はじめに

相続財産の中でも「不動産」は特に分割が難しく、評価が高額になるため、相続人間での意見対立が激化する要因となります。さらに近年では、相続人が多様化し、共働きや別居、再婚による連れ子など複雑な家族構成も増え、紛争に発展するリスクが高まっています。本稿では、不動産相続でよく起こる紛争事例を紹介し、未然に防ぐための対策や、実際にトラブルが起きた際の対応策を解説します。

Q&A

Q1.不動産相続はなぜトラブルが多いのでしょうか?

主な理由としては、

  1. 評価が大きい:土地や建物は資産価値が高く、誰がどう取得するかでもめやすい。
  2. 分割しにくい:現物を分ける現物分割が困難、共有にすると管理が複雑。
  3. 感情的対立:思い入れのある実家をめぐる兄弟・姉妹の感情対立が起きやすい。
  4. 流動性の低さ:売却で現金化すれば分割しやすいが、誰もが売却に同意するわけではない。
Q2.典型的な不動産相続紛争にはどんな事例がありますか?

代表的なものは以下のとおりです。

  1. 実家を誰が相続するかで意見が対立
    長男が住みたいが、他の兄弟は売却して現金分配を希望。
  2. 共有状態で長年放置
    兄弟3人が共有した土地を使わずに放置しているうちに固定資産税を誰が払うか揉める。
  3. 遺言書により一人が不動産を相続したが、他の相続人が遺留分を主張。
  4. 二次相続・三次相続で共有者が増えすぎて、売却するにも全員の同意が得られず、競売に至る。
Q3.不動産相続でよく使われる解決方法は何でしょうか?

主な解決方法として、

  1. 現物分割:そのまま不動産を一人が取得し、他の相続人には代償金を支払うなど。
  2. 換価分割:不動産を売却して現金を相続人に分配。
  3. 共有分割:法定相続分で共有する(リスク多め)。
  4. 調停や裁判:協議がまとまらなければ、家庭裁判所の調停・審判を利用する。
Q4.紛争を防ぐために生前にできることはありますか?

たとえば以下の対策が効果的です。

  1. 遺言書の作成:明確に「どの財産を誰に与えるか」記載し、遺留分にも配慮。
  2. 生前贈与・家族会議:生前に子へ不動産を贈与、または家族会議を開き、意思疎通を図る。
  3. 共有回避:相続人が多い場合は共有名義をなるべく避け、一人が取得し他の相続人に代償金を支払う形式にする。
Q5.紛争が起きてしまったら、弁護士に相談する意義はありますか?

不動産相続紛争は感情的対立評価額への不満などが絡みやすく、弁護士が客観的に事実と法律を整理し、公平な解決策を提案できます。交渉や調停手続きで代理人として主張立証したり、相続登記や売却をスムーズに行うための書類を準備するなどのサポートが可能です。

解説

不動産相続紛争の典型パターン

  1. 「売りたい」vs.「住み続けたい」
    子の一人が実家を相続し住みたいが、他の兄弟は資金が必要で売却して現金化を求める。結論が出ずに数年放置、固定資産税の支払いと建物の老朽化でさらに対立が深刻化。
  2. 共有が続くうちに相続が重なり共有者が増加
    兄弟で共有した土地の一人が死亡し、その子が持分を相続。すると共有者がさらに増え、合意形成が困難に。最終的に誰が管理するか決まらず荒廃地に。
  3. 土地の分筆か換価で対立
    広い敷地を分筆して各自が取得したい人と、一括で売却して分けたい人の意見が合わない。分筆にかかる費用や手間を巡って不和が続く。

紛争解決の実務方法

  1. 遺産分割協議
    • 相続人全員で合意して分割内容を「遺産分割協議書」にまとめる。
    • 不動産単独取得者が出るなら、他の相続人に代償金を支払うなどして公平感を担保。
  2. 家庭裁判所の調停・審判
    • 協議がまとまらない場合に利用。調停委員が間に入り、合意形成を図る。
    • 不成立の場合、審判で裁判官が分割方法を決定(強制力あり)。
  3. 不動産の競売
    • 最終手段として、共有者の一人が共有物分割請求訴訟を起こし、裁判所が競売を命じることがある。
    • 競売は安値落札が多く、相続人全員が損をする可能性が高い。

事前対策と紛争回避のポイント

  1. 遺言書による明示
    • 被相続人が「A土地を長男に、Bマンションを次男に」といった形で具体的に遺産配分を示しておく。
    • 遺留分にも配慮したうえで合理的な分配を定めれば、多くの争いを未然に防げる。
  2. 生前贈与・共有状態の解消
    • 親が生前に不動産を子へ贈与し、共有ではなく単独所有としておく。
    • 相続時に分筆しておきたい土地は、事前に測量・分筆を済ませておくとスムーズ。
  3. 共有管理契約
    共有を避けられない場合、共有物管理契約などを作成し、維持費や修繕費の分担、将来的な売却のルールをあらかじめ定める方法もある。

弁護士に相談するメリット

  1. 相続人間の意見調整
    不動産評価や遺留分の問題を客観的に示し、公平性を重視した分割案を提案。裁判所の調停・審判を見据えた戦略的サポートで、スムーズな解決を目指す。
  2. 共有物分割請求訴訟の代理
    話し合いが決裂しても、弁護士が訴状作成や主張立証、証拠収集を行い、最終的に裁判所で競売や分割方法の決定を得る場合でも安心して任せられる。
  3. 契約書や合意文書の作成
    分割協議が成立した際の遺産分割協議書共有物管理契約書などを適切に作成し、後日のトラブルを防ぐ。
  4. 弁護士法人長瀬総合法律事務所の経験
    当事務所(弁護士法人長瀬総合法律事務所)は、不動産相続紛争を解決してきた実績があり、相続税や土地家屋調査士との連携で複雑事案も円満に導いております。幅広いサポートが可能です。

まとめ

  • 不動産相続の紛争例
    • 実家をめぐる売却 vs. 居住希望の対立
    • 相続人多数で共有状態が放置
    • 法定相続分より偏った遺言で遺留分請求
    • 競売に至り安値落札で全員が損をする
  • 対処法・事前対策
    • 遺言書で具体的分配を明記
    • 共有回避や分筆など事前処理
    • 共有になった場合は管理契約でルール化
    • 協議がまとまらなければ調停・審判
  • 専門家の役割
    • 弁護士が紛争回避や交渉を主導
    • 税理士や不動産鑑定士、土地家屋調査士と連携
    • 法的に安全かつ合理的な分割を設計
  • 紛争防止のキーポイント
    • 遺言書や生前贈与など生前対策
    • 合意形成を重視し、相続人が納得できる内容に
    • 共有にする場合は明確な管理・処分ルール

不動産相続は高額資産かつ分割困難なため、些細な意見対立が大きな訴訟に発展することがあります。早期の情報収集専門家への相談で、複雑な争いを避け、円満な相続を実現することが望まれます。


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