相談事例

同一労働同一賃金における賞与の見直しをする際の注意点を教えてください。

解説

ガイドラインの考え方

2 賞与

 賞与であって、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給するものについて、通常の労働者と同一の貢献である短時間・有期雇用労働者には、貢献に応じた部分につき、通常の労働者と同一の賞与を支給しなければならない。また、貢献に一定の相違がある場合においては、その相違に応じた賞与を支給しなければならない。

 

(問題とならない例)

  • 賞与について、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給しているA社において、通常の労働者であるXと同一の会社の業績等への貢献が ある有期雇用労働者であるYに対し、Xと同一の賞与を支給している。
  • A社においては、通常の労働者であるXは、生産効率及び品質の目標値に対する責任を負っており、当該目標値を達成していない場合、待遇上の不利益を課されている。その一方で、通常の労働者であるYや、有期雇用労働者であるZは、生産効率及び品質の目標値に対する責任を負っておらず、当該目標値を達成していない場合にも、待遇上の不利益を課されていない。A社は、Xに対しては、賞与を支給しているが、YやZに対しては、待遇上の不利益を課していないこととの見合いの範囲内で、賞与を支給していない。

(問題となる例)

  • 賞与について、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給しているA社において、通常の労働者であるXと同一の会社の業績等への貢献が ある有期雇用労働者であるYに対し、Xと同一の賞与を支給していない。
  • 賞与について、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給しているA社においては、通常の労働者には職務の内容や会社の業績等への貢献 等にかかわらず全員に何らかの賞与を支給しているが、短時間・有期雇 用労働者には支給していない。

(「厚生労働省|短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」8、9頁より抜粋)

実務上の対応

賞与は、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給するという性質や、月額賃金を補うものとしての性質、長期雇用への期待等、様々な性質があり得ます。また、賞与の算定ルールは、各企業によって幅があり得ます。

賞与の性質や算定ルールによっては、正社員と短期・有期社員の間の待遇差が違法と判断される可能性もあります。

これまでの裁判例をみる限り、賞与の適法性について、裁判上は明確な基準が確立しているとは言い難い状況にあるといえます。

大阪医科薬科大学事件(第2審)(大坂高判平成30年2月15日)では、正社員と短期・有期社員の間の待遇差が違法であると判断され、支給基準の60%を下回る支給しかしない場合には不合理な相違であるとして差額分の損害賠償請求が認容されています。

仮に裁判で有期短期契約社員に対して賞与の不支給が違法であると判断された場合、他の有期短期契約社員にも波及し、企業の人事政策に与える影響は甚大といえます。

正社員に対しては賞与を設定する一方、有期短期契約社員に対しては賞与を支給しないという企業は少なくないかと思いますが、裁判例のような解釈が一般化した場合、このような人事設計をすることは大きなリスクとなります。

そこで、賞与制度を会社の業績等への労働者の貢献に対する報償として位置付ける場合には、短期・有期社員についても人事評価の対象とするなどして貢献度を定量化するプロセスを導入するとともに、貢献度から大きく逸脱しないように、短期・有期社員に対しても一定の賞与を支給することも検討するべきでしょう。

ご相談のケースについて

賞与の算定ルールを会社側で明確に決めておかなければ、賞与の性質の解釈次第によっては裁判で敗訴するおそれがあります。

賞与が同一労働同一賃金に違反すると判断された場合の影響の大きさにもかんがみ、人事評価制度は再度検討する必要があります。

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