Case Study

顧問弁護士の活用事例

職場秩序の回復と予防法務の実践|就業規則の見直しで、健全な企業文化を取り戻した事例

相談前の状況

ご相談いただいたのは、従業員の自主性と良好なコミュニケーションを企業文化の核として成長されてきた、関東圏内のサービス業の企業様です。

しかし近年、複数の部署で従業員間の私的な関係が原因とみられる問題が散見されるようになりました。特定の社員間の関係が職場全体の雰囲気を悪化させたり、関係の破綻がきっかけで優秀な社員が退職してしまったりと、組織運営に看過できない影響が出始めていました。

経営陣や管理職の方々は、こうした事態が従業員の士気を下げ、生産性を阻害するリスクであると強く認識されていました。一方で、「個人のプライバシーに会社がどこまで介入すべきか」という法的な判断基準が曖昧であり、問題に対して毅然とした対応を取ることに躊躇いがありました。

就業規則には、服務規律として「職場の風紀を乱してはならない」といった趣旨の一般的な規定はありましたが、それを根拠に具体的な指導や処分を行うには、あまりに抽象的で、法的なリスクを伴うと感じられていました。

問題の芽を早期に摘み、全従業員が安心して業務に集中できる環境を維持・再構築するため、法的にも実務的にも有効な、明確な社内ルールを整備したいとの思いから、当事務所にご相談をいただきました。

相談後の対応

当事務所では、まず企業様が抱える問題の背景と目指すべきゴールを共有した上で、法的な原則に基づいた具体的な解決策をご提案、実行いたしました。

第一に、従業員の私生活上の行為に対する会社の懲戒権の法的限界と、それが認められる場合の要件を、近年の裁判例を交えて分かりやすくご説明しました。重要なのは、「行為そのもの」ではなく、その行為が「会社の事業運営や職場環境に、どのような具体的な悪影響を及ぼしたか」という客観的な事実に基づいて判断するという原則です。この点を明確にしたことで、担当者の方々の法的な迷いを解消しました。

次に、この原則に基づき、貴社の人事ご担当者様と緊密に連携しながら、就業規則の改定作業に着手しました。単に私的な関係を禁止するのではなく、従業員のプライバシー権に配慮しつつ、会社の正当な利益を守るための規定となるよう、以下の点を重視しました。

  • 服務規律の具体化
    従業員が日頃から遵守すべき事項として、職場秩序の維持に協力する義務があることを、より具体的な言葉で明記しました。
  • 懲戒事由の明確化
    懲戒処分の対象となりうる行為を、「職務専念義務違反」「職場環境の悪化」「公正な業務遂行の阻害」「会社への具体的な損害の発生」といった形で具体的に列挙しました。これにより、処分の客観性と公平性を担保し、恣意的な運用との批判を回避できる体制を整えました。

担当弁護士からのコメント

本件は、多くの企業が直面しうる、従業員のプライベートと企業秩序のバランスという繊細な問題に対し、法的に有効かつ実用的な解決策を導き出せた好例です。

この種の問題に対応する上で最も重要なのは、「行為そのもの」と、それがもたらす「結果(=企業秩序の侵害)」を明確に切り分けて考える視点です。

感情論や道徳論ではなく、あくまで会社の事業運営にどのような具体的な影響があったかを客観的に評価することが、法的対応の出発点となります。

就業規則は、単に労働条件を定めた書類であるだけでなく、その企業が目指す企業文化や従業員に期待する行動規範を示す、いわば「会社の憲法」とも言える存在です。

問題が発生してから場当たり的に対応するのではなく、本件のように、事前に明確なルールを整備し、全従業員と共有しておく「予防法務」の考え方は、不要な労使トラブルを未然に防ぎ、企業の健全な成長を支える上で重要です。

従業員の権利を尊重しながら、企業として守るべき一線を明確にする。このバランスの取れたルール作りこそが、従業員の信頼を育み、強くしなやかな組織文化を醸成する礎となると、私たちは信じています。

同様のお悩みをお持ちの企業様は、ぜひお気軽に当事務所にご相談ください。

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弁護士法人 長瀬総合法律事務所

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