1.他人の著作物を利用するには

インターネットには様々な情報が公開されており、事業活動に使用したいと思うこともあります。その場合には、どのようなことに気を付けなくてはならないのでしょうか。

公開されている情報が、思想又は感情の創作的な表現であれば著作物にあたるため、もし他人の著作物を利用したいという場合には、原則として著作権者の許諾を得る必要があります。

2.許諾を得ずに使用できるケース

以下のような場合は、著作権を制限して、著作物が自由に利用できるようになっています。ただし、著作権が制限される場合であっても、著作者人格権は制限されません。

(1)私的使用目的の複製

個人的にまたは家庭などの限られた場所で著作物を利用する場合には、利用する本人が複製(コピー)を作成できます。

(2)引用

公表された著作物は、引用して利用することができます。ただし、引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行わなければなりません(著作権法第32条)。

判例(最判昭55.3.28)によると、①引用される著作物が公表されていること、②引用部分と自己の著作物が明瞭に区別されていること、③自己の著作物と引用部分とが主従関係になっていること、のすべての要件を満たすことが必要になります。

また、引用した際には、出典を明記する必要もあります。

3.記事原稿や画像の無断転載のリスク

上記2.のようなケースにあてはまらないにも関わらず、著作権者の許諾を得ずに無断で記事原稿や画像を転載すると、どのようなリスクがあるのでしょうか。

(1)著作権の内容

まずは著作権法で守られている著作権の内容としてどのようなものがあるか説明いたします。著作権とは、著作物の利用方法に応じて個々に規定されている支分権の総称です。以下、支分権の個々の内容を見ていきましょう。

① 複製権

著作者が著作物を複製できる権利です。複製とは、印刷、写真、複写、録音等で同じものを作成することです。機械を使ってのコピーはもちろん手書きでの書き写しも複製にあたります。

② 上演権・演奏兼

著作者が、著作物を公衆に見せることを目的として、上演し又は演奏する権利です。

③ 上映権

著作者が、著作物を公に上映する権利です。

④ 公衆送信権

著作者が、その著作物についてインターネット等を用いて公衆に送信する権利です。

⑤ 口述権

著作者が、その言語の著作物を口述する権利です。

⑥ 展示権

著作者がその美術の著作物またはまだ発行されていない写真の著作物を、これらの原作品により公に展示する権利です。

⑦ 頒布権

著作者が、その映画の著作物をその複製物により譲渡または貸与する権利です。

⑧ 譲渡権

著作者が、その著作物(映画を除く)をその原作品または複製物の譲渡により公衆に提供する権利です。

⑨ 貸与権

著作者が、その著作物(映画を除く)をその複製物の貸与により公衆に提供する権利です。

⑩ 翻訳権・翻案件

著作者が、その著作物を翻訳し、編曲し、もしくは変形し、または脚色し、映画化し、その他翻案する権利です。

11 二次的著作物の利用に関する現著作者の権利

二次的著作物の原著作者は、当該二次的著作者が有するものと同一の権利を有します。

(2)無断で記事原稿や画像を無断で転載した場合、具体的にどの権利を侵害することになるのか

まずは、著作物をコピーすることになりますので、複製権を侵害することになります。また、複製したものをインターネットの別のサイトにアップロードしたりすると、公衆送信権等の中に含まれる送信可能化権を侵害することになります。

(3)著作権を侵害するとどのような罰則があるか

万が一著作権侵害をしてしまうと、著作権者から①差止請求権②損害賠償請求権③不当利得返還請求権を行使されたり、損害賠償に代えて又は損害賠償とともに名誉回復等の措置を要求される可能性があります。

また、刑事罰として、10年以下の懲役、1,000万円以下の罰金、法人の場合は、3億円以下の罰金を科される可能性もあります。

4.まとめ

自社のサイトを作る場合、外部への提案資料等を作成する場合、ついインターネットに掲載されているおしゃれな画像を使いたくなってしまうこともあります。記事についても、伝えたい内容がうまくまとまったものであれば、自社のサイトに載せたいと思うこともあります。しかし、その情報が著作物に該当し、著作権法上保護の対象になっている可能性もあるので注意が必要です。

自己判断で無断で使用する前に、自由に使ってよいものかどうかを調べ、必要に応じて著作者にライセンスの確認をするようにしましょう。著作権法上の著作物だったとしても、きちんと手順を踏んで許諾を得れば使うことが可能になることもあります。ライセンスの確認の仕方や許諾を得る場合の契約書等の作成については、ぜひ顧問弁護士にご相談ください。

また、万が一、著作権者から訴えられることがあったとしても、顧問弁護士がついていれば①著作物性②損害の有無③過失の有無等について十分に争うことができます。親身になってアドバイスいたしますので、ぜひ一度ご相談ください。