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取締役会・監査役会・各種委員会の役割と運営ポイント

【コーポレートガバナンス】取締役会・監査役会・委員会の役割と運営|会社法が求める体制構築とは?

はじめに

会社の重要な意思決定や業務執行を監督するために、取締役会監査役会、さらに指名委員会監査等委員会などの各種委員会が設けられています。とりわけ、取締役会は会社の経営における最も重要な機関の一つであり、業務執行方針の決定や取締役の職務監督を行う役割を担います。監査役会は業務や会計の監査を通じ、経営のチェック機能を果たします。一方で、大会社などでは指名委員会等設置会社といったガバナンス形態が採用されることもあります。

こうしたガバナンス機関を適切に運営することで、内部統制を強化し、株主やステークホルダーの信頼を得ることができます。しかし、会社法で定められた要件に不備があれば、違法な決議監督不十分とみなされ、会社や取締役が責任を問われるリスクがあるため、注意が必要です。本記事では、取締役会・監査役会・各種委員会の基本的な役割と運営上のポイントを解説します。

Q&A

Q1:取締役会はどのような役割を果たすのでしょうか?

取締役会は、会社の重要な意思決定を行い、かつ取締役の業務執行を監督する機関です。具体的には、経営戦略の決定重要な契約や投資の承認代表取締役の選定・解職などを行います。取締役の多数決で決議がなされ、少数意見も理事会(取締役会)議事録に記録されます。取締役会を設置している会社では、日常の業務執行は代表取締役に委任し、取締役会がその方向性やモニタリングを担う構造が一般的です。

Q2:監査役会の役割と、監査等委員会との違いは何ですか?

監査役会は、監査役が複数いる会社に設けられる機関で、業務監査(取締役が法律や定款に違反していないか)および会計監査を行います。一方、監査等委員会は、指名委員会等設置会社ではなく監査等委員会設置会社という形態をとる場合に設置できる委員会で、取締役(監査等委員である取締役)が監査機能を果たします。要するに、

という違いがあります。

Q3:指名委員会や報酬委員会は、どんな会社が導入するのですか?

指名委員会等設置会社(委員会設置会社)では、会社法上3つの委員会(指名委員会監査委員会報酬委員会)を設置し、それぞれ取締役の選解任の議案を決定したり、取締役の報酬を決定したり、業務監査を行います。これは主に大会社(公開会社で資本金5億円以上または負債200億円以上など)や、グローバルに株主が多い会社などで、コーポレートガバナンスを強化したいという意図から導入されるケースが多いです。中小企業や非公開会社では必須ではありませんが、自主的に導入する例もあります。

Q4:取締役会や監査役会が適切に機能しないと、どんなリスクがありますか?

例えば、不祥事や法令違反が見逃され、取締役や会社自体が損害賠償責任を負う可能性があります。また、株主総会で取締役の責任追及が提起されたり、裁判所で会社のガバナンス不備が厳しく問われるケースもあり得ます。さらに、監査役会や監査等委員会が形骸化していると、金融商品取引法などの規定に違反して処分を受けるリスクも高まります。適切な運営をしないと企業価値が下がり、投資家からの信頼が失われる事態にもつながるでしょう。

解説

取締役会の基本構造と運営

  1. 取締役会の設置義務
    • 大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上の公開会社)や監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社などは、取締役会を必置とする。また非公開会社でも任意に設置可能。
    • 最低3名以上の取締役が必要で、取締役が1~2名の会社は取締役会を置けない。
  2. 取締役会の役割
    • 重要な業務執行の決定:合併・事業譲渡、大口投資、人事や組織改編など、会社に大きな影響がある事項。
    • 業務執行の監督:代表取締役・取締役の職務執行を監視し、不正行為や法令違反を防ぐ。
    • 取締役の選解任代表取締役の選定:実務上、選解任は株主総会決議事項だが、代表取締役の選定は取締役会の権限。
  3. 取締役会運営の実務
    • 定期開催:通常は毎月や四半期ごとに定例会を開き、必要に応じて臨時会を招集。
    • 招集手続き:原則、議長が定められており、各取締役や監査役に事前に議案を送付し意思決定が円滑に行われるよう準備する。
    • 決議:取締役の過半数の出席かつ出席者の過半数賛成で可決(特別の利害関係を有する取締役は議決権を行使できない)。議事録を作成し出席取締役と監査役が署名押印する。

