はじめに

SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は、情報発信やコミュニケーションを気軽に行える反面、誹謗中傷や嫌がらせが発生するリスクも抱えています。特に、表向きの投稿だけでなく、DM(ダイレクトメッセージ)と呼ばれる直接的なやりとりの場での誹謗中傷が増えているのが現状です。

DMは当事者間のみで完結するため、周囲の目に触れにくく、加害者が悪質な言葉や脅迫的内容を送りつけても第三者が気づきにくいという性質があります。そのため、被害を受けた当人が強いストレスや恐怖を抱え込み、表沙汰にしにくいケースが後を絶ちません。

本稿では、DMでの誹謗中傷・嫌がらせについて、その特徴や代表的な被害例、被害が起きた際の対処法、そして弁護士に相談するメリットなどを解説します。SNSを安心して利用するためにも、DMという“見えない場所”で起こり得るトラブルに備える知識を身につけていただければ幸いです。

Q&A

Q1:DMで誹謗中傷を受けた場合、普通の投稿と比べて何が異なるのでしょうか?

表に公開される投稿とは異なり、DMは当事者間のプライベートなやりとりです。そのため、周囲が気づきにくく、被害者が孤立しやすいのが特徴です。また、内容がエスカレートしても第三者の介入が起こりにくく、長期間続く恐れがあります。

Q2:DMの内容も名誉毀損や侮辱、脅迫などの犯罪になり得るのですか?

はい。DMであっても、他者の社会的評価を低下させる事実を示したり、人格を侮辱したり、脅迫行為を行ったりすれば、刑法や民法上の責任が問われ得ます。公開範囲が狭いとしても、被害者が実質的な損害を被る場合があります。

Q3:DMでの誹謗中傷を受けても、相手をブロックすればいいだけでは?

相手をブロックすると直接のやりとりは防げますが、すでに精神的ダメージや名誉の毀損が起きている場合、法的救済を求めるかどうかを検討すべき場面もあります。また、ブロック後に別アカウントで再び攻撃してくるケースもあり、根本解決に至らない可能性があります。

Q4:DMで送られた誹謗中傷を証拠として残すにはどうすればいいですか?

スクリーンショットや画面録画などで内容を保存しましょう。相手のアカウント名、送信日時、メッセージ内容が分かる形で記録しておくことが重要です。画像や動画データは改ざんされにくい形で保管してください。

Q5:DMでの被害をSNS運営会社に通報しても、削除対応はしてもらえるのでしょうか?

SNS運営会社のガイドライン違反(暴力的・差別的表現、脅迫など)と認められれば、アカウント停止などの対応が取られる可能性があります。ただし、DMはプライベートな領域なので、運営会社が積極的に内容を閲覧・削除するにはハードルがある場合も。状況により法的手続きが必要となるケースがあります。

解説

DMでの誹謗中傷が増える背景と特徴

  1. 匿名アカウントの乱立
    SNSで複数のアカウントを容易に作れるため、ブロックされても新しいアカウントで嫌がらせを続ける「粘着行為」が増加。
  2. 被害が可視化されにくい
    DMは当事者間のみでやりとりされるため、周囲の目に触れず、被害者が誰にも相談できずに苦しみを抱え込むケースが多い。
  3. 心理的ハードルが低い
    相手を直接見ずに一方的なメッセージを送れるため、誹謗中傷や暴言を浴びせやすい。

代表的な被害例

  1. 侮辱・罵倒メッセージ
    • 「死ね」「バカ」「生きてる価値がない」などの暴言
    • 批判や不満を執拗に送られ、精神的ダメージを受ける
  2. 脅迫・恐喝
    • 「家に火をつける」「家族に危害を加える」などの脅迫内容
    • 金銭を要求する恐喝的メッセージ
  3. ストーカー的行為
    • 過度に個人情報を詮索しようとする、プライベートを執拗に追及してくる
    • 複数のアカウントから連続的に連絡をしてくる
  4. 卑猥な画像や文言の送りつけ
    • 性的嫌がらせの一環として、不快な画像や文章をDMで送信する

