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民事保全による債権回収

ポイント

  1. 民事保全手続の概要を押さえる
  2. 仮差押命令申立てでは、密行性が重視される一方、担保金を要求される傾向にある
  3. 仮処分命令申立てでは、双方審尋が求められる傾向にある

民事保全の手続

債権管理を実現する方法の一つとして、民事保全が挙げられます。

保全処分には、民事訴訟の本案の権利を保全するための仮差押と、本案の権利関係について仮の地位を定める仮処分があります。

以下では、仮差押と仮処分についてご説明します。

仮差押命令申立

仮差押とは

仮差押とは、金銭債権の執行を保全するために、債務者の財産をあらかじめ仮に差し押さえる裁判所の決定をいいます。

訴訟を行っている最中に相手方が資産を隠したり、散逸したりすれば、最終的に勝訴しても、回収ができなくなる事態がありえます。

そこで、訴訟提起前に仮差押命令を申し立て、債務者の預貯金や売掛金等を差し押さえ、債権管理の実効性を担保する必要があります。

以下では、仮差押命令申立手続の流れを説明します。

仮差押命令申立書の提出

仮差押命令申立書は、管轄である「本案の管轄裁判所」又は「仮に差し押さえるべき物若しくは係争物の所在地を管轄する地方裁判所」に提出します(民事保全法12条1項)。

なお、仮差押は、債務者に与える影響が大きいため、保全の必要性は慎重に判断される傾向にあります。

したがって、保全の必要性が認められない等の理由で、仮差押命令が認められないこともありえます。

債権者面接

仮差押命令申立事件では、密行性が重視され、口頭弁論が行われず、書面審理のほか、必要に応じて債権者面接が行われる一方、債務者の面接は行われない傾向にあります。

担保決定

債権者面接の結果、裁判所が仮差押命令の発令を相当と判断すると、担保決定がされることになります。担保金の額については明確な基準はありませんが、被保全債権の10〜30%とされる傾向にあります。

仮処分申立

仮処分とは

仮処分とは、紛争により生じている現在の危険や負担を取り除くために、本案訴訟の判決が確定するまでの間について、裁判所に暫定的な措置を求める手続をいいます。

仮処分には、係争物に関する仮処分(①処分禁止の仮処分、②占有移転禁止の仮処分)と、仮の地位を定める仮処分の2種類があります。

仮処分命令申立書の提出

仮処分命令申立書は、管轄である「本案の管轄裁判所」又は「仮に差し押さえるべき物若しくは係争物の所在地を管轄する地方裁判所」に提出します(民事保全法12条1項)。

双方審尋

仮差押命令申立事件とは異なり、仮処分命令申立事件では、債権者のみならず債務者の双方を面接する手続を経なければ仮処分命令を発することができないという運用をされる傾向にあります。

審尋の方法については特段の制限はなく、裁判所が適当と認める方法によって行われます。

債権者と債務者が交互又は同時に裁判官と面接して口頭で説明することもあれば、交互に書面を提出しあうこともあります。

和解等の解決

仮処分命令申立事件では、双方審尋が行われた後、裁判所から和解の勧告がされることもあります。

裁判所の和解勧告の結果、仮処分命令申立事件のみならず、請求債権自体に関する和解が成立し、終局的な解決に至ることもありますが和解が成立せずに本案訴訟まで発展してしまうこともあります。

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