はじめに

商品やサービスを広く市場に展開するために、代理店契約フランチャイズ契約を結ぶ企業は多く見られます。前者は企業(本社)が代理店を通じて商品を販売・サービス提供する形態、後者はフランチャイズ本部が加盟店にブランドやノウハウを提供し、加盟店がロイヤリティを支払う形態です。いずれもビジネス拡大には有効なスキームですが、一方で契約書の不備権利義務の不明確さが紛争を生む原因となりがちです。

例えば、代理店契約では販売エリア在庫リスク売上ノルマなどをめぐるトラブル、フランチャイズ契約ではロイヤリティ算定マニュアル順守義務独立性をめぐる対立などが典型的です。本記事では、代理店契約・フランチャイズ契約をめぐる法的リスクと、その回避・成功のためのポイントを解説します。

Q&A

Q1:代理店契約とフランチャイズ契約はどう違うのでしょうか?

代理店契約は、企業(委託者)が代理店に自社商品の販売権限を付与し、代理店が顧客に対して商品を販売する形態です。代理店は独立した事業者として自社リスクで販売し、通常はマージンコミッションを得ます。一方、フランチャイズ契約は、フランチャイザー(本部)が商号や商標、ノウハウを加盟店に提供し、加盟店はロイヤリティを支払って同一ブランドとして営業する形態です。オペレーションマニュアルに従い、店舗イメージやサービスを統一することでブランド力を維持・拡大します。

Q2:代理店契約を結ぶ際に注意すべき条項は?

主なチェックポイントは下記の通りです。

  1. 販売エリア・範囲:地域独占なのか、競合代理店の設置が許されるのか。
  2. 販売ノルマ・目標:未達成時に契約解除やペナルティを定めるか。
  3. 在庫リスク:仕入在庫を代理店が抱えるのか、返品可否はどうか。
  4. 手数料・コミッション:算定方式、支払期日、遅延損害金など。
  5. ブランド使用ルール:広告物やロゴ使用時の規定。
  6. 契約期間・更新・解除:一定期間で自動更新なのか、途中解除はどう扱うか。
Q3:フランチャイズ契約でよくある紛争は何ですか?

フランチャイズ契約では、ロイヤリティの算定方法(売上高ベースなど)や、指導・サポート不足収益性をめぐるトラブルが典型例です。また、本部のマニュアルが過度に厳格で加盟店の独立性が侵害されているとして、実態が雇用ではないか、または下請法独禁法に抵触する懸念が出るケースもあります。経営方針の相違で揉めることもあり、契約解除や損害賠償をめぐる裁判に発展する事例も見られます。

Q4:フランチャイズ契約書に必ず盛り込みたい条項は?

例えば、以下の条項が重要です。

  1. 加盟店の営業地域営業範囲(独占か非独占か)。
  2. ロイヤリティ算定方式(売上の○%、固定額、最低保証額など)と支払い期日。
  3. ブランド・マニュアル順守義務:店舗デザイン、サービス品質、仕入先、広告宣伝ルールなど。
  4. 教育・研修・サポートの内容や費用負担。
  5. 契約期間と更新中途解約の可否。
  6. 知的財産権の帰属と使用範囲、契約終了後の非競業義務看板撤去の義務など。

解説

代理店契約のリスク管理

  1. エリア独占・準独占の設定
    • 代理店に「○○県内独占販売権」を付与する場合、売主(本社)は同地域で新規代理店を追加できないリスクがある。
    • 逆に買主(代理店)は競合店舗の乱立を避けたいと考えるため、どの程度のエリア独占を認めるか慎重に交渉する。
  2. 在庫リスクと販売目標
    • 代理店に一定数量を仕入れさせると在庫リスクが生じる。返品制度を設ける場合は返品時の費用負担期限を明確化。
    • 販売目標を設定し、未達の場合は契約解除独占権剥奪などの条項を盛り込むケースも。これは代理店のモチベーション確保につながるが、過度に厳しい目標はトラブルの種となる。
  3. 手数料・コミッションの計算方法
    • 代理店が販売した実績に応じてコミッションを支払う形か、仕入れ時の卸値との差額が代理店のマージンとなる形か、契約書で明示する。
    • 業績報告や売上集計の監査権を設定し、不正報告を防ぐ工夫が必要。
  4. 契約期間・解除
    • 長期契約を結ぶと、双方の事情変更で不都合が生じる場合があるため、更新条項や解除条項を詳細に設定。
    • 例えば「1年間の有効期間、甲または乙が更新の意思を表明しなければ終了」「重大な契約違反があれば催告なく解除可」など。
  5. 広告宣伝・ブランディング管理
    • 代理店が勝手にブランドイメージを損なうような宣伝を行わないよう、広告物の事前承認を義務付ける。
    • CI(コーポレートアイデンティティ)やロゴマニュアルがある場合は、契約書に厳守義務を定める。

