【内部統制の基盤】経営会議の効率的運用と社内規程の見直しで組織力アップ|トラブル回避の実務ポイント
はじめに
企業の意思決定やリスク管理をスムーズに進めるうえで、経営会議や社内規程の整備は不可欠です。経営会議(役員会・幹部会など)で具体的な業務方針やリスク対応策を立案し、社員が日常業務で守るべきルールを定めた社内規程(権限規程・稟議規程・就業規則など)によって組織全体の統制を図ります。しかし、社内規程が形骸化していたり、経営会議の議事進行が非効率だったりすると、不正発生や責任の所在不明などのリスクが高まるのが実情です。
本記事では、経営会議の運用における注意点や、社内規程の見直しのポイント、実際の導入・改定プロセスなどを解説します。企業が内部統制やコンプライアンスを強化するために、何をどう整備し、どんな手続きで運用すればよいかを把握し、企業価値向上とリスク回避を両立させましょう。
Q&A
Q1:経営会議とは、取締役会との違いは何でしょうか?
取締役会は会社法に基づき法定機関として位置づけられ、重要な業務執行の決定と取締役の監督を行う機関です。一方、経営会議(執行役員会、経営幹部会など)は法定機関ではなく、企業が任意で設置している内部会議の形態です。具体的な業務運営方針やプロジェクト進捗管理など、取締役会よりも詳細なレベルの実務的議論を行う場合が多く、取締役以外の幹部社員も参加することがあります。
Q2:社内規程とは具体的にどんなものを指すのですか?
社内規程とは、会社内部で従業員が守るべきルールを定めた規程類の総称です。代表的には、
- 就業規則
労働条件や勤務時間、休暇、懲戒などを定める - 賃金規程
給与体系や支給基準 - 経理規程
経費精算や会計処理の方法 - 稟議規程・決裁規程
金額別や業務別の決裁権限 - 文書管理規程
社内書類の作成や保存方法 - 個人情報保護規程
個人情報の取扱方法
など、多岐にわたります。会社の規模や業種によって必要な規程が異なり、それらが体系的に連動することで内部統制が機能します。
Q3:経営会議が形骸化しやすい理由は何でしょうか?
典型的には、以下の要因が多いです。
- 議題が明確でない
会議テーマが曖昧で、議論が散漫になり結論が出ず終わる。 - 議事進行が非効率
発言が重複、時間管理が甘く、結局「持ち帰り」になる。 - 責任・権限が不明
誰が決定権を持つか不透明で、会議後に意思決定ができない。 - 会議議事録が不十分
誰が何をいつまでにやるか決まらない。次回会議で同じ内容が再議論される。
Q4:社内規程を整備・改定するメリットは何でしょうか?
コンプライアンスと内部統制を強化し、業務の標準化や透明性を高める効果があります。例えば稟議規程を明確化すれば、従業員がどの決裁レベルで承認を得るべきか迷わずスピーディに業務を進められます。また、規程が明確だと不祥事の未然防止や責任所在がはっきりし、万一トラブル発生時に対処がしやすいです。労務管理や情報管理もルール化することで法律違反やセキュリティ事故のリスクが下がります。
解説
経営会議の設計と運用
- 会議体の明確化
- 取締役会、経営会議(経営幹部会)、部門会議など、どのレベルの事項をどの会議で決定するか役割分担を整理。
- 役員レベルが集まる経営会議では、事業戦略や方針決定を行い、詳細事項は部門会議で報告するなど、階層構造が理想的。
- 議題設定と事前資料
- 会議の議題を事前に確定し、担当者が資料を作成して配布。可能であれば電子化して共有フォルダなどで閲覧。
- 議案ごとに「決定事項」「報告事項」「検討事項」を区分し、意思決定すべき内容を明確にする。
- 効率的な進行
- 議長やファシリテーターを設定し、発言の順番や時間制限を管理。報告事項は簡潔に済ませ、重要事項の審議時間を十分確保。
- 結論が出なかった場合の再調整や、責任者・期限を必ず示すことで、次回会議への持ち越し防止やアクション管理を行う。
- 議事録とフォローアップ
- 議事録を書面または電子データで作成し、決定事項・担当者・期限を明記。配布して関係者が確認。
- 次回会議で前回の決定事項の進捗報告を行うとPDCAサイクルがまわる。
社内規程の構築・改定プロセス
- 規程体系の整理
- まず会社の規程リストを作成し、階層構造(基本規程→業務規程→細則)を可視化。重複や矛盾、未整備部分を発見する。
- 就業規則、給与規程、旅費規程、ハラスメント防止規程など法的必須なものや業務上必要性が高いものから優先整備する。
- ドラフト作成と関係部署ヒアリング
- 総務・法務部などが中心となり、各部門の実務担当者から運用現場の課題をヒアリングし、実情に合った規程案を作成。
