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【動画】民事裁判でやってはならない7箇条

弁護士法人 長瀬総合法律事務所のYouTubeチャンネル「リーガルメディア企業法務TV」において、弁護士が解説を行う新動画を公開いたしました。

チャプター

この動画の視聴にかかる時間:約16分

  • 00:00:はじめに
  • 00:52:① 裁判期日を無視する
  • 03:10:② 書面で主張しない
  • 04:45:③ 証拠を出さない
  • 06:45:④ 裁判所の指示に従わない
  • 09:20:⑤ 裁判所の和解案を無視する
  • 11:20:⑥ 裁判官の交替を求める
  • 12:48:⑦ 専門家のアドバイスを無視する
  • 15:01:民事裁判でやってはならない7箇条

動画の概要(このような内容を解説しています)

裁判実務に関連して「民事裁判でやってはいけない7箇条」を解説します。

民事裁判は、ルールに則って事実を認定し、法律を解釈、適用するという判断を行います。

これから裁判を行う方、または訴えられた方にとって、民事裁判ではご自身が思っているような結果を出したいと考えると思われますが、そのような結果を出すためには、民事裁判のルールを正確に理解をしておくことが必要です。

民事裁判のルールは非常に複雑です。今回は、この民事裁判にあたって、特にやってはいけない7つのポイントに絞ってお話をしていきたいと思います。

1:裁判期日を無視する

裁判期日を無視するのは、絶対にやってはならないことです。

裁判期日を無視すると、何が起こるでしょうか。
これは、被告(訴えられた側)のことを考えていただきたいと思います。

最初に訴状が届いたとき、裁判所からは「第1回目の裁判期日」が指定されています。「第1回目の裁判期日」を無視してしまうと、欠席判決を受けることになります。

欠席判決では、訴えを起こしてきた原告の言い分だけで判断されることになります。被告(訴えられた側)には、反論の機会が与えられません

これを見て「反論の機会が与えられなくても、事実かどうか裁判所が判断してくれる」と思うかもしれませんが、そうとは限りません。

例えば、原告(訴える側)から「100万円を貸したのに一切返してくれないので、100万円の返還を求めて裁判を提起した」という旨の訴状が届いたとします。

実際には、被告(訴えられた側)は「100万円はすでに返していた」という反論が可能だったとしても、裁判を欠席してその反論を行わなかった場合、原告(訴えた側)の訴状では「100万円を貸したのに返してくれない」ということになっているため、裁判所としては「被告が本当にお金を返したかどうかは分からない」という判断となり、被告は原告に対して100万円を支払うよう命じる判決が出てしまうことも考えられます。

したがって、特に1回目の裁判期日は、被告側はくれぐれも無視をしないようにしていただきたいと思います。

では、2回目以降の期日だったらどうなのかということですが、2回目以降の期日でも、無断で欠席することは「反論や追加主張の機会を放棄した」と考えられ、裁判が終わってしまうこともあり得ます。

裁判期日を無視をして有利になることはありません
訴状などが裁判所から届いたとしても、受取を拒否すれば済むわけではないということをご理解いただきたいと思います。

2:書面で主張しない

裁判でやってはいけないことの2つ目として、書面で主張をしないということが挙げられます。

書面では主張しないが、「口頭で裁判官に直接話をすれば理解してもらえるのではないか」と思うかもしれませんが、話せば分かるとは限りません。

裁判官は非常に忙しいため、複雑な経緯があることを口頭で説明されても、その場で全てを把握し、間違いなく記憶してもらうことは期待し難いといえます。そのため、裁判所からは「主張したいことがあれば、書面で整理し、提出して下さい」等と指示されることになります。

民事裁判では、書面が重視されることを忘れないようにしてください
こちらの主張したい事はしっかりと書面でまとめておくことが必要となります

裁判官にアピールする際に重視されるのは、口頭や身振り手振りでうまく伝える能力ではなく、いかに書面で分かりやすく伝えることができるかという点がポイントになっていきます。

3:証拠を出さない

「証拠を出さない」ということも、民事裁判ではやるべきではありません。

裁判は、事実に基づいて法律を適用し、物事を判断します。

では、裁判における「事実」とは何を根拠に判断されるのかというと、それは「証拠」です。
裁判所は「証拠」に基づいて「事実」があったのだろうと考え、心証をまとめていきます。

