はじめに
企業がリスケや民事再生などを活用して一度は事業再建を果たしても、その後の経営改善が十分でなければ二次破綻(再度の倒産)に陥るリスクが高まります。特に、リスケによる猶予期間が終わったときにキャッシュフローが回らず、再び支払い不能に陥るケースは少なくありません。そこで大切なのは、再建後の継続的モニタリングと経営改善策の確実な実行です。
本記事では、二次破綻を回避するために留意すべきリスク管理のポイントや、経営改善策の策定・モニタリング体制づくりを解説します。一度再生を果たした企業が、どのように安定した経営へ軌道修正するか、具体的な視点を学びましょう。
Q&A
Q1:二次破綻とはどんな状況ですか?
二次破綻とは、企業が一度目の再建(私的整理・リスケ・民事再生など)で債務を軽減したり返済を延長したりしたにもかかわらず、その後事業改善が不十分で、最終的に再び倒産してしまう事態を指します。追加で多額の負債が発生したり、リスケ終了後に返済が再開されると資金が回らず、そのまま破産や再生手続の廃止に至るケースが典型です。
Q2:二次破綻はなぜ起こりやすいのでしょうか?
一度の再建で返済を先送りできたとしても、根本的な経営問題(商品力不足、コスト構造の高止まり、役員の意識欠如など)が解決されていなければ、利息支払いだけで体力が消耗し、猶予期間終了後に一気に資金ショートしやすいからです。また、当初計画が楽観的すぎて実行段階で達成困難となり、予想外の外部環境変化(市況悪化、取引先倒産など)に対応できずに再度行き詰まることも大きな要因です。
Q3:二次破綻を防ぐためには何が必要でしょうか?
要点は以下の通りです。
- 継続的モニタリング
経営改善計画が達成されているか、KPIを定期的にチェックし、問題があればすぐ修正措置を取る。 - 経営者の意識改革
リスケで猶予を得ただけではなく、本格的に事業モデルや組織を再構築し、同じ失敗を繰り返さない。 - 外部専門家の活用
弁護士や会計士、コンサルタントが定期診断し、早期に手を打つ。金融機関との情報共有も継続的に行う。 - 追加出資・スポンサー
必要に応じて企業連携やM&Aで資本注入を受け、キャッシュフローを安定化する。
Q4:具体的な経営改善策として、どのような手段が検討されますか?
収益力向上とコスト削減に分けて以下のような手段があります。
- 収益力向上
新製品開発、販路拡大、価格戦略見直し、デジタルマーケティング強化など。 - コスト削減
不要な部門閉鎖、遊休資産売却、人件費の適正化(希望退職や役員報酬カット)、物流コスト・間接費の削減など。 - 組織改革
経営陣刷新や社外取締役の導入、権限規程や稟議フローの見直し。 - 資本政策
増資や社債発行、スポンサー誘致などで財務基盤を強化する。
解説
リスケ後の継続モニタリング
- 金融機関への報告義務
- リスケ合意書に「月次試算表や経営改善進捗を定期報告」といった条項が含まれることが多い。これを怠ると信頼が崩れて追加猶予が得られなくなるリスク。
- 報告内容は売上・利益・キャッシュフローだけでなく、新規取引獲得状況やコスト削減実績など細かいKPIに及ぶ場合がある。
- 計画と実績の差異分析
- 月次ベースで計画と実績の差を把握。目標達成できなければ原因を分析し、早期に修正案を検討。
- ここで対策が遅れると二次破綻に繋がりやすい。外部専門家やコンサルと定期的にモニタリング会議を行う事例も多い。
- 経営者の意欲・コミットメント
- リスケで返済が緩和されたからといって気を抜くと、経営改革が進まず時期がきたら再び返済増大で苦境に陥る。
- 役員自身が厳しい計画を自ら推進し、社員に浸透させるリーダーシップが不可欠。
民事再生後の計画履行
- 再生計画に基づく弁済スケジュール
- 民事再生手続きで可決・認可された計画に従い、一定の弁済率・分割期間を守って支払いを継続する。
- 計画の認可後も裁判所や監督委員がモニタリングし、計画不履行が続けば手続き廃止→破産リスクへ。
- 抜本改革の実行
