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破産手続開始決定までの流れ:初動対応から書類準備、申立までの実務ポイント

はじめに

企業の経営が行き詰まり、資金繰りの目途が立たなくなったとき、最後の選択肢として「破産申立」を検討する場合があります。法人破産には、民事再生のような再建手続とは異なり、会社が原則として消滅することを前提とした清算のプロセスが含まれます。その最初の大きなステップが、裁判所による「破産手続開始決定」です。

しかし、破産手続開始決定に至るまでには、多くの段取りや準備が必要です。代表者や経営陣が「破産せざるを得ない」と思い立ってから、実際に裁判所が破産手続開始を決定するまでの流れを把握しておくと、不要な混乱やリスクを最小限に抑えることができるでしょう。

本稿では、破産手続開始決定までの流れにスポットを当て、その概要と実務上の注意点を解説します。会社の財務資料の整理から裁判所への申立、予納金の納付、そして最終的な開始決定まで、どのようなステップがあるのかを整理しています。万一の事態に備えて、正しい情報を押さえておきましょう。

Q&A

破産の申立をしようと決めた場合、まず何をすればいいのですか?

まずは、会社の財務状況を正確に把握し、過去数年分の決算資料や帳簿を整理することが重要です。そのうえで、弁護士などの専門家に相談し、実際に破産が最善策かどうか、あるいは民事再生や任意整理のほうが適切か検討してもらいましょう。破産を進める場合は、弁護士が必要書類のリストアップや申立書の作成をサポートしてくれます。

裁判所へ申し立てをすれば、すぐに破産手続開始決定が出るのですか?

申立があっても、裁判所が事前に書類を確認し、形式面や内容面で問題がないか審査する期間があります。予納金の納付も必要です。事案によっては数週間かかることもあり、必ずしも即日決定されるわけではありません。

予納金を納めることができないと、破産手続開始決定はもらえませんか?

はい。予納金は破産管財人の報酬や手続の費用に充てるためのものなので、これを納めなければ手続は開始できません。予納金の金額は負債額や資産状況などによって変動し、納付期限内に用意できないと申立が棄却される恐れもあります。

破産手続開始決定後は、すぐに会社は消滅するのですか?

破産手続開始決定が下ったら、破産管財人が選任されて会社の財産調査や換価が進められます。会社自体は最終的に登記上も閉鎖され消滅しますが、開始決定直後に即消滅するわけではありません。手続全体が終了するまでには、配当や債権者集会など、いくつかのステップを踏む必要があります。

解説

破産申立までの準備ステップ

  1. 経営判断と専門家相談
    経営陣が「破産しか選択肢がない」と判断する前に、民事再生や特別清算、私的整理などの他の倒産手続や金融機関との調整の可能性を検討します。最終的に破産が適切と判断されれば、弁護士に依頼し、書類準備に入ります。
  2. 財務資料・債権者リストの作成
    破産法では、破産申立の際に「債権者一覧表」や「財産目録」、過去の決算書類などを整備する必要があります。とくに債権者一覧は漏れがあると手続が滞る恐れがあるため、銀行・取引先・従業員など、すべてを網羅的にリストアップします。
  3. 申立書の作成
    弁護士が中心となり、会社の経営内容や破産に至る経緯、現在の財務状況を詳細に記載した申立書を作成します。同時に、法務局や税務署などから取り寄せる必要がある書類も準備します。
  4. 裁判所への申立・予納金納付
    申立書を裁判所に提出し、裁判所が指定する期日までに予納金(および印紙・郵券代)を納めます。ここで予納金が確保できない場合、手続自体が進行しません。

破産申立から開始決定までの流れ

  1. 申立受理・書類チェック
    裁判所は提出された申立書や添付資料をチェックし、不備があれば補正を求めます。債権者数や負債状況が大きい場合は審査に時間がかかることがあります。
  2. 面接・審尋(場合によっては省略されることも)
    裁判所が代表者や弁護士を呼び出し、破産申立に至る理由や会社の現状を確認する場が設けられる場合があります。
  3. 破産手続開始決定の発令
    書類不備や予納金不足などの問題がなければ、裁判所は破産手続開始決定を出します。この時点で破産管財人が選任され、会社財産の管理処分権は管財人に移ります。
  4. 官報公告・債権者への通知
    破産手続開始決定が出ると、官報などで公告されるとともに、裁判所は債権者へ破産手続の開始を通知します。

実務上の注意点

弁護士に相談するメリット

  1. スムーズな書類作成と申立手続
    弁護士は破産申立に必要な書類を的確に把握しており、不備のない申立書を作成することで裁判所の審査を円滑に進められます。
  2. 債権者対応の代理
    債権者からの取り立てや問い合わせを弁護士が窓口となり対応するため、経営者のストレスを大幅に軽減できます。
  3. 偏頗弁済や不正行為の回避
    破産前の財産移動には細心の注意が必要です。弁護士がリスクを事前に指摘し、適切な解決策を提示することで、不正疑惑を持たれるリスクを回避できます。
  4. 同時破産(法人・個人)への対応
    代表者個人破産も必要となる場合、一体的に手続きを進めることで重複手続を減らし、費用と時間を節約できます。
  5. 破産後のアドバイス
    破産手続が開始されたら、その後の管財人対応や書類提出、債権者集会の準備などが続きます。弁護士が継続的にサポートすることでスムーズに進行し、代表者の負担を軽減します。

まとめ

破産手続開始決定までの流れは、会社の最終的な清算に向けた第一歩となる重要なプロセスです。申立書類の不備や予納金不足など、初期段階のトラブルがあると、開始決定がスムーズに下りずに手続が長期化する可能性もあります。経営者としては、以下のポイントを意識しましょう。

  1. 他の倒産手続との比較検討
    いきなり破産に踏み切るのではなく、民事再生や任意整理の可能性をチェックする。
  2. 財務資料・債権者リストの徹底整理
    不備のない申立を行うためには、経営情報の正確性が欠かせない。
  3. 予納金の確保
    予納金が用意できなければ手続が進まない。資産処分の方法も含め、弁護士に相談。
  4. 偏頗弁済の回避
    直前期の不適切な支払いは後々トラブルを生む。弁護士のアドバイスを受ける。
  5. 個人保証の有無の確認
    代表者個人破産を同時検討する場合が多い。

破産手続は会社の終焉だけでなく、代表者や従業員、取引先に影響を及ぼす大きな決断です。正確な情報と適切なサポートを得ることで、ダメージを最小限に抑えながら、次のステップへ進む準備を整えましょう。何より、早めに弁護士法人長瀬総合法律事務所などの専門家へ相談することが、スムーズな開始決定のポイントとなります。


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