相談事例
働き方改革の一環として、企業は従業員に年次有給休暇を取得させる義務があることはわかりました。
企業としては、どのような方法で従業員に対して年次有給休暇を付与させることができるのでしょうか。
解説
年次有給休暇を付与する際のルール
年次有給休暇の付与には、大きく以下の3つのルールがあります。
遵守すべき事項 | 内容 |
---|---|
①年次有給休暇を与えるタイミング |
(※)時期変更権 |
②年次有給休暇の繰越し | 年次有給休暇の請求権の時効は2年であり、前年度に取得されなかった年次有給休暇は翌年度に与える必要がある |
③不利益取扱いの禁止 |
|
年休の種類
次に、年休の種類は、以下の4つに分類できます。
種類 | 内容 | 労使協定の締結 |
---|---|---|
計画年休 |
|
必要 |
半日単位年休 |
|
– |
時間単位年休 |
|
必要 |
特別休暇 |
|
– |
年次有給休暇を付与する方法
働き方改革によって、企業は従業員に対し年5日の年次有給休暇の取得義務を負うことから、年次有給休暇を付与する方法を理解し、少なくとも5日の年次有給休暇の取得をさせる必要があります。
年次有給休暇を管理しやすくする方法
想定される課題
人ごとに入社日が異なる事業場などでは、基準日が人ごとに異なり、誰がいつまでに年次有給休暇を5日取得しなければならないのかという管理が必要になります。
管理方法
基準日を年始や年度始めに統一する
人員規模の大きな事業場、新卒一括採用をしている事業場などは、基準日を1つにまとめることが有効です。
例えば、年始(1/1)や年度始め(4/1)に基準日を統一することが考えられます。
基準日を月初などに統一する
中途採用を行っている事業場、比較的小規模な事業場などは、入社が月の途中であっても、基準日を月初などに統一することが考えられます。
例えば、同じ月に採用した方の基準日を月初に統一することにより、統一的な管理が可能になります。
年5日の確実な取得のための方法
基準日に年次有給休暇取得計画表を作成する
労働者が職場の上司や同僚に気兼ねなく年次有給休暇を取得するため、職場で年次有給休暇取得計画表を作成し、労働者ごとの休暇取得予定を明示します。
年次有給休暇をより多く取得するためには、計画的に取得することが重要です。年度別や四半期別、月別などの期間で個人ごとの年次有給休暇取得計画表を作成し、年次有給休暇の取得予定を明らかにすることにより、職場内において取得時季の調整がしやすくなります。
使用者からの時季指定を行う
2019年4月からは使用者が年5日の年次有給休暇を取得時季を指定して与える必要があります。
使用者からの時季指定は、基準日から1年以内の期間内に、適時に行うことになります。
年5日の年次有給休暇を確実に取得するにあたっては、以下の対応をすることで、労働者からの年次有給休暇の請求を妨げず、かつ効率的な管理を行うことができます。
① 基準日から一定期間が経過したタイミング(半年後など)で年次有給休暇の請求・取得日数が5日未満となっている労働者に対して、使用者から時季指定をする ② 過去の実績を見て年次有給休暇の取得日数が著しく少ない労働者に対しては、労働者が年間を通じて計画的に年次有給休暇を取得できるよう基準日に使用者から時季指定をする |
年次有給休暇の計画的付与制度(計画年休)を活用する
計画年休は、前もって計画的に休暇取得日を割り振るため、労働者はためらいを感じることなく年次有給休暇を取得することができます。
計画的付与制度で取得した年次有給休暇も5日取得義務化の5日としてカウントされます。
計画年休の導入には、①就業規則による規定と②労使協定の締結が必要です。
ご相談のケースについて
年次有給休暇を付与する方法は、年次有給休暇取得計画表を作成する、使用者からの時季指定を行う、年次有給休暇の計画的付与制度(計画年休)を活用するというものが挙げられます。
ご相談企業の事業規模や新卒一括採用か、中途入社が中心か等の状況をみながら、上記年次有給休暇の付与方法を使い分けることが適当といえます。
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