1.不正競争防止法とは

不正競争防止法とは、商取引において自分の商売と類似の商法や紛らわしい商法を用いて不正に取引をすることを禁止する法律です。不正競争防止法は、公正な競争を阻害する一定の行為を禁止することによって、適正な競争を確保し、公正な市場を確保しようとしています。

2.不正競争行為の概要

不正競争防止法は、不公正な競争を防止し、もって取引の秩序を維持するための法律ではありますが、漠然と不公正な競争を禁止しているわけではなく、不公正な行為を制限列挙して禁止しています。不正競争防止法によって禁止される行為は以下のとおりです。

(1)周知表示に対する混同惹起行為(2条1項1号)
(2)著名表示冒用行為(2条1項2号)
(3)商品形態模倣行為(2条1項3号)
(4)営業秘密不正取得・利用行為等(2条1項4号から10号)
(5)技術的制限手段に対する不正競争行為(2条1項11号、12号)
(6)不正にドメインを使用する行為(2条1項13号)
(7)品質内容等 誤認惹起行為(2条1項14号)
(8)信用毀損行為(2条1項15号)
(9)代理表示等冒用行為(2条1項16号)

3.不正競争行為に対する民事的措置

不正競争防止法が定める不正競争行為に対する是正方法は以下のとおりです。

(1)差止請求権(3条1項)

不正競争行為によって営業上の利益を侵害される(おそれのある)者が、侵害の停止又は予防を請求することができます。

(2)廃棄除去請求権(3条2項)

侵害行為を構成した物、侵害行為によって生じた物の廃棄、侵害行為に供した設備の除却を請求することができます。

(3)損害賠償請求(4条)

故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は損害賠償責任を負います。さらに、法5条は、損害額の推定の規定を定め、損害額の立証の困難性を緩和しています

(4)信用回復措置(14条)

営業上の信用を害された者は、侵害した者に対して、信用の回復に必要な措置を取らせることができます。

4.不正競争行為に対する刑事的措置

不正競争のうち、一定の行為を行った者に対しては以下の処罰が規定されています。

(1)罰則(21条)
①営業秘密侵害罪:10年以下の懲役又は2000万円以下(海外使用等は3000万円以下)の罰金
②その他 :5年以下の懲役又は500万円以下の罰金
(2)法人両罰(22条)
①営業秘密侵害罪の一部:5億円(海外使用等は10億円)以下
②その他 :3億円以下
(3)国外での行為に対する処罰(21条6項・7項・8項)
(4)営業秘密侵害行為による不当収益等の没収(21条10項等)

5.不正競争行為の適用除外

以下のような場合は、不正競争行為には該当しません。

(1)普通名称・慣用表示の使用

商品等について普通名称、又は、同一あるいは類似の商品等について慣用されている商品等表示を普通に用いられる方法で使用し、又は、そのような表示を使用した商品を譲渡したりする場合。

(2)自己氏名の使用

自己の氏名を不正の目的でなく使用するような場合。

(3)先使用

他人の商品等表示が広く認識される前からその商品等表示と同一・類似の商品等表示を使用する場合。また、他人の商品等表示が著名になる前からその商品等表示と同一・類似の商品等表示を使用する場合。

(4)形態模倣商品の善意取得者

他人の商品の形態を模倣した商品を譲り受けた者がその商品を譲渡等を行う場合。

(5)営業秘密に関する例外

取引によって営業秘密を取得した者がその取引によって取得した権原の範囲内においてその営業秘密を使用し、又は開示する場合。ただし、当該営業秘密を取得した時にその営業秘密について不正開示行為であること又はその営業秘密について不正取得行為若しくは不正開示行為が介在したことを知らず、かつ、知らないことにつき重大な過失がない場合に限られます。

6.まとめ

自社の商品と似たような商品が出回っている、自社の商品名と類似する商品名がよく聞かれるようになってきた等の事例があった場合には、相手社の行為が不正競争防止法に該当するかどうかを早急に精査し、対応を考える必要があります。実際に不正競争防止法に違反するということであれば自社の保護を訴えていかなくてはなりません。このような場合、精査自体も専門知識が必要になりますし、その後の民事的、刑事的手続きについても自社のみで行うことは困難です。

不正競争に該当しそうな事例がある場合は、早めに顧問弁護士に相談するようにしましょう。何かお困りのことがあればぜひ当事務所にご相談ください。