被害を受けた際の初期対応

  1. 証拠の保全
    • スクリーンショットや画面録画を取り、相手のアカウント情報やメッセージ内容を保存
    • 日時やDMの連続性がわかる形で記録すると後々スムーズ
  2. 相手をブロック・通報
    • SNSの機能を使い、相手をブロックしてこれ以上の連絡を防ぐ
    • ガイドライン違反の可能性があれば運営会社に通報
  3. 落ち着いて第三者や専門家に相談
    • 家族や友人、上司など信頼できる人にまずは現状を共有
    • 悪質ならば警察に相談したり、弁護士にアドバイスを求める

DMによる誹謗中傷の法的側面

  • 名誉毀損罪・侮辱罪
    公然性が争点になるが、複数の人が閲覧できる状態であれば名誉毀損に該当する可能性がある。DMの場合でも、内容次第では侮辱罪が成立する余地がある。
  • 脅迫罪
    「殺してやる」「家に火をつける」などの文言があれば脅迫罪が問われる可能性。
  • ストーカー規制法
    執拗にメッセージを送りつけ、相手の意思に反して接触を図ろうとする行為はストーカー行為に該当し得る。
  • 損害賠償責任(民事)
    精神的苦痛に対する慰謝料を請求できる場合がある。相手を特定するためには発信者情報開示請求などの手続きが必要。

弁護士に相談するメリット

違法性の判断と削除依頼・加害者特定

DMの内容がどの程度違法なのかを弁護士が判断し、SNS運営会社への通報やブロックだけでなく、発信者情報開示請求などの手続きをスムーズに行える。加害者がわからない匿名アカウントでも、法的手段を活用すれば特定できる可能性が高い。

損害賠償請求・示談交渉

誹謗中傷によって大きな精神的苦痛や営業妨害などの損害を被った場合、加害者に対して損害賠償を求めることができる。弁護士が示談交渉を行うことで、被害者側が直接加害者とやりとりするリスクを回避しつつ、適正な慰謝料や謝罪を得られる可能性が高まる。

警察との連携

脅迫やストーカー行為など、刑事事件として扱われるレベルの被害では警察への相談が必要となる。弁護士が被害届や告訴状の作成をサポートし、捜査機関との連携をスムーズに進めることができる。

被害者の精神的負担軽減

誹謗中傷や脅迫を受け続けると、被害者は強いストレスを抱えがち。弁護士が窓口となり、法的手続きやSNS運営会社とのやりとりを代理で行うことで、被害者は安心して日常生活や仕事に専念できる。

まとめ

  • DM(ダイレクトメッセージ)の誹謗中傷
    1. 公開されないがゆえに発覚しにくく、長期化・深刻化しやすい
    2. 執拗な粘着行為や脅迫的メッセージで被害者に大きな精神的苦痛
  • 初期対応策
    1. スクリーンショット等で証拠保全
    2. SNS機能でブロック・通報
    3. 状況に応じて弁護士や警察に相談
  • 法的対処方法
    • 名誉毀損、侮辱、脅迫、ストーカー規制法違反などが成立し得る
    • 発信者情報開示請求により加害者特定→示談交渉・損害賠償請求
  • 弁護士との連携メリット
    1. DMの違法性判断から加害者特定まで一括サポート
    2. 示談交渉や警察連携により早期解決
    3. 被害者の精神的負担を軽減

DMという“密室”で行われる誹謗中傷や脅迫は、気づかれずに被害が深刻化しがちです。しかし、証拠をしっかり残し、適切にブロックや通報を行い、必要ならば弁護士の力を借りることで、加害者を特定し法的責任を問うことも不可能ではありません。もし同様の被害に遭われた場合は、お早めにご相談いただき、最適な対応策を模索することをおすすめします。


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