【質問】

当社は非上場会社であり、取締役会設置会社ですが、このたび、発行済株式総数を減少させて株価を改善させるべく、自己株式の取得を検討しています。
株主との合意に基づき取得することとし、その方法として、全株主に申込みの機会を与える方法で取得することを検討していますが、株主総会決議は必要でしょうか。

【回答】

合意による自己株式の原則形態である、いわゆるミニ公開買付により自己株式を取得する場合、原則として取得それ自体について株主総会で決議するとともに、取得の実行についても取締役会で決議するという、2つの機関による決議が必要となります。
もっとも、一定の要件を満たす取締役会設置会社であれば、定款の定めがあれば取得それ自体の決議を取締役会で行うことも認められています。

【解説】

4. 全株主に申込みの機会を与える方法(ミニ公開買付)

「自己株式−自己株式を取得できる場合とその方法」で説明したとおり、株主との合意により会社が自己株式を取得する方法は大きく4つに整理することができますが、そのうち、全株主に申込みの機会を与える方法が、一般に「ミニ公開買付」と呼ばれています(会社法156条)。
会社法上、このミニ公開買付が合意による自己株式取得の原則的な取得方法として規律されており、特定の株主からの取得等については、必要な手続要件が加重等されている場合があります。
なお、上場会社について、会社が市場「外」で自己株式取得を行う場合、特定の株主からの取得(会社法160条)を除き、金商法上の公開買付手続によることが必要となるため、ミニ公開買付の方法で取得することはできません(金商法27条の22の2第1項第1号参照)。
したがって、ミニ公開買付の方法は、会社が自己の非上場株式を取得する場合にのみ利用できるものといえます。

5. ミニ公開買付の手続

合意による自己株式取得の原則形態というべきミニ公開買付の手続は、原則として、概要以下の5つのプロセスを経ることになります。
各プロセスを規定した条文は別々に規定されているため、条文を逐一確認しながら整理するとよいでしょう。

(1)I. 株主総会決議−取得の「枠取り」のための決議
株式会社は、原則として、株主総会の普通決議により、自己株式取得の「枠取り」として、以下の事項を定める必要があります(会社法156条1項)。
① 取得する自己株式の種類及び数
② 自己株式の取得と引き換えに交付する金銭等の内容及びその総額
③ 株式を取得することができる期間
ただし、取締役会設置会社では、以下の場合には、例外的に、株主総会決議ではなく、取締役会決議により、会社法156条1項に規定する自己株式取得の決議を行うことが認められています。
① 一定の要件を満たす会社において、剰余金の配当等を取締役会が決定する旨の定款の定めがある場合(会社法459条1項1号)(☆)
② 子会社の有する自己株式を取得する場合
③ 市場取引、公開買付による取得を取締役会で決定する旨の定款の定めがある場合

(2)II. 取締役会決議−取得の「実行」に係る決議
上記I.の株主総会決議は、いわば自己株式取得の「枠取り」のための決議ですが、実際に自己株式の取得を「実行」する段階において、株式会社は上記I.の株主総会決議の範囲内で、別途以下の事項を決定する必要があります。
① 取得する自己株式の種類及び数
② 自己株式1株を取得するのと引き換えに交付する金銭等の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
③ 株式を取得するのと引き換えに交付する金銭等の総額
④ 株式の譲渡しの申込みの期日

このように自己株式の取得のためには、原則として、I.取得それ自体を決定するための株主総会決議と、II.当該株主総会決議に基づく取得を実行するための取締役会決議、の2つの決議が必要となることに注意が必要です。

(3)III. 株主に対する通知・公告
上記II.の決定を行った株式会社は、株主が譲渡しの申込みができるよう、決定した内容を株主に通知する必要があります(会社法158条1項)。
なお、会社が公開会社の場合、個別の通知ではなく、公告によることが認められています(会社法158条2項)。

(4)IV. 会社に対する譲渡しの申込み
上記III.の通知又は公告により、株式会社に対して自己株式の譲渡しを希望する株主は、譲り渡す株式の種類及び数を特定して申し込む必要があります(会社法159条1項)。

(5)V. 会社の承諾
上記VI.に基づき、株主から譲渡しの申込みを受けた株式会社は、特段の意思表示をすることなく、上記III.で定めた譲渡しの申込期日において、申込みに係る自己株式の譲受けを承諾したものとみなされます(会社法159条2項)。