仮に企業と請負業者の締結している請負契約が偽装請負に該当すると判断された場合、以下のコンプライアンスリスクが生じるおそれがあります。
民事責任
偽装請負に該当する場合、労働者派遣法違反となるため、従業員から注文主である企業に対し、直接の雇用契約関係が存在すると主張されるおそれがあります。
また、派遣先である注文主の業務で労働災害が発生した場合、注文主に対して安全配慮義務違反に基づく損害賠償を請求されるなどの民事責任を問われるおそれがあります。
刑事責任
違法な「労働者派遣」にあたる場合は請負事業主が、違法な「労働者供給」にあたる場合は請負事業主と注文主が、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金を科せられます(労働者派遣法59条、職業安定法64条9号)。
また、請負を装った労働者供給や労働者派遣があった場合は請負人による中間搾取となる場合があり、注文者も搾取を幇助したとして、労働基準法6条違反となる可能性があります。労働基準法6条に違反する場合、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金を科せられます(労働基準法118条)。
行政責任
違法な「労働者派遣」にあたる場合、請負事業主と注文主は行政監督を受ける可能性があります(労働者派遣法48条以下)。
偽装請負に該当した場合、注文主も以下の行政処分を受けるおそれがあります。
- 行政指導(労働者派遣法第48条第1項)
- 改善命令(労働者派遣法第49条第1項)
- 勧告(労働者派遣法第49条の2第1項)
- 企業名の公表(労働者派遣法第49条の2第2項)
社会的責任(レピュテーションリスク)
企業はCSRを問われる時代となっています。悪質な違反行為を行った場合には、規制当局から企業名の公表措置をとられるほか、SNSなどで一般人によって企業名や違反事例の概要をインターネット上に拡散されることも起こりえます(いわゆる「ブラック企業」と揶揄される可能性もあります)。
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