はじめに

マンション管理組合が円滑に機能するには、理事会総会が適切に運営されることが不可欠です。理事会は日常の管理運営の中心となり、総会は区分所有者全員による最高意思決定機関として重要な役割を担います。これらを正しく進行し、議事録をきちんと作成・保管することで、住民間の合意形成や透明性を高めることができます。

本稿では、理事会と総会の基本的な進め方や議事録の作成ポイント、法的注意点について解説します。

Q&A

Q1.理事会と総会の役割はどう違うのですか?
  • 理事会
    管理組合の日常業務(管理費の出納、修繕計画立案、居住者からの要望対応など)を執行する機関。理事長や理事が選ばれて運営する。
  • 総会
    区分所有者(組合員)全員で構成され、重要事項の意思決定を行う最高機関。理事の選任・解任、管理規約の改正、予算・決算などを承認する場。
Q2.理事会はどのように運営されるのでしょうか?

一般的には以下の流れです。

  1. 定例理事会の日程設定
    月1回や2ヶ月に1回など定期開催し、事前に理事・監事へ通知。
  2. 議題の準備
    管理会社や理事長が議題案を作成し、理事会で検討。
  3. 理事会開催
    理事長が議事進行し、議題ごとに説明・討議・決定事項をまとめる。
  4. 議事録作成・保管
    理事会ごとに簡易議事録を作り、理事全員で確認。
Q3.総会はどれくらいの頻度で開催すべきですか?

区分所有法や管理規約で年1回以上の通常総会が義務づけられます。追加で、臨時総会を必要に応じて開催し、緊急の議題を処理する場合もあります。たとえば、大規模修繕の決定や管理規約の改正など、重大事項を協議する際に臨時総会を招集するケースがあります。

Q4.総会での議事録にはどのような要件がありますか?

議事録に記載すべき項目としては、以下が挙げられます。

  1. 開催日時・場所
  2. 出席者数(本人・代理・書面議決など)
  3. 議題と討議内容
  4. 採決結果(賛成・反対数、可決・否決)
  5. 出席理事・監事の署名または記名押印
Q5.弁護士に依頼するメリットは何でしょうか?

理事会・総会の議事進行や議事録作成において、法的な不備があると決議が無効とされたり、住民間の紛争が深刻化する可能性があります。弁護士に依頼することで、

  1. 法令順守の手続き運営
    招集通知の書式や決議要件など、区分所有法や管理規約に合致させる。
  2. 議案のリーガルチェック
    管理規約改正や大規模修繕工事の契約などを議題とする場合、弁護士が法的問題を点検し、リスク回避。
  3. 紛争防止・仲裁
    議案に反対する住民が多い場合、弁護士が中立的な立場から根拠や代替案を提示し、合意形成をサポート。

解説

理事会の進め方

事前準備

  • 理事長が開催日時を調整し、議題や資料を理事会メンバーに配布。管理会社が補助することもある。
  • 議題案例:修繕工事の見積もり比較、総会議案の検討、管理費滞納者対策、設備故障対応など。

理事会開催

  • 理事長(または副理事長)が議長を務め、議事次第に沿って討議。
  • 各理事が意見を出し、議決が必要な事項は理事会規約や慣行に従って多数決。
  • 決定事項や保留事項を明確にし、担当者を割り振る。

議事録作成

  • 議事録担当が要旨をまとめ、理事長・理事の確認を得る。
  • 管理組合内で保管し、次回理事会で承認。電子化して共有するケースも増加。

総会の運営ポイント

招集通知と議案書

  • 区分所有法で少なくとも会日から2週間前に招集通知を出すよう規定。
  • 議案書には議案の趣旨、提案理由、予算案などを詳しく添付し、組合員が検討しやすいよう配慮。

当日の進行

  • 理事長などが議長を務め、議題ごとに説明→質疑応答→採決の流れ。
  • 議事進行ルールは管理規約で定められることが多い。議長が公正に運営し、発言時間や順序をコントロール。

議案の可決要件

  • 普通決議
    過半数の同意
  • 特別決議
    4分の3以上の同意が必要など、議案ごとに要件が異なる。
  • 不備があると決議無効が争われる事例も。

議事録の作成と署名

  • 総会終了後、速やかに議事録を作成し、議長・出席理事らが署名。
  • 区分所有者の閲覧請求に応じられるよう保管し、管理会社や理事会も共有。

トラブル想定例

議事録の記載不足で決議無効を主張される

  • ある重要議案(例:大規模修繕工事の契約)が可決されたが、議事録に討議内容や反対意見がほとんど記載されず、無効訴訟を起こされた。
  • 結果、裁判所が不備を認定し再度総会を開く羽目に。

招集通知の期間違反

  • 総会を急ぎすぎて法定の2週間前を満たさず招集 → 一部区分所有者が「決議無効だ」と抗議。
  • 実再度招集通知を送り、臨時総会で同議案を可決し直すケースがある。

多数決では足りない議案を普通決議で可決してしまった

管理規約改正や駐車場位置変更など特別決議が必要な案件を普通決議で通してしまい、後に無効を主張される。

弁護士に相談するメリット

  1. 規約と区分所有法の整合性確認
    総会で決めた内容が区分所有法や管理規約に反していないか、弁護士がリーガルチェックし、不当な決議の無効リスクを減らす。
  2. 議事録作成の適法化
    議事録に必須の記載事項や証拠保全を弁護士がアドバイスし、将来の紛争時に有力な証拠として機能させる。
  3. 紛争時の代理対応
    決議の効力をめぐる訴訟や、総会決議の取り消し・無効確認訴訟などで弁護士が管理組合を代理。

まとめ

  • 理事会
    日常運営の中心。定期的に開催し、管理業務を執行。議事録を簡易に作成し、理事会内で共有。
  • 総会
    区分所有者全員で構成される最高意思決定機関。最低年1回の通常総会+必要に応じて臨時総会
  • 議事録作成の要点
    • 開催日時・場所、出席者数(本人・代理・書面)、議案内容、採決結果、署名または記名押印。
    • 書面議決・電子投票などの場合も、その結果を正確に反映させる。
  • 注意点
    法定招集期間(2週間など)、決議要件(普通決議・特別決議)を守らないと決議無効リスク。
  • 弁護士活用
    議案の適法性検証、住民間対立の調整、議事録記載の助言、無効訴訟対応などで安心。

理事会・総会の適正な運営はマンション管理にとって肝要です。議事録を正確に作成し、合意形成を明確にすることで、長期にわたる良好なコミュニティを維持できます。法的要件を踏まえたアドバイスを受けながら進行することが、トラブル回避に有益といえます。


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