【質問】

現在,当社の試用期間中の者のうち,適性に欠けると思われる者が数名います。
試用期間中ですから特に問題はないと思うのですが,これらの者の本採用を拒否することは可能でしょうか。

【回答】

試用期間であっても,解約権留保付労働契約が成立していますから,本採用を拒否することは解雇にあたります。
したがって,解雇が適切ということができるだけの事情が必要になります。

【解説】

1 本採用拒否の法的性質

試用期間は,解約権留保付労働契約とされます。
労働契約を解約する場合,解雇権濫用法理が適用されます(労働契約法16条)。
したがって,正社員として採用しない場合(本採用を拒否する場合),解雇する合理的な理由が必要になります。

2 留保解約権の限界

この点,試用期間中のことですから,解約権を留保している以上,普通の解雇の場合よりも解雇(本採用拒否)は広く認められると言えます。
もっとも,全く無制限に解雇が認められるわけではありません。
試用期間は社員の立場を不安定にするものですから,解約権の行使も自由にできるわけではありません。
試用期間中の解雇が許されるかどうかは,個別の事案に応じて判断するとともに,試用期間の目的に照らして判断されることになります。
したがって,本採用拒否の対象となった新人社員が,総合職として採用されたのか,専門職として採用されたのかによっても判断は異なってきます。また,採用の時点で気付くべきだった理由での解雇や,長期間が経過した後の解雇も認められづらいと言えます。

3 新卒採用の場合

仮に,解雇(本採用拒否)の対象者が,新卒採用者の場合,正社員としての最低限の適性もないということができるだけの事情が必要です。

4 専門職採用の場合

一方,専門職採用の場合,専門性に対する期待をしたにもかかわらず,専門性にふさわしい能力を欠くようなときには,解雇が認められることになります。