はじめに

マンション管理組合の運営において、理事長や理事、監事といった役員の存在は欠かせません。これらの役員はマンション管理の執行機能を担い、住民同士の合意形成や資産保全を円滑に進める重要な役割を果たします。しかし、管理組合の役員に就任した場合には、法令や管理規約で定められた義務と責任を負うことになります。

本稿では、管理組合の役員の基本的な責務や義務、具体的な役員構成や免責の可否などを解説し、円滑なマンション運営を実現するためのポイントを示します。

Q&A

Q1.マンション管理組合の役員には、どのような種類がありますか?

一般的には以下の役職が設置されます。

  1. 理事長
    管理組合の代表者。総会や理事会を招集し、議長を務めることが多い。対外的にも組合を代表。
  2. 副理事長
    理事長を補佐し、理事長不在時に代理を務める。
  3. 会計担当理事
    管理費や修繕積立金の出納・会計処理を担当。
  4. 監事
    管理組合の会計や理事会運営を監査し、問題があれば指摘する。

その他、マンション独自の事情に合わせて「防災担当理事」「広報担当理事」「総務担当理事」などを置く場合もあります。

Q2.理事長や理事はどのように選ばれるのでしょうか?

区分所有法や管理規約で具体的な選出方法を定めます。多くの場合、

  1. 総会での選任
    候補者が立候補または推薦を受け、総会決議で選ぶ。
  2. 輪番制
    マンションによっては定期的(1年や2年ごと)に住戸番号の順などで理事を務める輪番制を採用することもある。
  3. 理事会内での互選
    理事が集まって理事長や副理事長を互選する方式。
Q3.役員(理事や監事)にはどのような義務や責任があるのですか?

代表的には以下の義務・責任が挙げられます。

  1. 善管注意義務
    他人の財産を管理するように、注意深く職務を遂行しなければならない。
  2. 忠実義務
    管理組合や区分所有者全体の利益のために誠実に職務を行う。私利私欲を優先しない。
  3. 会計責任
    管理費や修繕積立金の会計管理を適正に行い、不正使用や重大なミスがないよう努力。
  4. 守秘義務
    住民の個人情報や組合内の情報を安易に外部に漏らさない。
  5. 監事の義務
    理事の業務を監査し、必要に応じて総会や理事会で指摘する。
Q4.役員がミスや不正をした場合、個人の賠償責任は問われますか?

役員が故意または重大な過失によって管理組合や第三者に損害を与えた場合、民法上の損害賠償責任が発生する可能性があります。

  • 軽微な過失やボランティア的性格を考慮し、責任を限定する規約や「役員賠償責任保険」に加入している組合も増えています。
  • ただし、悪質な横領や背任があると刑事責任に発展する場合もある。
Q5.弁護士に依頼するメリットは何でしょうか?

管理組合役員が法的義務と責任を理解し、紛争を未然に防ぐには専門家のアドバイスが有益です。弁護士に依頼すれば、

  1. 管理規約や役員規程の整備
    法令や区分所有法との整合性を確保し、役員の責任範囲を明確化。
  2. リスク回避のアドバイス
    大型工事や契約締結時に理事会が背負う法的リスクを弁護士が検証。
  3. 紛争対応
    役員が不正を疑われたり、住民が理事会運営に異議をとなえてきた場合、弁護士が調整と法的手続きを支援。
  4. 弁護士法人長瀬総合法律事務所の実績
    マンション管理組合や理事会の顧問実績多数、管理組合運営におけるリスクと対策ノウハウを提供可能。

解説

管理組合役員の具体的な業務

理事長

  • 管理会社との打ち合わせ、総会や理事会の招集・議事進行、契約締結の代表者となる。
  • 組合の財産管理や事業計画策定の指揮を執り、問題発生時はフロントに立つことが多い。

副理事長

  • 理事長を補佐し、理事長欠席時に代理を務める。
  • 役割分担に応じて、総会準備や書面・報告資料の作成などで理事長を支援。

会計担当理事

  • 毎月の収支管理(管理費や修繕積立金の入出金、未納管理など)
  • 決算書類の作成、予算案立案、税務申告(場合により税理士と連携)
  • 内部監査や監事からの照会対応

監事

  • 理事会の業務執行や会計を監査し、違法・不当行為があれば指摘する。
  • ときには住民からの苦情を受け付け、事実確認を行い理事会に改善を求めることも。

役員の就任と任期

就任の仕組み

  • 総会決議で選任するのが基本。人数不足の場合、輪番制や抽選などで強制的に理事を割り振るマンションもある。
  • 候補者がいない場合、管理会社に理事代行サービスを委託することもあるが、コスト増や組合の主体性低下が懸念される。

任期

  • 通常1年または2年が多い。再任可能なケースもあり、長期にわたって理事を務める人も。
  • あまりに短い任期だとノウハウが蓄積されず運営の効率が落ちる可能性あり。

辞任や解任

  • 理事が個人的事情や健康上の理由で辞任希望→総会で承認手続きを取る。
  • 理事が不正行為や職務怠慢を行った場合、組合員は解任決議を経て退任させることができる。

役員の責任と免責

民事上の責任

善管注意義務に違反して管理費を紛失させたり、不注意で不正支出を見逃したりすれば、組合に損害を与えたとして賠償責任を問われる場合がある。

刑事責任

  • 横領や背任などの悪意ある行為の場合、刑事事件に発展。
  • 過失や軽微なミスでは刑事責任を問われにくいが、重大な不正は処罰対象となりうる。

免責規定・役員賠償保険

  • 管理規約や細則で「役員は通常の注意を尽くした場合には責任を負わない」と定めたり、理事賠償責任保険に加入する組合も増えている。
  • ただし悪意・重大過失は免責されないのが原則。

弁護士に相談するメリット

規約・役員規程の設計

役員の選任方法や任期、職務内容、責任限定などを管理規約に定める場合、弁護士が法的観点からドラフトをサポートし、総会決議の可決を後押し。

大規模工事や管理契約時の交渉

理事会の判断で高額契約を結ぶ際に、万一のトラブルが起きても役員個人が責任を問われにくいよう、契約書・議事録を弁護士が点検し安全策を講じる。

紛争対応

区分所有者から「理事長が職務怠慢だ」「会計担当が不正出金を見逃した」などのクレームが出た場合、弁護士が調査・対応し、責任の範囲を明確化して円満解決を図る。

弁護士法人長瀬総合法律事務所の経験

当事務所は数多くのマンション管理組合の顧問として、理事会運営や役員責任問題の解決を支援。管理会社や建築コンサルとの連携もスムーズに行えるノウハウあり。

まとめ

管理組合の役員(理事長・理事・監事)はマンション運営の根幹を担い、住民の合意形成・財産管理を代行する重要な立場。

就任と任期

通常1~2年程度。総会決議や輪番制で選出される。辞任や解任も総会承認が原則。

役員の責務

  1. 善管注意義務
  2. 忠実義務
  3. 会計責任

監事の監査責任

  • 責任追及リスク
    不正や重大過失があれば、民事賠償や刑事責任を負う可能性。免責規定・役員賠償保険でリスク緩和も可能。
  • 弁護士活用
    規約整備や総会決議手続き、契約書レビュー、紛争時の代理など多方面で組合役員をサポート。

管理組合の役員はボランティア性が強いものの、法的責任は決して軽くないのが現実です。役員自身が義務を認識し、管理規約や区分所有法に沿った運営を行うとともに、必要に応じて弁護士など専門家の助力を得ることで、安心・安全なマンション管理を実現できます。


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