フランチャイズ契約のリスク管理

  1. フランチャイズの本質と独立経営
    • フランチャイザー(本部)がノウハウ・商標・マニュアルを提供し、フランチャイジー(加盟店)は独立した経営者として自己責任で営業。ただし、本部からの指示が過度だと労働者性を主張されるリスクがある。
    • 独禁法上、取引制限の疑いを生まないよう、強制的な仕入れ価格統制に注意が必要。
  2. ロイヤリティと開業費用
    • フランチャイズ契約では、初期費用(加盟金)と月々のロイヤリティが基本。売上連動(売上の○%)、定額、ミニマムギャランティなど多様な形態がある。
    • 契約書でロイヤリティの計算式や支払期日、遅延損害金を明文化し、報告義務と監査権を設定。
  3. マニュアル順守義務とサポート
    • 本部はノウハウ・マニュアルを提供し、加盟店がこれを遵守することでブランドの統一感を確保。逆にマニュアル外の独自行動を許可するか否か検討が必要。
    • 加盟店が「本部のサポートが不十分だった」と主張する紛争が多いため、契約書で本部の支援内容(研修、定期訪問、販促物提供など)を具体的に記載すると良い。
  4. 契約期間・契約終了後の義務
    • フランチャイズ契約は5~10年など長期が多いが、途中解約や更新条件を合意しておかないと紛争化しやすい。
    • 終了後、看板や商標、マニュアルの使用禁止や、店舗外観の撤去、競業避止義務をどう扱うかを定める。
  5. 情報保護・競業避止
    • ノウハウや顧客リストが本部の重要財産である場合、契約中・終了後において加盟店が流用しないよう、秘密保持義務競業避止を強力に規定。
    • ただし、競業避止が過度に広範囲・長期間だと無効とされる可能性があるので、合理的範囲で設定する必要がある。

紛争事例と防止策

  1. 代理店が販売ノルマを達成できず契約解除争い
    • 契約書で「年商○○円未達なら解除可能」と定めていても、代理店が「市場環境の変化を考慮していない」など主張し、解除が無効だと争うケース。
    • 対策:ノルマ設定に客観的根拠を持たせ、達成困難な場合の協議条項を設定。解除前に是正勧告や猶予期間を設ける。
  2. フランチャイズ契約で本部のサポートが不十分と提訴
    • 加盟店が「本部から指示された研修や宣伝支援が行われず、売上不振」として契約解除・損害賠償を請求。
    • 対策:本部の義務を明確化し、どの程度の支援をするか具体的に列挙(例:月1回の店舗訪問、広告宣伝費の負担割合など)し、施策の実行プロセスを契約書に落とし込む。
  3. 委託先が競合製品扱いでブランドイメージが損なわれる
    • 代理店が他社の同種商品を併売して、本社のブランド戦略が崩れたとしてトラブル。契約書に競合品の取扱禁止がないため強く言えない事例。
    • 対策:競合取扱いを完全禁止するか、複数取り扱い可とするか検討し、競合度合いをどう評価するか明記。

弁護士に相談するメリット

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、代理店契約・フランチャイズ契約における法的リスク管理と紛争対応で、以下のサポートを提供しています。

  1. 契約書作成・レビュー
    • 企業が独自に作成したドラフトや、相手方から提示された契約書を専門的視点でチェックし、問題条項を洗い出し、修正案を提示。
    • 代理店契約・フランチャイズ契約の最新の判例や法改正を踏まえ、最適な条文を提案します。
  2. ブランド保護・競業避止策
    • ブランドイメージを守るための広告管理条項、競合製品の取扱制限条項などの設計を支援。
    • フランチャイズ契約における商標・ノウハウの保護方法、契約終了後の利用禁止措置を明確化し、トラブル防止に寄与します。
  3. 独禁法・下請法対応
    • 代理店やフランチャイズ形態が独禁法上の「優越的地位濫用」や下請法に当たる可能性を診断し、リスクを回避する条文設計を行います。
    • 適切な取引条件や報酬設定のアドバイスにより、行政指導や指摘を予防します。
  4. 紛争処理・交渉代理
    • 契約違反や契約解除・損害賠償問題が起きた場合、企業代理人として交渉・仲裁・裁判などをサポートし、早期解決を図ります。
    • 効率的な証拠収集や証拠整理を行い、企業の正当性を主張立証する戦略を提案します。

まとめ

  • 代理店契約フランチャイズ契約はいずれも企業の販路拡大に有効だが、契約書の不備やリスク管理の不足が紛争を招きやすい。
  • 代理店契約では販売エリアノルマ、在庫リスクなどを明確にし、フランチャイズ契約ではロイヤリティ計算マニュアル順守サポート内容契約期間を条文化しておく必要がある。
  • 独禁法や下請法との抵触リスク、競業避止ブランド保護など多角的な法務観点が求められ、弁護士の助言を得ることで安全性が高まる。
  • 紛争が起きた場合にも、契約書に定めた条項を根拠に損害賠償請求契約解除を判断し、迅速な交渉・裁判対応でリスクを最小化できる。

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