- 再生計画には「不採算事業の撤退」「スポンサー支援」「新役員体制」などを盛り込むことがある。これらを実行に移すことで収益性を高め、継続企業へ復帰を目指す。
- 計画実行がずさんだと、二次破綻(計画履行不能)となり再生手続きが失敗に終わる。
- 追加出資やM&Aの模索
- 再生中にスポンサーと合弁会社を立ち上げる、あるいはM&Aによる資本注入を受けるなど、追加施策を検討している企業もある。再生計画が実行中でも修正や追加が認められる場合がある。
具体的な経営改善策
- 収益面
- 新規顧客獲得
営業強化やマーケティング投資、ネット販売拡大、代理店契約強化など。 - 商品開発・ブランディング
市場ニーズに合わない製品を見直し、新製品開発や既存製品の改良で差別化。 - アライアンス
他社との業務提携やOEM生産、ライセンス契約などで収益を補強。
- 新規顧客獲得
- コスト面
- 在庫管理
在庫回転率を高め、不要在庫を処分。仕入先との交渉でコストダウンを実施。 - 給与・人件費調整
役員報酬カット、早期退職募集、非正規雇用の活用、組織スリム化など。 - 設備投資・固定費抑制
遊休不動産や機械を売却しリースなど軽量化する。
- 在庫管理
- 内部統制・コンプライアンス
- ガバナンス強化
社外取締役導入、権限規程整備で意思決定を迅速かつ透明に。 - リスクマネジメント
情報漏洩や不正会計など、危機管理体制を見直し信頼回復。
- ガバナンス強化
成功事例と失敗事例
- 成功例:スポンサーとの連携で業績V字回復
製造業が民事再生後、スポンサー企業の技術指導を受け新製品を開発。販売チャネルもスポンサー企業を通じ拡大し、売上成長。再生計画通りの返済を完遂し再建が安定化。 - 失敗例:リスケ終了後に二次破綻
小売業がリスケで元本据置に成功したが、改善策が甘く売上伸びず。利息だけ支払い続けるうちにキャッシュが枯渇し、リスケ終了時に再び返済が増えて資金ショート→破産申立。
弁護士に相談するメリット
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、二次破綻防止や経営改善に関して、以下のサポートを行っています。
- 再建計画のモニタリング
- 既にリスケや法的再建を実行中の企業に対し、月次ベースで収支・キャッシュフローをチェックし、問題があれば早期に追加対策を提案。
- 金融機関との定期ミーティングに同行し、企業の計画実行を客観的に評価し、信頼を維持。
- 追加施策・合意書改定
- 当初の計画が実現困難になった場合、合意書修正や再生計画変更などを検討し、債権者に対する説得材料を準備。
- リストラや不動産売却、スポンサー誘致など追加策を提案し、実行に移すまでの法務面を一括支援。
- 倒産法への移行検討
- もし私的整理やリスケで回らないなら、早期に民事再生や会社更生を視野に入れた手続き準備を行い、二次破綻を避けつつ事業継続の可能性を探る。
- 企業の事情に合わせ、必要な書類作成やスポンサー探しをサポート。
- 経営者リスク管理(責任追及への備え)
- 二次破綻時に経営陣が背任や不法行為で責任を問われないよう、善管注意義務を果たしている証拠(議事録、計画書)を整備。
- 役員向けD&O保険検討など、経営陣のリスクヘッジに関する助言。
まとめ
- 二次破綻は一度再生やリスケを行った企業が再度資金難に陥り、倒産へ向かってしまうリスクであり、リスケ猶予終了時に返済が増加するタイミングなどが特に危険。
- 防止には計画モニタリングと経営改善の実行が重要。収益面・コスト面・ガバナンス面で具体的施策を行い、追加出資やスポンサーも検討する。
- 失敗例として、リスケに安住し改革が進まないまま期限を迎えて資金ショートするケースもある。
- 弁護士が継続サポートすることで、金融機関報告や計画修正、法的整理への移行などを早期に検討でき、二次破綻回避の可能性が高まる。
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