1.不適切な写真の投稿

TwitterやFacebook等のSNSが発展し、誰もが簡単に情報を発信できるようになった現在、悪気はなくても不適切な写真を投稿してしまうことも増えています。そして、インターネットでは、ひとたび公開されてしまうと拡散が非常に簡単であるという特徴があります。会社の不名誉や不祥事はあっという間に世間に広まってしまいます。

不適切な写真の投稿があった場合、または不適切な写真の投稿をさせないようにするにはどのような対応策を取る必要があるのでしょうか。

2.事後的な対応

(1)不適切写真を含む投稿の削除要請

インターネットやSNSの場合、情報は驚くほどの速さで広がってしまいますので、会社の被害を最小限に抑えるために、従業員に対し問題となる投稿の削除要請をする必要があります。

ただ、写真の投稿はあくまでもプライベートでの投稿になりますので、従業員の任意の削除を求めていくのが原則になりますが、従業員が要請を無視し続けるようであれば、サイト管理者に対する削除請求も検討する必要が出てきます。

(2)懲戒処分

不適切な投稿をすることが懲戒事由として就業規則に定められている場合には、懲戒処分ができることがあります。ただ、仮に懲戒事由に該当する場合であっても、「当該行為の性質・態様その他の事情に照らして社会通念上相当なものと認められない場合」(労働契約法第15条)には無効となります。そのため、個々の事例について具体的に検討していく必要があります。

(3)刑事告訴

従業員がSNSに会社を誹謗中傷するような投稿をした場合には、刑事告訴を検討する必要もあります。

(4)従業員への損害賠償請求や求償権の行使

従業員がSNSへ不適切な投稿をしたにより会社が損害を被った場合、会社はその従業員に対して、不法行為や債務不履行に基づく損害賠償請求ができることもあります。

また、顧客等からの損害賠償請求に対して会社が損害金を支払った場合、会社は従業員に対し、会社が負担した損害金を請求すること(求償権の行使)も考えられます。

ただし、判例によると、会社から従業員に対する損害賠償請求や求償請求は、信義則の観点から制限されますので、損害の全額を従業員に負担させられるわけではない、という点で注意が必要になります。

3.事前の対策

SNSによる従業員による不祥事は、回復困難なものが多く、また会社との関係においては従業員の責任が制限されがちであることを考慮すると、事後対策よりも事前の対応策を検討することが重要になります。

(1)SNS教育

従業員に対する事前の対策で、一番重要なのはSNSの利用方法についての教育になります。SNSの利用については、これまでに問題となった事例をあげたりしながら、会社が被る損害、個人の責任について、詳しく説明する機会をつくる必要があります。また、研修は一度だけでなく、定期的に行って常に従業員が意識できる環境を作る必要があります。

(2)SNS利用に関する規定

従業員のSNS利用に関ししては、就業規則やガイドラインで会社の基本姿勢を明確にしておく必要があります。また、就業規則等を説明したうえで、誓約書をとっておくのも有効です。また、万が一不適切な内容の投稿があった場合に備えて、就業規則の服務規律と懲戒事由のそれぞれにSNS利用に関する定めを設けておくことにより、従業員の懲戒処分を検討できる状況にしておくことが重要です。

4.まとめ

SNSでの情報は、瞬く間に広がり、いったん外に出てしまうと取り返しがつかなくなってしまいますので、従業員の不適切な投稿があった場合には、できるだけ早く対策をとる必要があります。手遅れになるまえに顧問弁護士に相談して一緒に対応策を検討するようにしましょう。また、事前の対策としても顧問弁護士がついていれば、SNS研修の内容を相談もできますし、社内規定の整え方についても相談することができます。従業員のSNS投稿についての対策をお考えであれば、ぜひ一度当事務所へご相談ください。