はじめに

多大な労力をかけて作成した訴状。それを添付書類や収入印紙、郵便切手と共に裁判所に提出した瞬間、ほっと一息つきたいところですが、実はその裏側で、訴訟手続きは粛々と動き出しています。提出された訴状は、どのように受け付けられ、どのように管理されていくのでしょうか。

この段階で付与される「事件番号」は、今後の裁判手続きにおいて、あなたの事件を特定するための重要な記録となります。

この記事では、訴状を提出した直後から、裁判所内部でどのような事務手続きが行われるのか、そしてあなたの事件に付けられる「事件番号」が持つ意味と読み方について、詳しく解説していきます。裁判の「舞台裏」を知ることで、今後の手続きの流れをより理解することができます。

Q&A:受付と事件番号に関するよくある疑問

Q1. 裁判所から「事件番号」の連絡がありました。これで訴えが正式に受理されたと考えてよいのでしょうか?

いいえ、まだ正式に受理されたわけではありません。事件番号の付与は、あくまで裁判所が事件を管理するための「受付番号」のようなものです。この後、裁判官や書記官が訴状の内容をチェックする「訴状審査」という手続きが待っています。そこで形式や内容に不備がないと判断されて初めて、訴状は正式に「受理」され、被告への送達手続きに進みます。事件番号が付いた段階は、まだスタートラインに立ったばかりとご理解ください。

Q2. 自分の事件の進行状況などを裁判所に問い合わせたいとき、事件番号はどのように使えばよいですか?

事件番号は、あなたの事件を特定する記録です。裁判所に電話で問い合わせる際は、最初に「事件番号、令和〇年(ワ)第〇〇号の件で」と伝えることで、担当の書記官にスムーズに話が繋がります。事件番号を伝えないと、膨大な数の事件の中からあなたの事件を探し出すのに時間がかかり、的確な回答が得られない可能性があります。弁護士に依頼している場合は、弁護士がこの番号を使って裁判所とやり取りをします。

Q3. 訴状は裁判所の窓口に直接持っていかないとダメですか?郵送でも提出できますか?

郵送による提出も可能です。その場合、訴状や添付書類一式を、管轄の裁判所の「民事訟廷(みんじしょうてい)担当」または「民事受付係」宛に、書留郵便など記録が残る方法で送付するのが一般的です。ただし、書類に不備があった場合のやり取りに時間がかかる可能性があります。

解説:訴状提出から事件番号付与までのプロセス

1. 裁判所窓口での受付

訴状が裁判所の受付窓口(民事訟廷など)に提出されると、まず書記官が形式的なチェックを行います。

  • 提出物
    訴状の正本(裁判所用)・副本(被告用)、添付書類、収入印紙、予納郵券が揃っているか。
  • 形式
    当事者の表示は適切か、代理人がいる場合は委任状が添付されているか。
  • 印紙額
    訴額に応じた収入印紙が正しく貼付されているか。
  • 郵券
    その裁判所の定めた金額・内訳の郵便切手が予納されているか。

ここで明らかな不備があれば、その場で修正を求められることもあります。この形式的なチェックをクリアすると、訴状は「受付」され、次のステップに進みます。

2. 「事件番号」が付与される!その意味と読み方

受付が完了すると、その事件固有の「事件番号」が採番されます。これは、裁判所が事件を管理・識別するための最も基本的な情報です。

事件番号の構成要素「年度・符号・番号」

事件番号は、通常、「令和〇年(〇)第〇〇号」という形式で表されます。

  • 年度
    「令和〇年」の部分。事件が受け付けられた西暦年(元号表記)を示します。
  • 符号
    「(〇)」の部分。事件の種類を表すカタカナの符号です。
  • 番号
    「第〇〇号」の部分。その年に、その符号の事件として受け付けられた通し番号です。

