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倒産後の健康保険や年金はどうなる?破産手続と社会保険の取り扱いを解説

はじめに

中小企業が倒産(破産)に至るとき、経営者や従業員にとって問題となるのが社会保険・年金・健康保険などの公的制度の取り扱いです。会社が破綻して解散すると、法人名義で加入していた健康保険や厚生年金が継続できなくなり、代表者や従業員は個人ベースで別の保険に切り替える必要が生じます。また、未納保険料がある場合は、倒産手続でどのように扱われるのかも重要です。

本記事では、破産手続後の社会保険・年金・健康保険について、代表者個人と従業員の両面から、その仕組みや注意点を整理します。会社倒産による保険関係の影響を軽視すると、健康保険未加入や年金未納などで後々大きなトラブルにつながる可能性があります。早めに正しい情報を収集し、スムーズな切り替えを行いましょう。

Q&A

Q1. 会社が破産すると、社会保険の加入資格はどうなりますか?

会社が社会保険(健康保険・厚生年金)の適用事業所であった場合、破産や解散により事業が廃止されると、加入要件を喪失します。結果として被保険者(代表者や従業員)は資格喪失し、国民健康保険や国民年金などへ個人ベースで切り替える必要が生じます。

Q2. 法人代表者個人は、健康保険を任意継続することはできないのでしょうか?

健康保険の任意継続被保険者制度は、会社の健康保険を退職した場合に活用できます。ただし、法人が解散した場合の代表者(役員)は「退職」とみなされるかどうか事例による面もあるため、詳細は保険者(協会けんぽや組合)へ確認が必要です。

Q3. 未払いの社会保険料があった場合、破産手続でどう扱われるのでしょうか?

社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料など)や税金は、法的に優先債権として扱われ、財産が残っていてもまず保険料に充当される可能性があります。

Q4. 会社が破産して自分(代表者)が個人破産もした場合、年金はどうなりますか?

個人破産であっても、公的年金は差し押さえ禁止財産とされることが多く、支給そのものが停止されるわけではありません。また、免責される債務とも直接関係がないため、年金受給権を失うようなことは通常ありません。ただし、過去の未納期間があると年金額に影響する点は要注意です。

Q5. 従業員も倒産後、すぐに保険を切り替えなければならないのですか?

はい。会社が適用事業所でなくなると、従業員は健康保険・厚生年金の資格を喪失します。退職と同時に資格喪失日が訪れるため、国民健康保険国民年金への切り替えを速やかに行わなければなりません。未加入期間が長引くと後日手続が複雑化し、追徴が発生することもあります。

解説

破産と社会保険の基本的な関係

  1. 適用事業所の消滅
    法人が破産・解散すると、社会保険適用事業所としての資格も消滅します。これにより、健康保険・厚生年金保険の加入者であった代表者・従業員は資格を喪失。退職者に準じて、別途加入手続を行う必要が出てきます。
  2. 保険料の未納・優先債権性
    破産手続では、未納の保険料が国等に対する負債として優先度が高い債権になり得ます。一定範囲で優先的に弁済が行われるものの、破産財団(会社財産)に資金が足りなければ、不足分は回収がなされないままに終わる可能性もあります。代表者が個人保証している場合はその限りではありません。
  3. 代表者の個人破産との連動
    会社破産後、代表者個人も多額の債務や未納保険料を抱えている場合、個人破産を検討することが多いといえます。しかし税金や社会保険料など非免責債権が残る場合もあるため、手続前によく確認する必要があります。

代表者個人の保険・年金取り扱い

  1. 国民健康保険への切り替え
    法人の健康保険を喪失した後は、市区町村が運営する国民健康保険に加入するのが一般的です。任意継続を選べる可能性もありますが、保険料や期間の制限を確認しましょう。
  2. 国民年金への移行
    厚生年金の被保険者資格を失った後は、国民年金への切り替え手続が必要です。特に未納期間が生じると受給額に影響するため、できるだけ早めに役所で手続きを行い、追納や分割納付などを検討しましょう。
  3. 個人事業主としての社会保険
    破産後、新たに個人事業主として活動する場合、原則として国民健康保険・国民年金が基本となります。法人化を検討するタイミングで、社会保険の適用に切り替わる可能性がありますが、金融機関融資の審査などを含めて戦略を立てることが肝要です。

従業員の保険・年金取り扱い

  1. 資格喪失と離職票
    会社破産に伴い、従業員は健康保険・厚生年金の資格を失うため、ハローワークでの失業保険受給や、国民健康保険・国民年金加入への切り替えが必要となります。経営者としては離職票の速やかな発行や資格喪失届の提出を行い、従業員の不利益を最小化しましょう。
  2. 未払い賃金と社会保険料
    倒産直前に未払い給与がある場合、その分の保険料がどう処理されるかが問題となります。
  3. 資格喪失後の手続
    従業員が国民健康保険や国民年金へ切り替える際、切り替えのタイミングを逃すと無保険状態が生まれ、後から保険料を追納しなければならないことがあるため、注意が必要です。経営者としては、従業員に対し必要書類(離職票など)を速やかに渡し、手続きを促すことが望ましいといえます。

弁護士に相談するメリット

  1. 会社破産・解散時の社会保険手続アドバイス
    届出の時期や必要書類の不備を防ぎ、トラブル回避に役立ちます。
  2. 未納保険料・税金の優先債権対応
    破産手続で優先債権として処理される未納の社会保険料や源泉徴収税などについて、弁護士が破産管財人や関係機関と調整します。
  3. 従業員対応と退職時のトラブル防止
    破産による事業終了で従業員が一斉離職する際、手続不備説明不足があると労働紛争に発展するリスクもあります。弁護士の関与により、解雇手続や保険手続、未払い賃金対応を適正に進め、紛争リスクを抑えることができます。

まとめ

破産手続後の社会保険・年金・健康保険の取り扱いは、経営者や従業員にとって見落としがちな重要項目です。下記を整理しておきましょう。

  1. 法人が破産・解散すると、代表者や従業員は国民健康保険や国民年金などへ切り替えを検討する
  2. 健康保険任意継続が可能な場合もあるが、条件を満たすか要確認
  3. 未納保険料は優先債権として扱われる可能性があり、破産財団から配当される場合がある
  4. 代表者個人も破産する場合、税金や社会保険料は非免責の可能性が高く要注意
  5. 従業員への離職票の発行や資格喪失届を速やかに行い、無保険・無年金状態を防止

こうした手続を誤ると、のちに国民健康保険料や年金保険料の追納が生じるだけでなく、経営者個人や従業員の生活基盤が揺らぎかねません。専門家と連携し、スムーズかつ正確に破産手続を進めるとともに、社会保険対応を適切に行うことが大切です。


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