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長瀬総合法律事務所 ホーム 顧問弁護士の活用事例 【運送事業者】トラック運転手との間で合意退職が成立した事例
相談企業A社は、従業員10名前後の運送事業者です。
運送事業者は慢性的な人手不足に悩まされているため、A社でも求人応募があればとりあえず採用するという方針を取っていました。
ところが、A社が数ヶ月前に採用したトラック運転手Bは、入社直後から無断欠勤を繰り返したり、荷主と頻繁にトラブルを起こしたりするなどの問題行動を繰り返していました。
A社は、これ以上Bに勤務してもらっていてはかえってトラブルが増えるばかりだと考え、明日から出社しなくてよいと伝えたところ、Bから不当解雇ではないかと言われてしまいました。
労働契約は、社員が会社のために労働し、会社がこれに対して賃金を支払う契約をいう(労働契約法6条)ところ、普通解雇とは、労務の提供という債務の不履行状態にある社員に対して、会社が一方的に労働契約を終了させることをいいます。
相談事例のように、会社がBに対して会社を辞めてもらう旨を通知することは、一方的に労働契約を終了させることであり、解雇に該当すると解されます。
なお、解雇の留意点の詳細は、こちらのサイトをご覧ください。
人事労務・労務管理
解雇に関する留意点について、解説しております。
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ご相談のケースでは、A社がBに対し、「明日から出社しなくてよい」と通知いたということであり、「解雇」という言葉自体は使用していません。
明日から出社しなくてよいということは、自宅待機の業務命令と解する余地もありますが、会社都合で自宅待機を命じる場合には、その期間の賃金は支払わなければなりません。
仮にA社がBに対して出社を拒否した後の賃金を支払うつもりがないのであれば、出社拒否は解雇と解される方向になります。
A社の対応が解雇に該当すると解される可能性があるところ、解雇が有効と認められるためには「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」であるといえる必要があります(労働契約法16条)。
もっとも、ご相談のケースでは、Bが問題行動を繰り返していたとはいえ、過去に懲戒処分に付した形跡がない場合等は、解雇が有効とは認められないおそれが高いといえます。
仮に解雇が無効と解された場合、A社はBに対し、出社拒否をしていた間の賃金を遡って支払うよう命じられるリスクがあります(バックペイ)。
そこで、A社と協議し、Bに対しては解雇ではなく合意退職を選択することを提案しました。
当事務所が会社の代理人としてBと交渉し、B自身も会社に復職する希望があるかどうかを確認したところ、Bとしても復職する意向は乏しい様子だったことがうかがわれました。
そこで、会社とBとの間で、雇用契約を終了させる条件について協議し、一定の解決金を支払うことで、合意退職に応じてもらうことになりました。
労務紛争の中でも、雇用契約の終了の場面は、特に深刻なトラブルに発展することが少なくありません。
雇用契約の終了方法は、今回ご紹介した解雇、合意退職のほかにも、雇止めや退職勧奨等、様々なものがあります。事案に応じ、労働者の真意がどこにあるのかを見極めた上で、会社として適切な対応を講じる必要があります。
ご相談のケースでも、労働トラブルが発生した初期段階でBの意向を確認し、会社に復職する真意はないことがわかったことから、スムーズに合意退職に向けて話し合いを進めることができましたが、初動対応を見誤った場合には、解雇の有効性を巡って裁判にまで発生する可能性も否定できませんでした。
労務紛争は、初動対応の適否によってその後の問題解決が大きく異なる可能性がありますので、ご留意ください。
なお、合意退職にあたっては、こちらの書式をご参照ください。
書式
会社と従業員との間で退職に合意する場合の書式です。解雇処分は会社の一方的な意思表示であり、解雇無効を争われるリスクがありますが、合意退職であれば労働契約の終了の有効性を争われるリスクは回避しやすいといえます。
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