はじめに

借地権は、借地人が地主から土地を借りて建物を所有するための権利です。この借地権は売買や相続などで金銭的な価値(評価額)を持ち、公共事業の収用や契約終了時の立退きに際しては補償額が問題となります。しかし、借地権の評価は土地の所有権ほど単純ではなく、地代や契約期間、建物の状況など多くの要素が絡み合います。

本稿では、借地権の評価方法や補償金の算定ポイント、地主・借地人の双方が理解しておきたい注意点を解説し、紛争を避けるためのヒントを提供します。

Q&A

Q1.借地権とはどのように評価されるのでしょうか?

借地権の評価は、底地(所有権)の評価額から借地権割合を差し引く方法が一般的です。国税庁が公表する「借地権割合」を参考に、
借地権評価額= 自用地評価額(更地の評価額) × 借地権割合
という計算式が使われるケースがあります。借地権割合は地域によって異なり、60%~80%前後の場合が多いです(地域により幅あり)。

Q2.借地権割合とは何ですか?

借地権割合は国税庁が地域ごとに定めた目安で、自用地評価(更地評価)に対して借地人が保有する権利価値を何%とするかを示します。例えば地域の借地権割合が70%なら、1億円の更地評価なら7,000万円が借地権の評価額、残り3,000万円は地主の保有する底地評価額という形です。

Q3.公共事業などで借地上の建物が収用される場合、借地権者はどのように補償を受けるのですか?

公共事業収用の際には、借地権の補償も行われます。具体的には、

  1. 建物補償
    建物の構造・築年数などに応じた補償額
  2. 借地権補償
    借地権者が得るべき権利価値を、借地権割合や地代・残存期間などを考慮して算定
  3. 移転費用・営業補償
    事業用の場合、移転費や営業損失などを補償してもらえる場合がある

地主と借地人の両者がそれぞれの権利価値に基づいて補償を受けるため、査定や交渉が必要です。

Q4.借地契約終了や更新拒絶された場合、借地人が受ける補償はありますか?

普通借地契約で正当事由をもとに更新拒絶が認められた場合、借地人は建物買取請求権により建物を地主へ売却できる(借地借家法第13条など参照)。
また、立退料という形で補償を受けるケースもありますが、法律で定額は定まっていません。実務では地主が立退料を支払って和解する事例が多いです。
ただし、定期借地契約の場合は更新がなく、建物買取請求も基本的に認められません(契約形態による例外を除く)。

Q5.弁護士に相談するメリットは?

借地権評価や補償金をめぐるトラブルは専門的な法知識と鑑定評価が絡み合います。弁護士に相談すると、

  1. 評価や補償交渉
    不動産鑑定士と連携し、公正な評価額の算定や補償金の交渉を法律的にサポート。
  2. 契約終了・更新拒絶紛争
    地主・借地人間で交渉が決裂した場合、調停や裁判で弁護士が代理。
  3. 相続時の借地権評価
    借地権を相続する際の相続税評価や遺産分割協議で弁護士がアドバイス。
  4. 弁護士法人長瀬総合法律事務所の豊富な経験
    借地借家法関連のトラブルを多数解決し、地主・借地人双方の目線で最適解を提供可能。

解説

借地権評価の基本

  1. 国税庁の相続税路線価基準
    • 借地権評価:自用地価 × 借地権割合
    • 底地評価:自用地価×(1−借地権割合)
    • 各地の借地権割合は「財産評価基準書」で確認。
  2. 実勢価格との乖離
    上記の評価はあくまで税務上の基準。実際の市場価格では、借地権取引が活発かどうか、土地の形状、契約条件などで価値が上下する。
  3. 建物買取請求価格
    借地が終了し、建物買取請求権が行使される場合、建物評価額+借地権相当の補償を議論するケースが多い。実務では鑑定士の査定をもとに交渉。

補償金の算定ポイント

  1. 公共事業の収用補償
    • 「土地収用法」に基づき、取得価格(借地権評価)と移転費用、営業補償などを収用委員会が審理。
    • 借地人・地主それぞれが不満を述べる場合、裁決前に異議申し立てや不服審査が行われる。
  2. 任意交渉による補償
    • 借地契約の終了や更新拒絶で、地主と借地人が互いにメリットを得るため立退料を設定して合意する場合が多い。
    • 相場はケースバイケース。建物評価、残存契約期間、地域慣行など様々。
  3. 裁判所での評価
    • 裁判所が鑑定評価を採用して補償額を決定する場合あり。弁護士や不動産鑑定士と連携して適正な金額を主張・立証する。

実務トラブルと解決例

  1. 借地権譲渡時の価格交渉
    • 借地人が第三者に借地権を売却しようとする際、地主の承諾料が高額。適正相場を巡って紛争化。
    • 弁護士と鑑定士が評価を示し交渉→地主・借地人双方が納得の金額で合意。
  2. 契約終了時の建物買取価格
    • 地主が更新拒絶したが立退料を提示せず、借地人は建物買取を要求。価格折り合わず裁判に。
    • 裁判所が鑑定評価をベースに妥当額を認定、地主がその額を支払い建物取得。
  3. 収用による補償金
    • 公共事業で土地全体を収用するが、借地人の建物も存在。地主と借地人が配分額をめぐって対立。
    • 収用委員会の判定に不満で審査請求を行うも、最終的に裁決で配分が確定。

弁護士に相談するメリット

  1. 鑑定士との連携で適正評価
    弁護士が不動産鑑定士とタッグを組み、交渉・訴訟で法的根拠と鑑定評価を提示し、有利な結果を引き出せる。
  2. 契約終了・更新拒絶時の手続き代理
    建物買取請求や立退料交渉で弁護士が適切に主張立証し、地主・借地人の紛争を迅速に解決。
  3. 譲渡・転貸承諾料交渉
    地主が高額な承諾料を要求する、借地人が無断譲渡しようとするなど、トラブルを弁護士が法的視点から調整。
  4. 弁護士法人長瀬総合法律事務所の多様な経験
    借地権評価、補償金紛争、収用対策など、多方面の案件を数多く手がけ、地主・借地人いずれの立場でも最適解を提案可能。

まとめ

  • 借地権の評価額
    自用地価格×借地権割合が目安。地域・契約内容次第で実勢価格とは乖離する場合もある。
  • 補償金
    契約終了や収用時に借地人の建物や権利を補償。立退料や買取請求価格の交渉が発生しやすい。
  • ポイント
    • 公共事業収用では土地収用法に基づき評価・補償。
    • 普通借地契約終了でも借地人に建物買取請求権が認められる場合あり。
    • 譲渡・転貸には地主承諾が原則必須。承諾料を巡る紛争が多い。
  • 弁護士活用
    紛争リスクを抑えた交渉、建物買取価格や承諾料の適正評価、契約トラブル対応などを包括的にサポート。

借地権の評価や補償金をめぐる問題は、地主・借地人それぞれに大きな経済的インパクトをもたらす可能性があります。専門家の助言を得て、公平かつ正当な価格の算定や適切な補償交渉を進めることが紛争回避と円満な合意形成への近道となるでしょう。


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