19条第1項違反)、2)正当な理由のない診断書作成拒否(医師法第19条第2項違反)、3)看護師やスタッフによるレントゲン撮影(診療放射線技師法第24条違反)、のような違法行為には、常日頃から気をつけるようにしましょう。
活用できるマニュアルについて
多くの病院・クリニックでは、クレーム対応マニュアルが用意されていますが、十分に活用されているかいうとそうではない場合も多いようです。なぜ活用されにくいかというと、マニュアルでの文言が抽象的であるということが挙げられます。「適切に」「慎重に」等の言葉は個人によって程度の解釈が異なり、対応の基準とするには曖昧過ぎます。従って、よりわかりやすく、具体的な言葉を使い、職員が活用しやすいマニュアルを作成するようにしましょう。
クレームを防ぐために
上記では主にクレームを受けた場合の対応策について説明してきました。では、クレームを受けないようにするために事前にできることはあるのでしょうか。人と人との問題になりますので、ちょっとした行き違いで大きなクレームになることもありますし、100%クレームを防ぐことは難しいのですが、病院側が努力していることを「見える化」することによって、クレームを減らすことは可能になります。例えば、診療内容によって順番が変わる可能性があることや、待ち時間短縮のために病院側が努力していることなどは院内に掲示することで患者に伝えることができます。また、アメニティを充実させることなどで、長い待ち時間を少しでも快適に過ごしてもらうこともできます。
どんな状況でクレームが来るのかを予測し、可能な範囲で対応するようにしましょう。
弁護士に依頼するメリット
医療現場でもクレーム対応も、初動から弁護士に依頼することで職員の負担を軽減しつつ早期解決を見込むことができます。顧問契約をしている場合は、日々起こり得るクレームについてすぐに電話で相談いただくことが可能になります。また、病院・患者側に説明が必要な場合に、第三者として立ちあったり、対応そのものを代理人で行うことが可能になります。
クレーム対応でお困りのことがあれば、ぜひ当事務所にご相談ください。