ポイント

  1. 紛争発生の可能性は、経時的に高まっていく
  2. チェックリストを活用することで、紛争発生の予兆を察知できる
  3. チェックリストは、自社の実情に合わせて適宜修正することが望ましい

紛争発生の予兆は経時的に高まる

紛争発生の可能性は、①安定段階、②要注意段階、③緊急段階、と、経時的に高まっていくことが一般的です。

企業と取引先との間で日常的な取引が継続的に行われている①安定段階であればまず問題はありませんが、徐々に支払が遅滞していく②要注意段階、支払やサービスの提供が停止する③緊急段階、と進行するにつれて、紛争発生の可能性は高まります。

チェックリストの活用

紛争発生の予兆は、できる限り早期の把握が重要となります。そこで、紛争発生の予兆の事前察知を可能とするために、チェックリストの作成・活用をお勧めいたします。

なお、以下のチェックリストでは、紛争が発生するリスクを整理するため、紛争発生の危険度を、①安定段階(紛争発生の可能性が低い段階)、②要注意段階(紛争発生の可能性が高まっている段階)、③緊急段階(紛争発生を回避できない段階)の3つに分類しています。

類型別 安定段階
(紛争の可能性が低い段階)
要注意段階
(紛争発生の可能性が高まっている段階)
緊急段階
(紛争発生を回避できない段階)
判断ポイント
  • クレームもなく取引を継続している
  • 契約に沿ったサービスが提供されている
  • 期限までに支払に応じる
  • 営業を継続的に行なっている形跡がある
  • 契約内容についてクレームが発生してくる
  • 契約に沿ったサービスが提供されない
  • 期限までに支払が完了されない
  • 営業を継続的に行っている様子がない
  • 経営状況悪化の様子がみられる
  • クレームが代理人(弁護士)名義で送付されてくる
  • サービスの提供が停止される
  • 債務の支払が停止される
  • 経営している様子がない
  • 経営状況が極めて悪化している
要因
  • 長期に及ぶ取引関係がある
  • 自社以外の競合他社が存在しない
  • 経営状況が安定している
  • 取引関係が短期間にすぎない
  • 競合他社の出現
  • 経営状況の悪化
    • 主要な取引先の喪失・倒産
    • 業界全体の不況
    • 取引先の競合他社の出現
    • 主力事業の失敗
    • 製品事故等の発生
    • 横領等の被害
  • 自社の競合他社への切り替え
  • 経営状況の著しい悪化
    • 事業全体の失敗
    • 資金調達のショート
    • 差押
    • 従業員不在による事業継続の困難
    • 不祥事によるレピュテーションリスクの顕在化
留意事項
  • 安定段階から要注意段階への移行は不透明
  • 法務担当者は営業部・現場から情報を収集できる体制を構築する
  • 要注意段階に移行してからは、従前の取引の履行を優先する
  • 取引の継続・拡大の見直し・停止を検討する
  • これまでの交渉経過に関する証拠を整理する(メール、FAX、文書等)
  • 弁護士への相談体制を構築する
  • 弁護士への依頼を検討する
  • 法的手続への移行を含めた紛争の解決方法を検討する

チェックリストの修正

紛争発生の予兆の事前察知のためのチェックリストは、法令やガイドライン等で規定されているわけではないため、各企業や各取引類型に応じて適宜修正していくことが望ましいといえます。

また、上記チェックリスト例では、①安定段階、②要注意段階、③緊急段階の3つに分類していますが、各企業や各取引類型に応じて、より細分化することも考えられます。

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