はじめに

借地契約は長期にわたることが多く、契約期間内に借地人(または地主)が亡くなるケースも珍しくありません。その際、借地権は相続の対象となり、相続人がそのまま借地を承継できるのが原則です。しかし、地主が「承継を認めない」と言い出したり、相続人が複数いて借地権をどう分けるか合意できないなど、トラブルに発展しやすい問題でもあります。

本稿では、借地権の相続・承継時に押さえるべき法的ポイントや実務上の注意点を解説し、地主・相続人双方がスムーズに手続きを進めるためのヒントを提示します。

Q&A

Q1.借地人が亡くなったら、借地契約は消滅するのですか?

借地権は財産的権利であり、借地借家法によって相続が可能です。借地人が死亡しても借地権は消滅せず、相続人が引き継ぐのが原則です。地主の承諾がなくても法定相続人が自動的に借地権を承継します。

Q2.複数の相続人がいる場合、借地権はどう扱われますか?

相続人が複数いる場合、借地権も共有状態になるのが原則です。ただし、実務上は借地をどの相続人が実際に使用するかが重要です。

  • 遺産分割協議で「長男が借地権を単独で相続し、他の相続人に代償金を払う」という形を取ることが多い。
  • 相続人間で意見対立がある場合は協議や家庭裁判所の調停で解決を図ることもある。
Q3.借地権の相続に地主の承諾は必要ですか?

相続承継自体は地主の承諾は不要です(法定承継)。しかし、相続人が借地上の建物を売却して第三者へ借地権を譲渡する場合は別途地主の承諾を得る必要があります。

  • ただし「遺贈(遺言による権利移転)などは譲渡に近い扱い」とされるため、地主承諾が必要になる場合があるので要注意。
Q4.地主が「相続を認めない」と言ってきたら、どうしたらいいですか?

借地借家法のルールで相続承継は自動的に認められるため、地主が一方的に「承継は無効」と主張しても法的には通りません。万が一、地主が明渡しを求めるなど強硬手段をとる場合は、

  1. 書面で相続を通知し、法的根拠(借地借家法)を提示。
  2. それでも拒否されるなら、弁護士に相談し、調停・訴訟で借地権承継の確認を求めることが可能。
Q5.弁護士に相談するメリットは?

借地権の相続・承継は相続法と借地借家法の両面を理解する必要があり、地主・相続人間でトラブルが生じやすいです。弁護士に依頼すると、

  1. 相続全体の整理
    不動産や現金、借地権などすべてを含めた遺産分割協議を法的にサポート。
  2. 地主との交渉代理
    地主が承継を拒むなどのトラブルを弁護士が法的視点で交渉し、早期解決。
  3. 譲渡・転貸・地代改定など付随問題にも対応
    借地トラブル全般をワンストップで解決。
  4. 弁護士法人長瀬総合法律事務所の経験
    多数の借地相続や家族間紛争を解決しており、地主側・相続人側どちらの視点でも円満解決に導ける実績。

解説

借地権の相続・承継の法的仕組み

  1. 法定承継
    • 借地人が死亡すると、借地権は原則として法定相続人が継承。地主の同意は不要。
    • 普通借地契約の更新権・建物買取請求権なども相続される。
  2. 遺言・遺贈の場合
    • 被相続人が特定の相続人に借地権を遺贈する遺言を残すことも可能。しかし、この場合、地主承諾が必要とされるとの解釈もあり、実務上は注意が必要。
    • 遺留分への配慮や他の相続人への代償などが論点となる。
  3. 借地借家法での保護
    • 借地借家法は居住安定を重視し、相続による承継を当然のものと位置付ける。地主が承認しなくても法的に承継が有効。

相続人間の調整と地主の対応

  1. 遺産分割協議
    • 借地権を相続人の誰が取得するか決めるには遺産分割協議が必要。
    • 借地権を単独相続する人が決まり、他の相続人に代償金を払うパターンが多い。
  2. 地主への通知
    • 承継人が決まったら、地主に相続発生と承継人決定を通知し、地代名義変更など手続き。
    • 地主が不当に拒否しても法的には承継可能なので、トラブル場合は弁護士に相談。
  3. 地代増額の可能性
    • 新しい借地人が相続によって土地使用を継続するとき、地主が地代増額を主張する場合がある。
    • 根拠が薄ければ合意は難しいが、不調なら地代増減額請求の非訟手続きが行われることも。

実務トラブル例

  1. 相続人が複数いるのに借地人が一人だけ使用
    • 他の相続人が「借地権の価値に見合う代償金を支払え」と要求 → 遺産分割協議が長引き、地主への支払いが滞る。
    • 弁護士が遺産分割調停で借地権評価を鑑定し、分割案をまとめるケースがある。
  2. 地主が「承諾しない」と主張
    • 借地人が死亡後、地主が「新借地人を認めない」と言い立退きを迫る。しかし法的には相続承継が自動的に認められるため、地主が正当事由なく更新拒絶・解除できない。最終的に地主が認めざるを得ない。
  3. 建物買取請求の相続
    • 借地契約終了時、相続した借地人が建物買取請求権を行使 → 価格交渉でもめ、訴訟に至る事例。
    • 裁判所は不動産鑑定評価などを考慮して妥当な買取額を定める。

弁護士に相談するメリット

  1. 相続全体の設計
    借地権、建物、他の不動産や金融資産を含む遺産全体を整理し、適切な遺産分割協議を行うことで紛争を回避。
  2. 地主との交渉
    借地権を相続した相続人が地主から不当な更新拒絶や地代増額を迫られたとき、弁護士が法的根拠を示して対抗。
  3. 書類作成・手続き代理
    地主への通知書や合意書作成、万一の裁判(更新拒絶や地代増減額訴訟)で代理人として対応。
  4. 弁護士法人長瀬総合法律事務所のサポート
    借地権相続でよく起こる問題(相続人間の対立、地主とのトラブルなど)を解決し、実務経験豊富な弁護士が最適策を提示。

まとめ

  • 借地権は相続可能
    借地人死亡で消滅しない。法定承継され、地主承諾は不要。
  • 複数相続人の場合
    遺産分割協議でどの相続人が借地権を承継するか決定。共有になると運用が難しいケースも。
  • 地主への通知
    承継人が決まったら地主へ連絡し、地代支払者名義などを変更。地主が不当に拒否しても無効。
  • 承諾必要な場合
    遺贈や第三者への譲渡・転貸には地主承諾or裁判所許可が必要。
  • 弁護士活用
    紛争リスクを最小化し、相続分割や地主交渉を円滑に進める。

借地権相続をめぐる問題は相続法と借地借家法が交錯するため、誤った理解に基づいた交渉や手続きをすると大きなトラブルを誘発しかねません。専門家の助力を得て正確に手続きを踏むことが、地主・相続人両者にとって最善の解決方法となります。


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