監査役会の役割と監査等委員会との比較

  1. 監査役会の構成と職務
    • 監査役が3名以上(うち過半数が社外監査役)で構成される機関。
    • 監査役会は監査計画を策定し、監査役の権限分担を定め、監査業務の効率化を図る。業務監査・会計監査を行い、取締役会に対し監査報告を提出。
  2. 監査役と監査等委員の違い
    • 監査役は取締役とは別の機関として独立した立場で監査を行う。
    • 監査等委員会は取締役(監査等委員として選任された者)が取締役会内で監査権を行使する形態。監査等委員会設置会社では監査役会を置かず、この委員会が監査機能を担う。
  3. 監査の実務
    • 監査役(または監査等委員)は業務執行を日常的にチェックし、必要に応じて取締役会や代表取締役に改善を求める。
    • 会計監査人(公認会計士・監査法人)と連携し、財務諸表や内部統制システムを確認するなど、会社の透明性と信頼性を確保する役割を担う。

指名委員会等設置会社の委員会(指名・監査・報酬)

  1. 指名委員会
    • 取締役の候補者を選定し、株主総会に提案する委員会。取締役の指名権限を担い、社外取締役を含む複数名で構成される。
    • 組織改革や役員交代がスムーズになるが、社外取締役の比率が高くなるためコーポレートガバナンス強化が期待される。
  2. 監査委員会
    • この形態では監査役会がなくなり、監査委員会(取締役の中から選任された委員)が業務監査・会計監査を行う。
    • 監査委員は過半数が社外取締役で構成され、取締役会にも参加し、経営監視が強化される。
  3. 報酬委員会
    • 取締役や執行役の報酬体系・金額を審議・決定する委員会。株主の不信や報酬制度の不透明性を解消し、役員報酬の公正・透明化を図る。
    • 独立社外取締役が参加し、経営者が自身に高額報酬を決めるなどの問題を防ぐ狙いがある。

実務上の注意点とリスク管理

  1. 企業規模・実情に合わせた選択
    • 監査役会や指名委員会等設置会社はコストや人材確保の面で負担が大きい。十分な人材や社外取締役を確保できない場合、形骸化のリスクがある。
    • 中小企業や非公開会社では、取締役会非設置や簡易なガバナンス形態を選ぶことも多いが、成長に応じてガバナンス強化を検討すべき。
  2. 社外取締役の活用
    • 上場会社や大会社では社外取締役の選任が事実上必須(法定義務の場合あり)。名義貸しでなく、実質的に経営監督を行える人材を登用し、取締役会の質を高める。
    • 報酬や就任条件を明確化し、責任・権限を整えてアクティブに意見できる環境を整備する。
  3. 内部統制・リスクマネジメントとの連動
    • 取締役会や監査役会、監査等委員会は内部統制システム全体と連動し、リスクやコンプライアンス問題を把握・対応する。
    • 報告ラインや内部通報制度を明確にし、不祥事を早期に発見・是正できるようにする。
  4. 議事録管理と紛争予防
    • 各会議(取締役会、監査役会、各委員会)での議事録を正確に作成し、出席者が確認・署名する。将来の責任追及や内部紛争に備えて証拠を残すのが重要。
    • 重要議案で反対意見が出た場合、その意見を議事録に反映し、反対取締役の責任免除に繋がる可能性もある。

弁護士に相談するメリット

弁護士法人長瀬総合法律事務所は、取締役会・監査役会・各種委員会の整備・運営に関し、以下のようなサポートを行っています。

  1. 会社法上の要件と定款・規程の整備
    • 会社法やガバナンスコードの要求を踏まえ、取締役会規程監査役会規程委員会規程の作成・改定を支援。
    • 非公開会社や大会社、上場会社など企業の規模・形態に合わせた柔軟な設計を提案し、必要な社外取締役や監査役の要件を確認する。
  2. 会議運営支援
    • 取締役会・監査役会の開催頻度や招集手順、議案書作成などをアドバイスし、決議事項と報告事項を正しく区分。
    • 会議当日の議事進行に弁護士が立ち会い、コンプライアンス面議事録記載をフォローすることも可能。
  3. 監査役・委員会へのガイダンス
    • 監査役や監査等委員の業務範囲や権限、報酬設定などを整理し、活動計画(監査計画)策定を支援。
    • 指名委員会・報酬委員会の設置・運営をサポートし、社外取締役選任や報酬ポリシー策定のリーガル面をカバー。
  4. 不祥事対応・訴訟リスク軽減
    • 取締役会や監査役会が不十分だとして株主訴訟が起きそうな場合、企業側の責任軽減策や手続き補正を助言。
    • 実際に訴訟となった際も、取締役や監査役が適切に職務を果たしていたと立証する資料(議事録、監査報告)を整理し、防御戦略を構築する。

まとめ


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