はじめに

成人式は、一生に一度の大切なイベントです。この日のために、美容室や着付けサロンにおいては、ヘアセット・メイク・着付けなどの施術を一括で行うプランが用意されることが多く、早期からの予約が殺到します。しかし、当日は想定外のトラブルが起こりやすいタイミングでもあります。

特に、施術内容をめぐるクレームや、当日キャンセル時の返金トラブルなどは、サロン側・お客様双方にとって精神的負担となりやすいものです。こうしたリスクを軽減し、スムーズに当日の施術を進めるために重要なのが、事前にしっかりとした「施術契約書」や「同意書」を交わすことです。

本記事では、成人式当日の施術契約書・同意書の必要性や、作成に当たって押さえておきたいポイントを解説します。

Q&A

施術契約書・同意書は本当に必要でしょうか?

はい。成人式は特別なイベントであるだけに、通常のヘアカットやカラーとは異なる高額プランが設定されたり、複雑な契約条件が含まれる場合があります。後日トラブルが発生した際、契約書や同意書がなければ、どこまでサロンが責任を負うのか、どのような内容を約束していたのかが不明確になり、紛争が拗れる可能性が高まります。

具体的にはどんな内容を契約書に盛り込むべきですか?

施術の詳細(ヘアスタイル・メイク・着付けなどの範囲)、料金、支払い方法、キャンセルポリシー、再施術や修正対応の可否や条件などを明記する必要があります。また、重大なトラブル(体調不良や事故など)が起きた場合の対応や免責事項についても、事前に記載しておくと安心です。

当日の流れが書面にないと問題が起こりますか?

スケジュールや施術順序が曖昧だと、「時間がなくなり中途半端な仕上がりになった」などのクレームが起きがちです。契約書や同意書に併せて、施術の流れを簡単に示した書面を用意すると、お客様の安心感を高めつつ、サロン側も時間管理がしやすくなります。

トラブルが起きた場合、契約書や同意書はどのように活用されますか?

契約書や同意書は、紛争時の証拠書類として大きな効果を発揮します。口頭の説明だけでは証拠能力が低く、後から「聞いていない」「そんな約束はしていない」と言われるリスクが高いため、書面で残しておくことが極めて重要です。

未成年のお客様の場合、保護者の同意も必要ですか?

成人式の対象は満20歳から満18歳に法改正で変化しているタイミングもあり、現場で混乱が生じています。たとえ成人年齢が引き下げられたとしても、19歳以下の方が利用する場合は、保護者の同意書を求めておく方が望ましいケースもあります。特に金額が高額なプランである場合や、後日トラブルになったときのためにも、安全策として親権者の承諾を得る仕組みを整えておくことをおすすめします。

解説

契約書・同意書が果たす役割

  1. 権利義務の明確化
    • どの施術をどこまで行い、料金はいくらなのかを明示する。
    • 追加料金やオプションが発生する場合の条件をあらかじめ定める。
  2. トラブル予防
    施術結果に対するクレームやキャンセル時の返金問題などを、事前の合意によって最小限に抑える。
  3. 法的リスクの回避
    消費者契約法や美容師法などの関連法令に違反しない形で契約を締結することで、後日の行政処分や訴訟リスクを軽減できる。

作成時の注意点

  • わかりやすい表現:専門用語を多用せず、一般の方にも理解できる文章にする。
  • 重要事項の強調:キャンセルポリシーや免責事項は太字や別枠でわかりやすく表示し、お客様が認識しやすい形にする。
  • 署名・捺印の取得:口頭説明だけでは不十分。書面に「同意しました」という形で署名・捺印をもらうことで初めて契約が成立する。
  • 未成年・学生への配慮:保護者同意の有無や年齢確認の方法をルール化する。

リスク事例と対応策

  • 「時間が合わず、ヘアメイクが中途半端になった」トラブル
    → 事前に施術時間や集合時間を決め、遅刻への対処法を明記する。
  • 「カラーがイメージと違う」「着付けがきつすぎる」等のクレーム
    → 施術前にヒアリングを行い、希望やリスクを同意書に反映しておく。
  • 「キャンセル返金してもらえない」
    → 何日前までなら全額返金、何日前からは○%を徴収など、具体的に契約書に記載。

弁護士に相談するメリット

  1. 契約書のリーガルチェック
    消費者契約法や特定商取引法、美容師法等に抵触しない文面かを専門家が確認し、問題点を修正できる。
  2. キャンセルポリシーや免責事項の整備
    不当な免責条項は無効とされるおそれがあるため、適法な範囲でサロンを守る条項設定が可能。
  3. トラブル対応のサポート
    施術結果に対する紛争や返金問題など、顧客とのトラブルが生じた場合の対応策を迅速にアドバイス。
  4. 予防策のアップデート
    法改正や消費者庁の新ガイドラインなどに合わせて契約書を見直し、常に最新の法規制に対応できる。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、成人式など特別なイベントにおける施術契約の重要性を理解し、サロンさまのリスク軽減のための書面作成やトラブル対応を幅広くサポートしています。

まとめ

成人式当日の施術は、通常業務とは異なる高額かつ特別な契約条件を伴いがちです。施術契約書・同意書をしっかりと交わすことで、お客様との認識の食い違いを防止し、もしトラブルが発生しても落ち着いて対応できる基盤を築けます。

契約書がないまま進めてしまうと、後で揉めたときにサロン側の負担が大きくなる可能性があります。大切なお客様の成人式を成功させるためにも、事前に万全の準備を行い、安心・安全な施術を提供しましょう。


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