はじめに

雇用契約は、企業と従業員との間で労働条件や報酬などを取り決める非常に重要な契約です。しかし、この契約が適切に締結されない場合、後々のトラブルや法的リスクに発展する可能性があります。本記事では、雇用契約の基本的な知識や、契約を結ぶ際の注意点について解説します。

Q&A

Q1: 雇用契約と労働契約は同じものですか?

A1: 雇用契約と労働契約はほぼ同じ内容を持つ契約ですが、それぞれ異なる法律に基づいています。雇用契約は民法に基づいており、労働者が労働を提供し、使用者が報酬を支払うことを約束する契約です(民法623条)。一方、労働契約は労働契約法に基づき、労働者と使用者が賃金の支払いについて合意することで成立します(労働契約法6条)。

Q2: 企業が雇用契約を結ぶ際に気を付けるべき点は何ですか?

A2: 企業が雇用契約を結ぶ際に注意すべき点は、労働条件の正確な明示、違約金や損害賠償額の事前設定の禁止、そして労働契約書の適切な作成です。これらの法的義務を遵守することで、トラブルを未然に防ぐことができます。

雇用契約の基本

雇用契約とは、労働者が企業に対して労働を提供し、その対価として企業が報酬を支払うことを約束する契約です。この契約は、民法623条に基づいており、書面での契約がなくても口頭で成立します。しかし、後々のトラブルを避けるために、書面での契約が推奨されます。

雇用契約と労働契約の違い

雇用契約は民法に基づく契約であり、労働契約は労働契約法に基づいています。両者の法律的な背景は異なりますが、契約内容においては大きな違いはありません。どちらも労働者が働くことを約束し、使用者が報酬を支払うことを条件としています。

雇用契約を結ぶ際の重要なプロセス

雇用契約を結ぶ際には、いくつかのプロセスを経る必要があります。ここでは、企業が特に注意すべき重要なステップを紹介します。

1. 募集と明示

企業が求人を行う際、労働条件を明確にし、誇張や虚偽のない表現を使用することが重要です。具体的には、業務内容、契約期間、就業場所、賃金、休暇などを正確に記載する必要があります。この際、労働者に誤解を与えないよう、具体的かつわかりやすい表現を使用することが求められます。また、2024年4月からは、契約更新の基準や業務内容の変更範囲など、さらに詳細な情報の明示が義務付けられます。

2. 選考と採用

求職者からのエントリーがあった後、書類審査や面接などの選考プロセスを経て採用が決定します。面接の際には、特定の質問が禁止されていることや、選考基準の透明性を確保することが求められます。採用が決定した場合、内定を出すことが一般的ですが、この内定にも法的な効力があるため、適切な手続きが必要です。

3. 労働条件の明示

採用が決定した後、労働者に対して労働条件を明示することが義務付けられています。労働基準法15条に基づき、労働契約の期間、賃金の支払い方法、就業場所、休暇などの条件を文書で示す必要があります。これに違反すると、罰則が科される可能性があり、労働者との信頼関係を損なう結果にもなりかねません。

企業側が注意すべきポイント

雇用契約を結ぶ際に、企業が特に注意すべき法的ポイントを以下にまとめます。

1. 労働条件の明示義務

労働条件を明示する際には、労働基準法や労働契約法に基づく義務を遵守する必要があります。特に、正社員の場合は、労働契約の期間、就業時間、賃金、休暇、退職に関する事項など、詳細な条件を文書で明示しなければなりません。明示義務を怠った場合、企業は罰則を受ける可能性があります。また、労働者が希望する場合には、書面だけでなく電子メールやFAXによる明示も可能です(労働基準法施行規則5条4項ただし書)。

2. 賠償予定の禁止

労働基準法16条では、企業が労働契約の不履行に対して違約金や損害賠償額を事前に設定することを禁止しています。これは、労働者が安心して働くための重要な保護規定です。違反した場合、その契約は無効となり、企業には罰則が科されることになります。具体的には、例えば「一定期間内に退職した場合、違約金を支払う」などの条項は無効となります。

3. 業務委託契約との違い

企業が外部の個人や企業と業務委託契約を結ぶ場合、雇用契約とは異なる点に注意が必要です。業務委託契約は民法643条および656条に基づき、労働基準法の適用外となります。したがって、業務委託契約の場合には残業代の支払いや有給休暇の付与などが不要です。

ただし、契約の内容が実質的に雇用契約に該当すると判断された場合、企業は多額の残業代を支払うリスクを負う可能性があります。

労働者側が注意すべきポイント

労働者もまた、雇用契約を結ぶ際には慎重な対応が求められます。特に、契約書の内容を十分に確認し、不明な点があればその場で解消することが重要です。

1. 安易に雇用契約書にサインしない

雇用契約書は、労働者の権利と義務を定める重要な書類です。就職先が決まる喜びから、契約内容をよく確認せずにサインしてしまうことがありますが、これは非常に危険です。契約書にサインする前に、労働条件や賃金の計算方法、休日・休暇に関する事項などをしっかりと確認し、疑問点があれば解消してから契約することをお勧めします。

2. 口頭での条件提示に対する対処法

労働条件を口頭で伝えられた場合、後々のトラブルを避けるために、書面での確認を求めることが重要です。特に、正社員の場合には、書面での労働条件の明示が法律で義務付けられているため、口頭だけでの説明は法的に不十分です。書面作成が難しい場合でも、口頭での内容をメモに残し、後で確認できるようにしておくと良いでしょう。

弁護士に相談するメリット

雇用契約を結ぶ際には、企業も労働者も法的リスクを避けるために、専門家である弁護士に相談することが大変有益です。弁護士は、契約内容のチェックや法的義務の確認、トラブルを未然に防ぐためのアドバイスを提供します。特に、契約内容が複雑な場合や法改正に対応する必要がある場合、弁護士のサポートは非常に役立ちます。

まとめ

雇用契約は、企業と労働者との間で信頼関係を築くための基盤です。そのため、契約内容を明確にし、法的義務を遵守することが重要です。契約に関して疑問や不安がある場合は、ぜひ弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。専門家のアドバイスを受けることで、トラブルを未然に防ぎ、安心して労務環境を整えることができます。


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