- 過度に細かすぎると運用負担が増し、形骸化するリスクがあるため、バランスを考慮。
- 社内決裁と周知
- 規程案を取締役会や代表取締役の決裁(権限規程に従う)で正式承認。従業員への周知方法(メール配信、イントラ掲載、説明会など)を確立。
- 労働条件に関わる場合は労働基準監督署への届出や社員代表の意見聴取が必須な場合も(就業規則改定など)。
- 定期見直し
- 会社を取り巻く法改正や業務変化に応じて、定期的(年1回など)に規程を見直し・改定し、最新のコンプライアンス要件を満たす。
- 改定のたびに従業員へ再周知し、旧版との違いを明確に伝える。
経営会議・社内規程整備のメリットとリスク
メリット
- 意思決定スピード
経営会議で議題を共有し、議案ごとに担当者が結論を出すことで迅速な対応が可能。 - 責任明確化
規程で決裁権限を明確にし、誰がどの範囲まで判断できるか周知することで責任の所在をはっきりさせる。 - コンプライアンス強化
法律や業界ルールを反映した規程整備により、違反リスクを低減。
リスク・課題
- 会議回数の増加
形式的会議が乱立して逆に業務が停滞するおそれ。会議体の統廃合も検討が必要。 - 規程遵守の実効性
形だけの規程だと運用が追いつかず、不正やミスが防げない。周知・研修・監査が大切。 - 改定時の抵抗
既存の慣行を変えると社内で抵抗が起こりがち。段階的に導入し、意図を説明するコミュニケーションが鍵。
想定取組事例
経営会議の効率化
大手企業が会議体を整理し、「経営会議」「役員会(取締役会)」「事業部会議」の3レイヤーとした。会議前に書面審議を促進し、短時間で重要事項を決定。議事録作成をIT化して検索しやすくした結果、意思決定速度とコンプライアンスが向上。
社内規程の改定プロジェクト
- 中堅メーカーが古い規程が乱立していたところを、プロジェクトチームを発足して1年かけて総点検。廃止・統合・新設を行い、最終的に約30種類の規程を整備。
- 結果、社員の混乱が減り、承認フローが明確になり、不正・ミスが大幅に減ったとの報告。
デジタル化と周知
- 規程を紙の印刷からイントラ上の電子ファイルに切り替え、改定時に通知メールを送信。バージョン管理もしやすくなり、社員が最新版を常に確認できるようにした。
- 経営会議の議事録も電子化し、キーワード検索で過去の決定を即座に参照可能となり、再検討の無駄が減った。
弁護士に相談するメリット
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、経営会議運営や社内規程整備に関して、以下のサポートを提供しています。
- 会議体・規程整備のコンサルティング
- 企業の規模や事業内容に応じて、どのような会議体を設定すべきか、稟議規程や権限規程をどう設計すべきかを助言。
- 実務担当者と協議し、使いやすくコンプライアンスを担保できる規程文案を作成。
- 法令改正対応とアップデート
- 労働法、個人情報保護法、下請法など各種法令改正に合わせ、社内規程を見直し、不備があれば改定案を提示。
- 法令違反リスクを低減しつつ企業の業務効率も考慮するバランスの取れたルールを設計。
- 経営会議・社内規程運用の実務支援
- 新規規程を導入する際に、社員説明会やマニュアル作成を支援し、現場レベルで運用定着を図る。
- 会議議事録の作成や電子決裁システムの導入アドバイスなど、企業DX(デジタル・トランスフォーメーション)面での助言も行う。
- 紛争対応
- 規程違反や決裁不備を理由とする社内トラブル、労使紛争、取引先との訴訟が起きた際に、企業側代理人として契約違反や就業規則適用など法的主張を展開。
- 経営会議決定の適法性や責任所在の立証に向けて、会議録などの証拠を整理し、迅速な解決を図る。
まとめ
- 経営会議は法定機関ではないものの、取締役会より詳細な業務レベルの意思決定や情報共有を行う場として重要。議題の明確化・事前資料配布・議事録作成を徹底し、形骸化を防ぐ。
- 社内規程は就業規則、稟議規程、個人情報保護規程など多岐にわたり、会社の内部統制を支える骨格。法改正や業務変化に合わせて定期的に改定し、社員への周知・研修を行わないと機能しない。
- 規程を整備することで責任所在やリスク管理が明確になり、不祥事発生リスクを抑止し、社内手続きの効率化とトラブル回避が期待できる。
- 弁護士の助言を得て、経営会議運営手順や社内規程整備を進めると、法令準拠(コンプライアンス)だけでなく、企業の実情に合った実務的なルールを策定でき、組織力強化につながる。
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