そのため、どれだけ多くの主張を述べたとしても、相手が提出した一つの証拠で敗訴することも考えられるのです。「論より証拠」といいますが、民事裁判でも当てはまるルールと考えていただいてもよいかもしれません。

弁護士の立場からしても、いかにこちらに有利な証拠を集めることができるか、証拠からどのような事実が認められるのかを考えることが、裁判を有利に進めていく上で重要なポイントとなります。

4:裁判所の指示に従わない

「裁判所の指示に従わない」ということも、民事裁判ではやってはいけません。

民事裁判を進めていくと、裁判所から「次回までにはこの点の主張を追加して欲しい」「このような証拠があるのであれば、用意してほしい」等の指示を受けることがあります。

日本の裁判では「当事者主義」が採用されているため、どのような主張・立証をするのかは、基本的に当事者の判断に委ねられていますが、お互いの主張に対し、証拠に基づいてどのような判断を下すかは、裁判所のみが行える専権事項です。

裁判所がこういった主張や証拠を用意してほしいと指示してきた場合には、裁判所が最終的に下す判断に影響する事項だと考えておいた方が良いかと思います。

裁判所が主張や証拠について追加指示を出しているにもかかわらず、これを無視した場合、裁判所の考えに沿っていないと判断されたり、裁判所が自分たちの主張に有利な考えを持ってくれない、といったリスクがあります。

「汝は事実を語れ 我は法を語らん」という格言がありますが、民事裁判では、当事者である原告や被告が事実を主張し、事実の根拠があれば証拠を提出する責任があるのに対し、裁判所は法律の解釈と適用を行うことが職責であるということになります。

裁判所が法律を解釈・適用するために必要な主張や証拠については、裁判所から追加主張・立証の指示がある場合、これに対応していくことが必要です。

しかし、すべての事案において、裁判所の指示をそのまま受け入れることが有利に働くかどうかは、考えなければいけない場面もあります。裁判所からの指示を受け入れるべきか検討することは、指示を無視することとは異なります。

5:裁判所の和解案を無視する

「裁判所の和解案を無視する」ということも、民事裁判ではやってはいけないことです。

裁判がある程度進んでいくと、裁判所から、これまでの主張や証拠を踏まえて和解案を提示してくることがあります。

裁判所の和解案は、それまでお互いに出してきた主張や証拠をベースに提示されます。裁判所の和解案を見ることで、現時点までの主張や証拠に基づいた裁判所の暫定的な心証を、ある程度推測することが可能です。

裁判所の和解案は必ず受け入れなければならないものではありませんが、裁判所の和解案を無視した場合、(暫定的とはいえ)現時点での裁判所の中間的な心証を拒否したことになりますので、その後の判決で不利な判断をされる可能性があることはご留意下さい。

6:裁判官の交替を求める

「裁判官の交替を求める」ことも、民事裁判では避けるべきことです。

裁判官の交替を求めることは、民事裁判の手続上、除斥や忌避という制度があります。

「裁判官が自分達に不利な心証を抱いている」「自分達が希望するような訴訟の指揮をしてくれない」等の理由で裁判官の交替を求めたとしても、原則として認められません

理由なく裁判官の交替を求めれば、裁判官の心証を悪化させるリスクが懸念されます

7:専門家のアドバイスを無視する

「専門家のアドバイスを無視する」ことも、民事裁判ではやってはいけません。

裁判をこれから行う方や、裁判を起こされた方にまず行っていただきたいのは、弁護士などの専門家に相談をするということです。専門家に相談をしたあと、その専門家に依頼をするかどうかの判断は、別で構いません。

今後の裁判がどのような流れで進んでいくのか、どのような証拠を集める必要があるのか等については、専門家によるアドバイスを求めた方が良いといえます。

また、一人の弁護士のみではなく、複数の専門家にアドバイスを求めることも考えていただきたいと思います。

複数の専門家に意見を聞くことにより、多角的・客観的な視点から、裁判の見通しや、裁判のメリット・デメリットを冷静に考えることができるようになります

民事裁判は決して簡単な手続ではありません。
事案によっては半年や1年では解決できず、場合によっては数年を要することがあります。

ご自身が納得できる手続を選択するためにも、専門家のアドバイスを参考にしていただきたいと思います。

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