ポイント
- 契約締結には原則として書面は必要とされていない
- 契約には、契約自由の原則が妥当する
- 契約自由の原則を理解すれば、契約交渉のポイントがわかる
契約締結と書面の要否
改正前民法では明文の規定はありませんが、個人の生活関係はその自由な意思によって処理されるべきものであるとの考え方から、契約自由の原則を採用しています。
契約自由の原則は、さらに、(1)契約締結の自由、(2)相手方選択の自由、(3)契約内容決定の自由、(4)契約の方式の自由という4つの原則に分けられるところ、現行民法においては、これらの原則が明文化されています(民法521条、522条2項)。
契約自由の原則
【契約自由の原則】
(契約の締結及び内容の自由)
第521条
1 何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。
2 契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。
(契約の成立と方式)
第522条
1 (略)
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
(1)契約締結の自由とは、そもそも契約を締結するか否かに関する自由をいいます(民法521条1項)。
(2)相手方選択の自由とは、誰と契約を締結するかを当事者の自由に委ねる原則をいいます(民法521条1項)。
(3)契約内容決定の自由とは、強行法規又は公序良俗に反しない限り、契約の内容は当事者が自由に決定することができるという原則をいいます(民法521条2項)。
(4)契約の方式の自由とは、いかなる形式による契約とするかは当事者の自由であり、とくに法律の要求する方式を必要とするものではないという原則をいいます(民法522条2項)。
契約自由の原則における契約交渉のポイント
このように、契約の方式の自由の下、原則として当事者間で契約締結に向けた合意があれば、書面がなくても口頭の約束でも契約は成立します。
もちろん、FAXやメールでの約束であっても契約は成立します。
したがって、契約書を交わしていないからといって契約が成立していないということにはなりません。契約の成立を主張したい側からすれば、契約書を締結していないからというだけで、契約の成立を諦めるべきではなく、当事者間におけるメールやFAX等のやりとりで、契約の成立を裏付ける事実がないかどうかを検討する必要があります。
一方、契約の成立を否定したい側からしても、契約書がないというだけで直ちに契約が成立していないとは断言できないことに留意する必要があります。
結局は、当事者間の契約交渉の過程がどの程度証拠化されているかによって、契約の成否が判断されることに注意しましょう。
ただし、保証契約のように、法律上書面の作成が契約の効力要件とされている場合(民法446条2項)には、契約書が締結されていなければならないこともあります。
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