相談事例
新たに友人とともに新規ビジネスを始めようと思い、会社の設立を検討しています。
設立コストが安く、株主総会のような内部組織の設置の必要もない合同会社形態を選択しようと思いますが、合同会社を設立する場合の手続の流れについて教えてください。
解説
合同会社設立の流れ
合同会社を設立する場合、会社法上、その社員になろうとする者が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印することが必要となります(会社法575条1項)。
そして、社員になろうとする者は、定款の作成後、合同会社の設立の登記をするときまでに、その出資金銭の全額又は現物資産全部を払い込む必要があります。
その後、合同会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立します(会社法579条)。
したがって、会社法上、合同会社設立に当たり、以下の手続が必要となります。
もっとも、実際には、事前に定款に規定すべき事項を決定したり、法人の実印を作成したりといった事前準備手続や、合同会社設立後の税務署等への各種届出も必要となります。
以下、こうした会社法以外で必要となる手続も含めた、合同会社設立までの具体的な手続の内容について説明していきます。
具体的な手続
事前準備
まず、定款の作成等の具体的な設立手続に入る前に、会社としての基本的な設立項目を決めておくと、その後の設立手続がスムーズとなります。事前準備段階で決めておくべき、また、用意しておくべき主な書類等は以下のとおりです。
【あらかじめ決定しておくべき事項】
① 商号 | 「合同会社」という文言を必ず盛り込む必要があります。また、本店所在地として予定している場所に同じ商号の会社が既に設立されていないか、管轄の法務局で商号調査を行う必要があります。 | |
---|---|---|
② 事業目的 | 定款に記載します | |
③ 本店所在地 | 定款作成や登記申請の際に必要となります。 | |
④ 資本金の額 | 1円以上であれば法律上問題はありませんが、実務上は10万円〜300万円程度で設定されるケースが多いと思われます。 | |
⑤ 社員の決定 | 社員=出資者であり、1人でも構いません。定款に氏名・住所が記載されます。誰が代表社員になるかも、あらかじめ決定しておきましょう。 | |
⑥ 事業年度の決定 | 会社の決算月を決定します。 |
【あらかじめ用意しておくべき書類等】
① 法人実印 | 設立書類の押印に必要となるため、あらかじめ作成しておく必要があります。 | |
---|---|---|
② 印鑑証明書の取得 | 法務局で登記を行う際に必要となるため、あらかじめ取得しておく必要があります。 | |
③ 設立費用の用意 | ご自分で設立する場合、合計で10万2000円ほど必要となります。 これに対して、司法書士等の専門家に依頼した場合、電子定款を利用することによって印紙代4万円を節約することが可能となるため、司法書士等への報酬を含めた実際の費用負担はご自分で設立する場合と大差ないことが多いと思われます。 |
定款の作成
定款には、①記載しないと定款自体が無効となる絶対的記載事項と、②記載しなくても問題はないものの、定款に記載すれば有効な規定として効力を持つことになる相対的記載事項の2種類があります。
最低限、絶対的記載事項については漏れなく記載する必要がありますので、この点は慎重に確認する必要があります。
なお、定款を紙ではなく電子定款で作成すれば、印紙代4万円を節約することが可能となります。
ただし、電子定款を作成するためには専用の電子機器・ソフトウエアが必要となるため、司法書士等の専門家に依頼しない限り、実際には電子定款をご自分で作成することは困難かと思います。
資本金の払込み
定款作成後、社員になろうとする者は設立登記申請時までに定款記載の出資に係る金銭の全額を払い込み、その払込証明書を作成する必要があります。
具体的には、「資本金を振り込んだ通帳のコピー」で足り、
- ① 通帳の表紙
- ② 表紙をめくった1枚目の見開き頁
- ③ 振込が確認できる頁
の 3つがあれば手続は可能です。
なお、登記申請にあたり、「定款作成日以降に出資金を入金した」という記録が要求されるため、定款作成日前に出資金を入金していた場合、いったん引き出して再度入金する必要があることに注意が必要です(実務上、多少であれば定款作成日付を遡ってつじつまを合わせることもあるようですが、定款作成の数か月前に出資金として入金していたような場合には、再度の入金が必要となります)。
登記書類の作成
定款作成後、登記書類として以下の書類を用意する必要があります
登記申請
以上の書類を用意した後、管轄法務局にて設立登記申請を行います。なお、法務局に設立登記申請をした日が会社設立の日となります。
設立後の届出(税務関係・社会保険関係)
以上の手続をもって合同会社の設立自体は完了となりますが、設立後も税務関係、社会保険関係の届出を行う必要があります。
書類によっては届出までの期間が短いものもあるため、事前に提出期限を確認するとともに、迅速に提出できるよう準備しておくことが望ましいと言えます。
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