はじめに

不動産を担保としてお金を借りる際、多くの場合に設定されるのが「抵当権」です。抵当権は、金融機関などの債権者が返済を確保するために借主(債務者)の不動産に設定し、もし返済が滞ったときにはその不動産を差し押さえて競売にかけ、売却代金から優先的に弁済を受けることができる担保権です。

本稿では、抵当権の基本的な仕組みや設定手続き、効力の及ぶ範囲、登記の重要性などを解説し、債権者・債務者双方にとってのポイントを整理します。

Q&A

Q1.抵当権とは、どのような権利を指すのでしょうか?

抵当権は、お金を貸した人(債権者)が債務者の不動産を担保に取り、返済がされない場合にその不動産を競売して配当を受ける権利を指します。民法や不動産登記法などで詳細が規定されており、金銭消費貸借契約(ローン契約)などの際に設定されます。

Q2.抵当権の設定手続きは、どのように行われるのですか?

一般的には以下の流れになります。

  1. ローン契約(または金銭貸借契約)の締結
  2. 抵当権設定契約書の作成:債権者と債務者が書面で合意(抵当権設定契約)
  3. 登記申請:法務局に登記申請書と必要書類(契約書など)を提出し、登記を完了
  4. 登記完了・抵当権設定登記簿謄本の取得:登記が完了すると、登記簿に抵当権が記載される
Q3.抵当権が設定されると、債務者は不動産を自由に使えなくなるのですか?

抵当権は、不動産を担保にするだけなので、債務者は通常どおり居住することが可能です。
ただし、債権者の同意なく不動産を勝手に売却したり、担保価値を大きく下げる行為(増改築・滅失など)を行うと、債権者が抵当権の実行(競売請求)を検討する場合もあります。

Q4.抵当権が登記されないと、どのようなリスクがありますか?

登記をしないと、第三者への対抗力が弱いというリスクが生じます。別の債権者が同じ不動産に抵当権を先に登記すれば、後から登記した抵当権は順位が劣後し、競売時の弁済で不利になります。
不動産担保の優劣は、登記順で決まるのが原則ですので、債権者は登記を行うのが通常です。

Q5.弁護士に相談するメリットはなんでしょうか?

抵当権は金銭貸借契約と密接に関わり、登記手続きや契約書の内容次第でトラブルリスクが大きく変わります。弁護士に依頼するメリットとしては、

  1. 契約書のリーガルチェック
    抵当権設定契約や金銭貸借契約に不備がないか確認し、債務者・債権者双方を守る条文を提案。
  2. 登記手続きサポート
    必要書類や登記申請手続きを弁護士や司法書士が代行し、順位確保を適切に行う。
  3. 債務不履行時の対応
    もし返済が滞った場合の競売手続きや任意売却を進める際、弁護士が交渉・手続きを代理してスムーズに処理。

解説

抵当権の効力の範囲

  1. 主たる債権
    • 抵当権は特定の債権(例えば住宅ローン)の担保として設定される。主債務(元本)に加え、契約書で定められた範囲の利息・遅延損害金も含む。
    • 担保限度額(極度額)を定めることは通常の抵当権ではないが、根抵当権の場合は極度額を設定する。
  2. 付加一体物
    • 建物に付属するもの(エアコンや設備など)が法律上「一体物」と扱われ、抵当権の効力が及ぶ場合がある。
    • ただし居住者の家財道具や動産は原則として抵当権の効力外。
  3. 順位
    • 同じ不動産に複数の抵当権が設定された場合は登記の順位で配当を受ける。
    • 後順位抵当権者が特定の合意(順位譲渡や劣後承諾)を得ることもある。

設定手続きの詳細と登記

  1. 抵当権設定契約の締結
    • 債権者(銀行など)と債務者(借主)が必要事項を確認し、書面で抵当権設定契約を締結。
    • 物件情報(登記簿上の地番・家屋番号)、債権額、金利、返済条件、遅延損害金の率、抵当権実行時の手続きなどを盛り込む。
  2. 書類準備
    • 債務者(不動産所有者)の登記識別情報(または権利証)、印鑑証明書
    • 抵当権設定契約書
    • 固定資産税評価証明書、住民票など。
  3. 法務局への登記申請
    • 司法書士が代理申請するケースが多い。
    • 登録免許税を納付し、登記完了後に登記識別情報(抵当権設定)が発行される。

抵当権の実行(競売・任意売却)

  1. 競売手続き
    • 債務者が返済を滞納→ 債権者が裁判所に競売申立 → 裁判所は不動産を競売にかけ、売却代金から優先弁済。
    • 多重抵当がある場合、登記順位が上位の抵当権者から配当される。
  2. 任意売却
    • 競売は安価で落札されるリスクが高いので、債務者・債権者が合意し、一般市場で売却して配当する方法。
    • 債権者にとってはより高く売れる可能性があり、競売コストも削減できるメリット。
  3. 代物弁済
    • 債務者が不動産を債権者に譲渡して債務を消滅させる方式。実際には抵当権実行ほど一般的ではないが、ケースによっては検討される。

弁護士に相談するメリット

  1. 契約書のリーガルチェック
    抵当権設定契約や金銭貸借契約の内容を弁護士が点検し、不備や抜け漏れを防ぎ、紛争リスクを軽減。
  2. 登記手続きサポート
    抵当権登記や登録免許税の計算でミスがあると優先順位が確保できず損害が生じる。弁護士や司法書士が安全に進行。
  3. 返済滞納時の競売・任意売却支援
    弁護士が競売申立・債務者交渉・任意売却手続き代理などを行い、時間と手間を大幅に削減

まとめ

  • 抵当権の概要
    不動産を担保に債権を保全する仕組み。債務不履行時に競売や任意売却で優先弁済を受ける。
  • 設定手続き
    金銭貸借契約→抵当権設定契約→登記申請→順位確定。登記が対抗要件となる。
  • 効力範囲
    物件本体と一体物に及ぶ。複数抵当があれば先登記が優先。
  • 実行方法
    競売、任意売却、代物弁済など。競売は裁判所手続き、任意売却は双方合意で柔軟に売却可能。
  • 弁護士活用
    契約書チェック、登記手続きの指導、不履行時の競売・任意売却対応など多方面で安心。

抵当権は不動産担保の根幹を成す制度であり、債権者・債務者双方にとって非常に重要です。特に登記や競売・任意売却の手続きは複雑でリスクも高いため、弁護士や司法書士などの専門家の助力を得ることで、安全かつ円滑な債権管理・回収を実現できます。


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