はじめに

テレワークやフレックスなど多様な働き方が普及する中で、従業員の業務成果をどのように評価し、コミュニケーションを図るかは企業にとって大きな課題です。従来のようにオフィスで顔を合わせながら細やかなフォローが難しくなり、成果主義やKPI管理にシフトする企業も多い一方、適切な評価制度やコミュニケーション手法を整備しないと不透明な査定による従業員の不満やパフォーマンス低下を招く恐れがあります。

本記事では、リモートワーク・在宅勤務など非対面の働き方における業務成果の評価方法や、スムーズなコミュニケーションの取り方を中心に解説します。従業員のモチベーション向上と適正評価を両立させるために、法的視点からのチェックポイントを確認していきましょう。

Q&A

Q1. テレワーク下で従業員をどのように評価すればいいでしょうか?

従来の「時間とプロセス重視」から、より「成果物や目標達成度を評価」する方法が推奨されます。具体的にはMBO(目標管理)やKPIを設定して定量評価し、定期的な面談でコミュニケーション不足を補いつつ、定性面(協調性、アイデア提案など)を併せて判断する事例が多いです。

Q2. テレワークでコミュニケーションが減り、社員の声が把握しにくくなったと感じます。何か対策はありますか?

オンラインでの1on1面談や雑談タイムを定期的に設ける、SlackやMicrosoft Teamsなどのチャットツールを活用し、気軽にコミュニケーションできる環境を作るなどが有効です。全社会議や部門会議も定期的にオンライン開催し、情報共有を徹底することが大切です。

Q3. チーム単位の仕事ではない業務(個人タスク)が多い場合でも、コミュニケーションは必要ですか?

はい、個人タスクが中心であっても、定期的な進捗報告や困り事の相談ができる場を用意しないと、孤立や問題の放置が発生しやすくなります。管理職から働きかける一方で、従業員側が報告しやすい雰囲気をつくることも重要です。

Q4. 業務評価に不服が出た場合、労働審判や訴訟に発展する可能性がありますか?

評価結果によって大幅な賃金差や昇進・昇格に影響がある場合、不服申立や労働審判・訴訟に発展するケースはあり得ます。特に評価基準が不明確だったり、テレワークだから評価が不利と従業員が感じた場合、紛争リスクが高まります。就業規則や評価制度を透明性のある形で明示しておくことが重要です。

Q5. セキュリティ上、オンライン会議やチャットのログをどこまで確認していいのでしょうか?

企業の業務上必要な範囲であればログ確認は可能ですが、従業員のプライバシーや個人情報保護にも配慮が必要です。就業規則やセキュリティポリシーで監視・ログ取得の目的や範囲を明示し、従業員に周知することが望ましいです。過度な監視はプライバシー侵害として問題化するリスクがあります。

解説

業務成果の評価方法

  1. MBO(目標管理)
    従業員と上司が定期的に数値目標や業務ゴールを設定し、レビュー面談で達成度を評価。個々の貢献度が見えやすい。
  2. KPI・OKR
    KPI(Key Performance Indicator)やOKR(Objectives and Key Results)を導入し、短期的な指標を定量化する。
  3. 360度評価
    同僚、部下、上司、顧客など多面的な視点でリモート勤務者を評価する制度。主観バイアスを減らす。
  4. 自己評価・レポート
    テレワーク中の日報や週報で活動内容を報告し、上司がフィードバックする方法でコミュニケーションと評価を両立。

コミュニケーション促進策

  1. オンライン会議の定期化
    朝礼や夕礼をオンラインで短時間行い、進捗共有や雑談を交えつつチーム感を維持。
  2. チャットツールやSNS
    ビジネスチャット(Teams、Slackなど)で気軽に相談できる環境を整備。オープンチャネルを活用するとノウハウ共有が進む。
  3. バーチャルオフィスツール
    仮想オフィススペースで、在席状態が可視化され、気軽に声掛け・雑談できるようにする。
  4. 定期的なリアルミーティング
    完全在宅ではなく月1回や週1回はオフィス出社日を設定し、対面コミュニケーション不足を補う。

人事評価制度の見直し

  1. プロセス評価と成果評価のバランス
    テレワークで進捗が見えづらいからこそ、プロセス指標(コミュニケーション、チーム貢献度)も一定評価しつつ、成果物・売上などの客観指標も重視。
  2. 客観的エビデンス収集
    チャットやタスク管理ツールのログ、顧客評価などを活用し、主観的な印象評価を減らす。
  3. 評価面談のオンライン化
    定期的にオンライン1on1面談でフィードバックを行い、不満や不安を早期に解消。
  4. 不服申立制度
    在宅勤務者が評価に不満を感じた場合、異議申立て手続きを設け、公平に検討する仕組みが必要。

法的留意点とトラブル防止

  1. 労働時間管理
    労働基準法に基づき、残業代計算や休日労働の管理が不十分だと未払い残業代トラブルの原因になる。
  2. 評価の公平性
    テレワーカーを理由に低評価とされないよう、客観的基準を設け、公平に扱う必要がある。差別や不当労働行為リスクに留意。
  3. セキュリティ規定
    情報漏えいが発生すると企業責任が問われる。USBメモリ使用禁止やVPN利用義務などポリシーの運用徹底。
  4. 就業規則改訂・合意形成
    新しい評価制度やコミュニケーションルールを導入する際は、労使協議を経て就業規則改訂し、労基署届出および従業員への周知を行う。

弁護士に相談するメリット

テレワーク下での業務成果評価とコミュニケーションに関して、就業規則改定や紛争リスクを視野に入れる必要があります。弁護士に相談すると以下の利点があります。

  1. 評価制度の法的チェック
    在宅勤務に合った評価指標や手続きが不当労働行為や差別に該当しないか検証し、公平な運用をアドバイス。
  2. 勤怠管理・残業代対策
    労働時間管理が甘いと未払い残業代請求のリスク。弁護士がシステム選定やルール策定を支援し、トラブルを防ぐ。
  3. セキュリティ・個人情報保護
    チャットやオンライン会議のログ管理、監視の範囲などプライバシーとのバランスを考慮した規定整備を行う。
  4. 紛争対応
    業務評価に不満を抱いた従業員からの労働審判・訴訟に発展した場合、企業代理で交渉・裁判対応を行い、リスクを最小化。

弁護士法人長瀬総合法律事務所は、多様な働き方への対応や評価制度の法的リスク管理に関する実務経験が豊富で、企業が安心してテレワーク制度を運用できるようサポートします。

まとめ

  • テレワーク下の業務成果評価では、従来の時間ベース評価から成果・アウトプット重視に移行するのが一般的ですが、プロセス面(コミュニケーション、協調性など)もバランスよく評価することが重要です。
  • コミュニケーション不足を防ぐために、オンライン会議やチャットツールの活用、定期的な面談・雑談の機会を設け、在宅勤務者が孤立しない仕組みを作ることが求められます。
  • 法的リスクを回避するには、就業規則や評価制度で評価方法・基準を透明化し、勤怠管理やセキュリティ規定、残業代計算を厳格に行う仕組みを整備する必要があります。
  • 弁護士に相談すれば、テレワーク評価制度の構築、勤怠管理の整備、紛争対応などを総合的にサポートしてもらえ、企業のリスクを低減できるでしょう。

テレワークの成果を正しく評価し、従業員とのコミュニケーションを密にすることで、組織の生産性や従業員満足度を高めることが可能です。


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