例えば、「令和7年(ワ)第1234号」は、「令和7年に受け付けられた、通常の民事訴訟事件(ワ)の1234番目の事件」ということを意味します。

事件符号で分かる事件の種類

括弧内の符号は、事件の性質を示しており、実務上よく目にするものには以下のようなものがあります。

符号 読み方 事件の種類
(ワ) 地方裁判所の第一審における通常の訴訟事件(訴額140万円超)
(ハ) 簡易裁判所の第一審における通常の訴訟事件(訴額140万円以下)
(レ) 地方裁判所が扱う控訴事件(簡易裁判所の判決に対する不服申立て)
(ネ) 高等裁判所が扱う控訴事件(地方裁判所の判決に対する不服申立て)
(フ) 破産事件
(ヨ) 保全命令事件

この符号を見るだけで、その事件がどのような種類のものかを大まかに把握することができます。

3. 受付後の裁判所内部での動き

事件番号が付与されると、訴状や添付書類は「事件記録」として一冊のファイルに綴じられます。そして、その事件を担当する裁判官または裁判部(複数の裁判官で構成)が決定されます。これを「配点(はいてん)」や「配部(はいぶ)」と呼びます。

どの裁判官が担当するかは、裁判所内部のルールに基づき、公平に割り振られます。担当が決まると、事件記録はその裁判官(または裁判部の主任裁判官)の元に渡り、いよいよ中身の審査が始まります。

4. 受付から「訴状審査」へ

事件番号が付与され、担当裁判官が決まった段階は、いわば料理の材料が厨房に届いた状態です。これからシェフ(裁判官)が、その材料(訴状)に問題がないか、調理(審理)に進める状態かをチェックします。このプロセスが、次のステップである「訴状審査」です。訴状審査で問題がないと判断されて初めて、訴状は被告へと送達されることになります。

弁護士に相談するメリット

訴状の提出と受付は、手続きの入り口に過ぎませんが、弁護士に依頼することで、この段階から多くのメリットが生まれます。

  1. 確実かつ迅速な提出
    弁護士は、必要な書類や印紙、郵券などを準備・整理した上で訴状を提出します。
  2. 裁判所とのスムーズな連携
    事件番号が付与された後の裁判所とのやり取り(期日の調整や問い合わせなど)は、全て弁護士が代理人として行います。依頼者は、煩雑な事務連絡に煩わされることなく、安心して任せることができます。
  3. プロセスの全体像を把握
    弁護士は、受付後の流れ、訴状審査のポイント、そしてその後の審理の見通しまで、一連のプロセスを熟知しています。依頼者は、弁護士から適時適切な報告を受けることで、裁判の「今」と「これから」を正確に把握することができます。

まとめ

訴状を裁判所に提出すると、まず形式的なチェックを経て「受付」が行われ、その事件固有の「事件番号」が付与されます。この事件番号は、あなたの訴訟が公的な手続きのレールに乗ったことの証であり、今後の裁判の全期間を通じて使われる重要な記録となります。

しかし、これはあくまでスタートの合図に過ぎません。この後に行われる、裁判官による「訴状審査」という関門をクリアして、初めて本格的な審理が始まります。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、訴状の作成・提出から、その後の裁判所とのやり取りまで、責任をもって代行いたします。


リーガルメディアTV|長瀬総合YouTubeチャンネル

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、様々な分野の法的問題を解説したYouTubeチャンネルを公開しています。ご興味をお持ちの方は、ぜひこちらのチャンネルのご視聴・ご登録もご検討ください。 

【チャンネル登録はこちら】


NS News Letter|長瀬総合のメールマガジン

当事務所では最新セミナーのご案内や事務所のお知らせ等を配信するメールマガジンを運営しています。ご興味がある方は、ご登録をご検討ください。

【メールマガジン登録はこちら】


ご相談はお気軽に|全国対応

長瀬総合法律事務所は、お住まいの地域を気にせず、オンラインでのご相談が可能です。あらゆる問題を解決してきた少数精鋭の所属弁護士とスタッフが、誠意を持って対応いたします。

【お問い合わせはこちら】


トラブルを未然に防ぐ|長瀬総合の顧問サービス

企業が法的紛争に直面する前に予防策を講じ、企業の発展を支援するためのサポートを提供します。
複数の費用体系をご用意。貴社のニーズに合わせた最適なサポートを提供いたします。

【顧問サービスはこちら】