相談事例
同一労働同一賃金ガイドラインをみましたが、当社が設定している①退職手当、②住宅手当、③家族手当、④調整手当、については規定が見当たりませんでした。
同一労働同一賃金ガイドラインには規定されていないこれらの手当については、正社員と短期・有期社員の待遇差をどのように考えればよいでしょうか。
解説
退職手当
裁判例(メトロコマース事件控訴審判決・東京高判平成31年2月20日)は、実務に大きな衝撃を与えたといえます。
現時点では、退職金について、裁判例から明確な基準を見出すことは困難であり、紛争に発展した場合の予測可能性は低いと言わざるを得ません。
ただし、退職金制度も不合理な相違といわれるリスクがあることは念頭に置き、正社員と短期・有期社員の人事政策を検討すべきといえます。
住宅手当
長期的な勤務の動機づけや有意な人材の確保という理由だけでは、正社員と短期・有期社員の待遇差を正当化する合理性があるとは言い難いでしょう。
正社員には転居を伴う配転の可能性がある一方、短期・有期社員にはそのような可能性がない場合、住宅手当の支給の有無等について差異を設けることは不合理ではないと判断される可能性が高いといえます。
家族手当
家族手当は、家族を扶養する労働者等の生活を補助する目的で支給される手当と考えられます。
家族手当は、労働者の職務内容等とは無関係に支給される上、正社員か短期・有期社員かによって労働者の生活を補助する必要性が変わるものではないと考えられます。
したがって、正社員と短期・有期社員ともに同一の支給条件で家族手当を支給することが無難と考えられます。
調整手当
調整手当は、各企業によってその性質は様々ですが、裁判例では、給料の調整給という位置付けとされています。
そして、給料の調整給という位置付けでも基本給に準じて正社員と短期・有期社員との待遇差が検討される傾向にあります。
したがって、調整手当における待遇差については、基本給の考え方に照らして検討することになると考えられます。
ご相談のケースについて
①退職手当、②住宅手当、③家族手当、④調整手当については、実務上も設定している企業が多いにもかかわらず、同一労働同一賃金ガイドラインでは言及されていません。
これらの手当については、裁判例を踏まえて検討する必要があります。
特に、①退職手当は、企業の人件費に与える影響も大きいことから、不合理な待遇差と判断される可能性がないか、また不合理な待遇差と判断された場合の人件費総額に当たる影響の大きさを想定しておく必要があります。
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