解説動画

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この動画の視聴にかかる時間:約15分
  • 00:00:ごあいさつ
  • 00:19:相談事例
  • 01:38:結論
  • 05:19:刑事手続上の身柄拘束時間と業務への支障の検討
  • 08:42:人事上の処遇についての検討
  • 14:41:今回解説したコラムのご案内
  • 15:04:メールマガジン登録のご案内
  • 15:22:ご留意事項
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従業員の逮捕

従業員が逮捕される、などということはあってほしくないことですし、なかなか想像が難しいかもしれませんが、マスコミでの報道等を見ていると、痴漢や盗撮等の性犯罪や酔っ払った際の暴行や器物損壊等の犯罪については珍しいものではありません。

自社の従業員が逮捕されてしまったら、会社としてはどのような対応を取る必要があるのでしょうか。

初動対応

従業員が逮捕された場合であっても、従業員の私生活上の犯罪は、従業員のプライベートの問題になりますので、会社は自社の業務にかかわる範囲のみにおいて対応をとる必要があります。従業員個人の問題についてまで深くかかわって対応をする必要はありませんが、会社として従業員の逮捕、刑事手続について検討しなくてはならない問題は以下の点です。

事実関係の確認

会社が確認できうる限りの情報で、事実の確認を行います。具体的には、犯罪行為の内容、従業員自身が犯罪行為を認めているかどうか、弁護人選任の有無、想定される今後のスケジュール等を確認します。

逮捕による身柄拘束で業務に支障が生じないか

逮捕されると身柄拘束が続くため、従業員は出社して業務に従事することができなくなります。そのため、業務に支障が生じる可能性が場合は、刑事手続のスケジュールも把握し、対応していく必要があります。

その従業員でなくてはわからない業務があったり、大きなプロジェクトの重要な役割を担っているような場合には、早期に開放されることが望まれますが、必要に応じて接見にいくことも検討しなくてはなりません。その場合、接見の可否や対応時間等を警察に確認する必要があります。

逮捕された従業員の人事上の処遇について

逮捕された場合であっても、プライベートでの行為になりますので、原則としては直ちに「懲戒処分」にすることは難しいでしょう。但し、犯罪の種類や重大性を考慮し、会社の名誉を棄損するような内容であった場合には、懲戒処分や解雇をすることができる場合もあります。

刑事手続上の身柄拘束時間と業務への支障の検討

逮捕には、現行犯逮捕(目の前で犯罪が行われている場合の逮捕)、通常逮捕(裁判所が発行する令状による逮捕)、緊急逮捕(重い罪の場合に逮捕してから令状をとるもの)がありますが、原則として、警察官が逮捕してから48時間以内に、被疑者を釈放するか、被疑者の身柄を検察官に送るか(送検)を判断しなければなりません。送検された場合、検察官は身柄を受け取ってから24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内に勾留請求をしない限り、被疑者を釈放しなければなりません。なお、検察官による逮捕の場合には、最大で24時間となります。

上記の身柄拘束時間とその従業員の業務内容をあわせて検討し、業務にどれくらいの支障をが出るかを考える必要があります。

人事上の処遇についての検討

給与について

身柄拘束されているのは従業員個人の理由によりますので、その間の賃金を支払う必要はありません。

では、その後従業員が釈放され、出社できるようになった場合の対応はどうすればよいのでしょうか。

会社としては、就業規則上の起訴休職の定めに基づき、休職を命じることも可能です。休職期間中の賃金については、従業員側の責任による休職であれば労務の不履行といえ、賃金請求権は発生しません。

従って、有効な起訴休職が適用された場合には、就業規則に賃金を支払う旨の記載がない限り、会社は起訴休職中の賃金を支払う必要はありません。

また、有効な起訴休職であった場合には、後に無罪判決が確定しても、起訴休職自体が違法になることはないと考えられます。

なお、有効な起訴休職といえるためには、就業規則に定めがあり、①対外的信用および職場秩序の維持に必要か、また労務の継続的な提供に支障を来すおそれがあるか②懲戒処分との均衡がとれているか、という要件を満たす必要があります。

解雇について

従業員を解雇する場合は、就業規則で懲戒事由を定め、予め従業員に周知させてあることが必要となります。

会社は、企業秩序を維持するため、これを侵害した従業員を懲戒処分することができますが、業務外の犯罪行為は企業秩序の範囲外にあり、これを理由に懲戒することは権利濫用にあたる可能性があります。

とはいえ、会社にとっても経営を続けていくためには社会的信頼も不可欠になりますので、社会一般から不名誉な行為として非難されるような従業員の行為により会社の名誉、信用その他の社会的評価を著しく毀損したと客観的に認められる場合に、制裁として、当該従業員を企業から排除しうることは可能だと言えます。

実際に解雇を検討する場合は、行為の性質や態様、会社の種類や事業内容、その従業員の会社内での地位、当該行為の影響等を客観的に判断して慎重に分析を行う必要があります。

退職金について

就業規則に退職金規定がある場合で、逮捕された従業員が自ら退職を申しでた場合、全く支払わないというわけにはいきません。退職金には賃金の意味もあり、逮捕されたからといってそれまでの労働の対価(賃金)がゼロになるわけではないからです。

また、懲戒解雇の場合は、就業規則に退職金を支払わない旨の規定がおかれている場合もありますが、こちらについても、長期間の勤続の効を抹消してしまうほどの信義に反する行為があったかどうかで判断しなくてはなりません。

まとめ

従業員が逮捕された場合には、まずは落ちついて事実確認をして、冷静に対する必要があります。

刑事手続のスケジュール確認等も素人ではなかなか難しい部分もありますので、専門家である顧問弁護士に相談をしながら対応を考えるのがよいでしょう。

また釈放後の従業員に対する対応や、会社としての社会的信頼の回復に向けた対応についても弁護士のアドバイスを受けながら慎重に行うようにしましょう。何かお困りのことがあれば、ぜひ当事務所にご相談ください。

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