ポイント

  1. 契約とは、契約書を作成しなくとも有効に成立する
  2. 契約書を作成する目的は、①当事者の合意内容を明確にすること、②証拠を作成すること、③リスクをコントロールすること、にある
  3. 契約書は、企業にとって楯と武器の役割がある

契約と契約書の関係

契約とは、当事者間における権利・義務に関する合意をいい、原則として「契約書」を作成しなくても契約は有効に成立します。

したがって、契約の成立には、契約書は必須の書類ということではありません(保証契約等、一部の契約を除きます)。

契約書の目的

もっとも、契約書には、①当事者間の合意内容を明確化し、将来、契約書の解釈をめぐってトラブルが生じないよう防止する役割が認められるとともに、②将来、当事者間で紛争が生じ、訴訟に発展した場合に、訴訟における最も有力な書証である契約書を自社に有利な証拠として利用できるよう確保しておくという役割が認められ、さらに、③契約書の解釈をめぐるトラブル等をはじめ、各種リスクをコントロールする手段としての役割が認められます。

特に契約社会である英米圏においては、「最悪シナリオを想定した場合におけるリスク分析及び当該リスクの最小化」こそが契約書の本質的な役割として考えられており、③リスクコントロール手段として契約書の果たす役割は極めて重要となります。

例えば、売買契約を締結する場合、①売買代金の金額、②支払日、③利息 を規定しておけば契約書の役割を果たしているといえるかというと、必ずしもこれで足りるわけではありません。売買契約における最悪シナリオを想定した場合、契約締結時において買主が自らの返済能力・信用力を偽っている可能性や、 契約締結後に財務状況が急速に悪化して返済が滞るおそれ、 買主が反社会的勢力との関係を隠している可能性、買主に開示した企業秘密を第三者に漏洩するおそれなどが考えられます。

このような最悪シナリオの例を挙げれば、様々なリスクが考えられることになります。

リスク項目例 契約書の条項例
財務リスク
  • 財務制限条項(借入比率制限、純資産維持条項等)
  • 財務諸表提出義務条項
  • 格付維持条項
  • 期限の利益損失条項 等
レピュテーショナルリスク
  • 守秘条項
  • 反社条項 等
不可抗力リスク
  • 不可抗力条項(一定の不可抗力の場合の免責等)

契約書の役割

したがって、契約書作成に際しては、強行規定に抵触しない範囲で、自社にとって最も有利な内容となるよう任意規定を修正するだけでなく、「当社にとって、最悪の場合、いかなるリスクが想定され、この契約書で本当にその最悪の事態に十分に対応できるのか」という観点からの検討が不可欠といえます。

この意味では、契約書は、企業にとって、自社のリスクを最小化するための楯であると同時に、自社を強行法規に反しない限り有利にするための武器であるということができます。

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