相談事例
当社Xは、Y社の議決権の45%を所有しているとともに、Y社取締役会についてその過半数の取締役を送り込んでいます。
会社法上、「子会社」には議決権の50%超を所有している会社しか入らず、Y社は当社にとっての「子会社」に該当しないのでしょうか。
回答
ご相談のケースでは、X社はY社の議決権の40%以上を取得しており、かつ、Y社取締役会についてその過半数の取締役を派遣していますので、X社はY社の「経営を支配している法人」といえ、Y社はX社の「子会社」に該当します。
解説
会社法上の「子会社」の範囲
会社法上、「子会社」とは、①会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社、及び②その他の当該会社(又は会社以外の者)がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものの2種類をいいます(会社法2条3号、2条3号の2)。
このうち、①にいう「子会社」とは、会社法の文言どおり、親会社から、その総株主の議決権の過半数(=50%超)を取得されている株式会社をいいます。
これに対して、②にいう「子会社」の意義・範囲については、会社法施行規則(法務省令)で規定されており、親会社等(その子会社等を含む)から、「財務及び事業の方針の決定を支配」されている株式会社をいいます(会社法施行規則3条1項、3条の1)。
「財務及び事業の方針の決定を支配」している場合(会社法施行規則3条3項各号)
前述のとおり、会社法に明記された①「子会社」の範囲については形式的に明らかといえますが、会社法施行規則に規定された②「子会社」の範囲については、どのような場合に「財務及び事業の方針の決定を支配」している場合に該当するかによって決まることになります。
会社法施行規則上、いかなる場合に「財務及び事業の方針の決定を支配」しているかに該当するかは、親会社等が保有する議決権数の割合に応じて規定されており、その概要は以下のとおりです(会社法施行規則3条3項各号、3条の2)。
1号 親会社等の議決権数の割合が50%超
2号 親会社等の議決権数の割合が40%以上+以下のイ〜ホいずれか
いずれか イ 自己所有等議決権数*の割合が50%超
ロ 派遣されている取締役会等の構成員数の割合が50%超
ハ 重要な財務及び事業の方針の決定を支配する契約等の存在
ニ 資金調達の総額に対する融資額の割合が50%超
ホ その他財務及び事業の方針の決定を支配していることが推測される事実の存在3号 親会社等の議決権数の割合が40%未満+イ+ロ〜ホいずれか
イ 自己所有等議決権数*の割合が50%超
いずれか ロ 派遣されている取締役会等の構成員数の割合が50%超
ハ 重要な財務及び事業の方針の決定を支配する契約等の存在
ニ 資金調達の総額に対する融資額の割合が50%超
ホ その他財務及び事業の方針の決定を支配していることが推測される事実の存在
以下の①+②+③の合計数をいう。
① 自己の計算で所有
② 取引関係等により自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者が所有
③ 自己の意思と同一の内容の議決権行使に同意している者の所有
ご相談のケースについて
前述のとおり、「子会社」とは、①会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社、及び②その他の当該会社(又は会社以外の者)がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものの2種類に分類することができます。
このうち、②については、親会社等の議決権数が40%以上で、かつ、他の会社の取締役会等について、自社の役員等を過半数派遣している場合は、当該他の会社は「子会社」に該当するものとされています。
ご相談のケースでは、X社はY社の議決権数の40%以上を取得しており、かつ、Y社取締役会についてその過半数の取締役を派遣していますので、会社法施行規則3条3項2号ロに基づき、X社はY社の「経営を支配している法人」といえ、Y社はX社の「子会社」に該当します。
参考文献
江頭憲治郎「株式会社法第6版」(株式会社有斐閣)
メールマガジン登録のご案内
「弁護士法人 長瀬総合法律事務所」では、定期的にメールマガジンを配信しております。セミナーの最新情報、所属弁護士が執筆したコラムのご紹介、「実務に使用できる書式」の無料ダウンロードが可能です。ぜひご登録下さい。
顧問サービスのご案内
私たち「弁護士法人 長瀬総合事務所」は、企業法務や人事労務・労務管理等でお悩みの企業様を多数サポートしてきた実績とノウハウがあります。
私たちは、ただ紛争を解決するだけではなく、紛争を予防するとともに、より企業が発展するための制度設計を構築するサポートをすることこそが弁護士と法律事務所の役割であると自負しています。
私たちは、より多くの企業のお役に立つことができるよう、複数の費用体系にわけた顧問契約サービスを提供しています。
リーガルメディア企業法務TVのご案内
弁護士法人 長瀬総合法律事務所のYouTubeチャンネル「リーガルメディア企業法務TV」では、様々な分野の問題を弁護士が解説する動画を配信中です。興味を持たれた方は、ぜひご覧ください。