1.賃料交渉について
賃料は、賃貸借契約締結に決定し、その後も同条件のまま支払いをする必要がありますが、賃貸住宅事情の変化等により、賃借人側から賃料についての交渉をされることがあります。
貸し手市場だった時代には、賃貸人側の方が圧倒的に強く、賃借人の方から賃料の交渉をしてくることはほとんどありませんでしたが、昨今は借り手市場が続いており、賃借人の方から賃料の値下げを要求してくることは珍しくありません。また、インターネットやSNSの普及により、賃料交渉の方法等が誰でも簡単に検索できるようになっているため、賃貸人としても事前に対応策を検討しておく必要があります。
賃料の交渉が面倒だからと、のらりくらりと対応したり、話し合いもせずに断ったりすると、結局賃借人が他の物件へ流れていってしまうことにも繋がりかねませんので、対応には注意する必要があります。
2.減額の交渉を受けた場合
実際に賃料減額の交渉を受けた場合にはどうすればよいのでしょうか。
(1)相手方の言い分を正確に把握する。
まずは賃借人の言い分を確認し、内容を正確に把握します。対応しない、とすぐに断るのではなく、冷静に話を聞き、受け止めるようにしましょう。
(2)金額の検討
次に、賃借人が要求している減額が現在の相場に照らしてどうかを検討します。ただし、賃貸借契約は更新を繰り返しながらの長期的な契約になりますので、様々な要素を検討する必要があり、要求が相場どおりの金額だからといって直ちに減額に応じる必要はありません。
(3)物件の市場価値の把握
借り手市場の現在、賃料交渉を無下に断り、賃貸のチャンスを失うのは得策ではありません。賃貸人にリスクのない交渉をしていくためにも、その物件の訴求力、市場動向等も調査しする必要があります。
(4)判断の仕方
賃借人にも問題があるような場合には、減額の交渉をお断りして、退去してもらうように話を進めてもよいでしょうし、物件自体に訴求力がある場合も減額を拒否してもよいと思います。いずれにせよ賃貸人としても強気の交渉をすることができます。一方、訴求力が強くない物件の場合は、ケースバイケースで、減額する金額や、空き家になるリスク等を総合的に検討していくことになります。
3.減額交渉をされないために
減額交渉を受ける理由は大きく分けて二つあります。「賃借人の事情により、賃料が払いきれなくなった場合」と「賃料に比しての賃借人の満足度が下がった場合」です。前者については賃借人に由来する理由になりますから、こちらに対して対策を講じることは不可能ですが、後者については普段からきめ細かい対応をとっていくとで減額交渉を受ける可能性を低くすることができます。
具体的には、以下のように対応することをお勧めいたします。
① 清掃を含めて、管理を徹底する。
② 定期的に修繕を実施し、常に住みやすい状態に保つ。
③ アンケートを半年に一回は実施し、満足度等を調査する。
④ 賃借人が困っている状況があれば、できる限り早く対応する。
⑤ 賃貸市場の状況をある程度把握しておく。
特に、目に見えやすい①と②については効果的で、清掃や修繕について一生懸命取り組んでいる賃貸人に対しては、賃借人も減額を持ち出しにくいという状況があるようです。また、③④についても、賃借人の満足度をあげる取り組みをすることで、信頼関係の構築ができ、クレームや減額交渉を減らすことにも繋がっていきます。
4.まとめ
時代の変化から、賃料交渉は常態化しており、賃貸人としても不利益を被らないためにできる限りの対応をしていくことが求められます。実際に減額の交渉をされた場合に、相手の話を分析したり、物件の市場価値を把握したり、一人では何かと不安になることも多いと思います。また、減額に応じるとしても、どの金額が妥当なのかを算定するには専門的な知識が必要になります。減額の交渉を受けた場合には、豊富な知識と経験をもつ弁護士に相談するようにしましょう。ぜひ当事務所ご連絡ください。