はじめに
「弁護士に依頼して、ようやく誹謗中傷の書き込みを削除できたのに、しばらくしたら、また同じような内容を別のサイトに書かれてしまった…」
「削除しても、アカウントを変えて何度も嫌がらせを繰り返される。これでは、いたちごっこだ…」
苦労して誹謗中傷投稿を削除したにもかかわらず、再び同様の被害に遭うことは、精神的に大きなダメージを受けるだけでなく、「もう解決できないのではないか」という無力感にもつながります。
投稿を削除することは、あくまで対症療法にすぎません。嫌がらせを根本的にやめさせ、平穏な日常を取り戻すためには、なぜ嫌がらせが繰り返されるのかを理解し、その原因を断つための根本的な対策を講じる必要があります。
この記事では、削除後の再発に悩む方のために、いたちごっこを終わらせ、問題を根本から解決するための具体的な対策について、弁護士が解説します。
Q&A
Q1. なぜ、一度削除したのに、また同じようなことを書くのでしょうか?
理由は様々ですが、主に以下のような加害者の心理が考えられます。
- 個人的な怨恨
あなたに対して強い個人的な恨みを持っており、あなたを苦しめること自体が目的になっている。 - 正義感の暴走
自分の行いを「悪を懲らしめる正義の鉄槌」だと信じ込んでおり、自分が正しいと思っている。 - 匿名性への慢心
「どうせ自分の正体はバレない」と高をくくっており、捕まるリスクを感じていない。 これらの加害者は、単に投稿を削除されただけでは、嫌がらせをやめない可能性が高いです。
Q2. 再発を防ぐために、効果的な方法は何ですか?
最も効果的な方法は、匿名の陰に隠れている加害者を特定し、その法的責任を追及することです。具体的には、「発信者情報開示請求」という裁判手続きによって投稿者の氏名・住所を明らかにし、その上で「損害賠償請求」や「刑事告訴」を行います。自分が誰だか特定され、民事・刑事の両面で責任を問われるという現実を突きつけられることで、ほとんどの加害者は再度の嫌がらせを思いとどまります。
Q3. 加害者を特定して、損害賠償を請求すれば、再発は絶対に防げますか?
絶対とは言い切れませんが、再発防止効果は高いです。損害賠償請求を行う際の示談交渉(和解)の場で、慰謝料の支払いだけでなく、「今後一切、原告に関する誹謗中傷行為を行わない」という趣旨の誓約(接触禁止条項)を書面で交わさせることが一般的です。もしこの誓約に違反して再び書き込みを行えば、高額な違約金を請求できるよう定めておくことで、再発を強力に抑止することができます。
解説
投稿の削除だけでは終わらない「いたちごっこ」。この負のループを断ち切るための根本対策は、一言でいえば「加害者に、これ以上やったら本当に大変なことになる、と分からせること」です。そのためには、以下の3つのステップが重要になります。
【ステップ1】加害者を特定する(発信者情報開示請求)
再発防止の全ての始まりは、匿名のカーテンの向こうにいる加害者が「誰なのか」を明らかにすることです。
手続き
発信者情報開示請求という裁判手続きを行います。これは、サイト運営者やインターネットサービスプロバイダから、投稿者のIPアドレス、氏名、住所、電話番号などの情報を開示させる手続きです。
目的
加害者が、もはや匿名ではない「現実世界の個人」として、自分の行為と向き合わざるを得ない状況を作り出します。
重要性
このステップを踏まなければ、その後の損害賠償請求も刑事告訴も行うことはできません。再発防止のまさに「入り口」となる、最も重要な手続きです。
【ステップ2】加害者の民事責任を追及する(損害賠償請求)
加害者を特定したら、次はその違法行為によって受けた精神的・経済的損害の賠償を求めます。
手続き
特定した加害者に対し、弁護士が代理人として内容証明郵便を送付し、慰謝料等の支払いを求める示談交渉を開始します。交渉がまとまらなければ、損害賠償請求訴訟を提起します。
目的
- 金銭的な制裁
慰謝料を支払わせることで、自らの行為の代償の大きさを実感させます。 - 再発防止の誓約
示談交渉の際、示談書の中に「接触禁止条項・誹謗中傷禁止条項」を盛り込みます。「今後、原告(被害者)に関する一切の書き込みや連絡を行わない。違反した場合は、違約金として〇〇万円を支払う」といった内容の誓約をさせることで、将来の行為を法的に縛ります。これが、再発防止の強力な楔となります。
この「再発防止の誓約」こそが、単なる投稿削除にはない、加害者特定がもたらす最大のメリットの一つです。
【ステップ3】加害者の刑事責任を追及する(刑事告訴)
特に悪質な加害者に対しては、民事上の責任追及だけでなく、刑事罰を求めることも検討します。
手続き
警察署に対し、名誉毀損罪、侮辱罪、脅迫罪などで告訴状を提出し、加害者の処罰を求めます。
目的
- 刑事罰による抑止
罰金刑や、場合によっては懲役刑といった刑事罰が科される可能性を示すことで、加害者に強いプレッシャーを与えます。 - 捜査機関の介入
警察や検察といった国家機関が捜査に乗り出すことで、加害者は事の重大性を認識せざるを得なくなります。 - 前科
有罪となれば、加害者には「前科」がつきます。この不利益を恐れて、再犯を思いとどまる効果が期待できます。
民事責任の追及と刑事責任の追及は、両方を同時に進めることも可能です。
弁護士に相談するメリット
投稿の再発に悩み、根本的な解決を目指すのであれば、弁護士のサポートは不可欠です。
- 対策を一任できる
発信者情報開示請求、その後の示談交渉や訴訟、刑事告訴といった、専門的で複雑な一連の手続きを、全てワンストップで任せることができます。 - 効果的な再発防止策の構築
弁護士は、示談交渉において、いかに実効性の高い再発防止条項(違約金の設定など)を盛り込むか、そのノウハウを熟知しています。あなたの未来の平穏を守るための、最適な示談内容を構築します。 - 加害者との交渉代理
加害者と直接対峙することは、被害者にとって計り知れない精神的負担となります。弁護士が全ての窓口となり、あなたを二次被害から守ります。 - 「本気度」を伝え、行動を抑制する
弁護士が代理人として登場することは、被害者が「泣き寝入りせず、法的に断固たる措置を取る」という本気の姿勢を加害者に示す、最も強力なメッセージとなります。このメッセージ自体が再発抑止力となるのです。
まとめ
誹謗中傷投稿を削除しても、嫌がらせが繰り返される「いたちごっこ」の状態は、被害者を心身ともに疲弊させます。この負の連鎖を断ち切るためには、投稿を消すという対症療法に留まらず、「加害者を特定し、その法的責任を徹底的に追及する」という根本治療に踏み出すことが重要です。
再発防止のロードマップ
- 加害者の特定(発信者情報開示請求)
- 民事責任の追及(損害賠償・再発防止の誓約)
- 刑事責任の追及(刑事告訴)
このプロセスを通じて、加害者に「これ以上やれば、自分の人生が破滅する」と実感させることが、最も確実な再発防止策となります。
もし、あなたが誹謗中傷の再発に苦しみ、本当の意味での解決を望むのであれば、どうか一人で悩まないでください。
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