相談事例
このたび、新しく株式会社形態でベンチャー企業を立ち上げようと考えています。
株式についてはすべて譲渡制限を付ける予定ですが、取締役会や監査役会の設置は必要でしょうか。
当社のような、いわゆる非公開かつ中小会社について、会社法上とりうる機関設計について教えてください。
回答
会社法上、非公開中小会社については、株主総会及び取締役の設置は義務づけられていますが、取締役会等、その他の機関については設置を義務づけられておらず、柔軟な機関設計が可能です。
解説
非公開中小会社とは
まず、「公開会社」とは、発行する株式のどれか一部についてであっても定款で譲渡制限を定めていない会社をいい(会社法2条5号)、「非公開会社」とは、発行する株式全てについて譲渡制限のある会社をいいます。
また、中小会社とは、会社法上明確な定義はありませんが、会社法上の「大会社」以外の会社をいうところ、「大会社」とは、最終事業年度に係る貸借対照表上に計上された資本金の額が5億円以上、又は負債の額が200億円以上である会社をいう(会社法2条6号)ため、資本金5億円未満かつ負債200億円未満の会社が中小会社に該当します(なお、「中小企業者」の定義については、中小企業基本法2条をご参照ください)。
以上をまとめると、非公開中小会社とは、発行する株式すべてに譲渡制限のある、資本金5億円未満かつ負債200円未満の会社、ということができます。
非公開中小会社における機関設計
非公開中小会社については、株主総会及び取締役の設置のみ義務づけられています(会社法326条1項)が、取締役会の設置も原則として任意(会社法326条2項)とされており、柔軟な機関設計が可能とされています。
会社法は、機構が簡素な非公開中小会社を株式会社の基本形として規定しており、機関設計等に関して幅広い定款自治を許容する一方、「大会社」、「公開会社」についてその特則を定めるというやり方を採用しています。
非公開中小会社において採用できる機関設計は以下の10パターンに整理することができます。
なお、取締役会を設置することにより、経営の機動性と適正性を高めることができる一方、株主総会の権限が弱まり、会社の所有者である株主の意思が直接会社に反映されにくくなるというデメリットがあります。
また、監査役・監査役会を設置することにより、業務執行機関から独立した専門家によって経営陣を監査することが可能になる一方、人員確保の問題及びそのコスト負担が生じるというデメリットがあります。
さらに、会計監査人を設置することにより、計算書類等の信頼性が高まり融資等の資金調達を行いやすくなるとともに、会計監査人設置会社となり一定の要件を満たした場合には剰余金の配当等について取締役会決議のみで行うことが可能となるとったメリットがある一方、監査役・監査等委員会・指名委員会等の設置が義務づけられることに伴う人員確保の問題及びそのコスト負担が生じるといったデメリットがあります。
参考文献
江頭憲治郎「株式会社法第6版」(株式会社有斐閣)
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