解説動画
こちらのコラムは、当事務所のYouTubeチャンネル「リーガルメディア企業法務TV」で解説動画が公開されております。
- 00:36:本動画でお伝えしたいこと
- 00:53:リーガルメディアのご案内
- 01:08:相談事例
- 01:57:管理職の義務
- 03:58:エクイタブル生命保険事件 人事権による降格が問題となった裁判例
- 04:51:スリムビューティーハウス事件 人事権による降格が問題となった裁判例
- 06:07:懲戒処分としての降格について
- 07:08:相談のケースについて
- 07:54:まとめ
- 08:15:弁護士法人長瀬総合法律事務所のサポート内容
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相談事例
当社は設立10年未満の会社ですが、毎年右肩上がりの成長を遂げてきました。競業他社との競争に勝ち抜くためには、とくに売上を伸ばすことが大切だと考え、営業活動を重視してきています。
積極的な営業攻勢が功を奏して成長を続けてきましたが、最近になって営業成績が低迷するようになってきました。調べてみたところ、営業部長の管理能力が悪く、部下の実力を十分に発揮させられていないことが大きな要因の一つのようです。
このような部下の管理能力が不足している部長に対して処分を検討していますが、人事権として特に問題はないでしょうか。
解説
管理職の義務
管理職とは、労働現場において部下などを指揮して組織の運営を担当する者をいいますが、法律上定義されているものではなく、その範囲は会社の規模や種類等によって異なります(労基法41条2号「監督若しくは管理の地位にある者」ご参照)。
もっとも、管理職にある者は、部下を指揮監督し、組織の運営を担当する権限を有するものである以上、「業務の執行—勤務成績不良社員への対応」で解説したとおり、かかる権限を適切に行使して会社に対して誠実に労務を提供する義務(誠実労働義務)を負います。
したがって、管理職が部下を指揮監督する能力に欠ける場合、誠実労働義務の不完全履行として、人事権による降格処分等が問題となります。
人事権による降格
降格処分には、①人事権の行使による降格と、②懲戒処分としての降格の2種類に大別することができますが、管理職にある者が部下を適切に指揮監督する能力に欠け、誠実労働義務に違反している場合、就業規則に根拠規定がなくても①人事権の行使として裁量的判断により行うことができる、とされています。
裁判例上、能力が劣るとの評価により営業所長を営業社員に降格した事案において、「役職者の任免は、使用者の人事権に属する事項であって使用者の自由裁量にゆだねられており裁量の範囲を逸脱することがない限りその効力が否定されることはないと解するのが相当である。」と判示しています(エクイタブル生命保険事件(東京地裁平成2年4月27日労判565号))。
なお、降格に伴い、降格後の格付けに対応した賃金の減額も行われるのが一般的ですが、部長職にあった社員を降格・賃金減額した裁判例において、降格が有効であるとしても、賃金減額については減額の合理性、客観性が基礎付けられていないことから無効とされた例があるので注意が必要です(スリムビューティーハウス事件(東京地裁平成20年2月29日労判968号))。
懲戒処分としての降格について
管理職の部下を指揮監督する能力が著しく低く、職務懈怠等の就業規則上の懲戒事由に該当する場合には、人事権の行使としての降格処分に留まらず、懲戒処分としての降格を検討することになります。
もっとも、「勤務成績不良社員への対応」で解説したとおり、懲戒処分を行うにあたっては相当性が認められる必要があり、能力に欠けることを理由に懲戒解雇が認められるケースは、裁判例上、非常に限定的な場合に限られていることにご注意ください(津軽三年味噌販売事件(東京地裁昭和62年3月30日労判495号))。
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ご相談のケースについて
問題となっている営業部長の管理職としての管理能力について、人事考課制度等を活用して適切に評価することが大切です。その結果、管理能力に劣ると判断した場合には、まず人事権の行使による降格処分を検討することが考えられます。
また、管理能力が著しく劣り、就業規則等の懲戒事由に該当する場合には、懲戒処分としての降格を検討することになります。もっとも、懲戒処分としての解雇まで認められるケースは裁判例上きわめて限定的ですのでご注意ください。
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