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育児・介護休業制度のルールと実務対応:企業が知っておくべき休業取得の流れとトラブル防止策

はじめに

少子高齢化が進む日本において、育児休業介護休業は、働く人々のライフイベントと仕事を両立させるために不可欠な制度となっています。企業側も、社員のワーク・ライフ・バランスを確保する観点から、これらの制度を適切に整備・運用しなければなりません。

一方で、育児・介護休業法の改正や男女雇用機会均等法などの関連法規により、企業には詳細な規定整備や従業員への周知徹底が求められています。たとえば、育児休業期間の延長介護休業の分割取得子の看護休暇介護休暇など、制度内容は複雑化しており、理解不足や運用ミスが原因で労使トラブルに発展するケースも見られます。本記事では、育児・介護休業制度の基本と具体的運用ポイントをわかりやすく解説します。

Q&A

育児休業は誰でも取得できますか?

原則として、1歳未満の子どもを育てる従業員(有期契約社員の場合は一定の要件あり)は希望すれば育児休業を取得できます。さらに、保育園に入れないなどの事情があれば、1歳6か月や最長2歳まで育児休業を延長することが可能です。ただし、労使協定で細かい要件を設定している場合や、有期契約の雇用期間が限られている場合などは個別に確認する必要があります。

介護休業はどのような要件で取得できますか?

介護休業は、要介護状態にある対象家族を介護するために取得できます。対象家族とは、配偶者や親、子ども、祖父母、兄弟姉妹など一定範囲が定められています。1人の対象家族につき通算93日まで取得可能で、3回を上限に分割取得することもできます。さらに、短期の介護休暇(年5日または10日)や介護による所定労働時間の短縮など、複数の制度が用意されています。

会社が「業務が忙しいから育児休業を認めない」というのは違法ですか?

違法となる可能性が非常に高いです。育児休業は法的に認められた権利であり、企業は正当な理由なく取得を拒否することはできません。業務多忙や人手不足といった事情を理由に拒否すると、育児介護休業法違反として処分や労働局からの是正勧告を受ける可能性があります。

育児休業中や介護休業中の従業員の社会保険・給与はどうなりますか?

一般的に、育児休業中は給与は無給とする企業が多いですが、一定要件を満たせば育児休業給付金が支給されます(雇用保険の被保険者要件など)。社会保険料は、産前産後休業・育児休業期間については事業主負担分も含めて免除措置があります(厚生年金・健康保険)。介護休業中も同様に、給与は無給とするケースが多く、介護休業給付金が支給される場合があります。

解説

育児休業制度のポイント

  1. 取得可能期間
    • 原則として、子が1歳になるまで。ただし、保育園入園待機などやむを得ない事情があれば、最長2歳まで延長可。
    • 父母ともに育児休業を取得する場合、「パパ・ママ育休プラス」で最大2歳2か月まで延長できるケースもある(一定の要件を満たす場合)。
  2. パパママ育休プラス
    • 父母がそれぞれ育児休業を取得することで、最大で1年間(合計2年間)以上の休業を確保できる制度。
    • 改正により、出生後8週間以内に2回まで分割して育児休業を取得できる「産後パパ育休(出生後育児休業)」制度も2022年10月に施行。企業は最新のルールに対応した就業規則の整備が必要となる。
  3. 育児休業中の待遇・人事評価
    • 育児休業中は、従業員に対して給与を支払わないことが多いですが、社会保険料の免除や育児休業給付金の利用が可能。
    • 人事評価において、休業取得を理由に不利益取り扱いを行うと違法となる。復帰後の処遇や昇進・昇格の機会にも配慮が必要。

介護休業制度のポイント

  1. 取得要件と期間
    • 要介護状態の家族一人につき通算93日まで取得でき、3回を上限に分割可能。
    • 介護休業の取得中は無給が一般的だが、介護休業給付金を利用できる場合がある(雇用保険の被保険者期間など要件あり)。
  2. 介護休暇・介護短時間勤務
    • 短期的に介護が必要な場面では、介護休暇を利用できる。対象家族が1人なら年5日、2人以上なら年10日まで取得可能。
    • 介護短時間勤務は、通常の所定労働時間を短縮して勤務する制度で、育児休業と同様、企業はこれを認める義務がある。
  3. 介護離職防止の意義
    • 介護が必要な家族がいる従業員に配慮しないと、離職につながるリスクが高い。企業は人材流出を防ぐためにも、柔軟な勤務制度や在宅勤務等の選択肢を検討すべき。
    • 介護休業・介護短時間勤務などが適切に運用されれば、従業員が安心して介護と仕事を両立できる環境を整備できる。

企業が留意すべきポイント

  1. 就業規則・育児介護休業規程の整備
    • 育児・介護休業の取得手続きや申請期限、取得中の待遇、復職後の処遇など、具体的なルールを明文化する必要がある。
    • 法改正や判例の動向に合わせて規程を随時アップデートし、従業員に周知徹底することが重要。
  2. 不利益取り扱いの禁止
    • 育児・介護休業の申請や取得を理由とした解雇、降格、減給などは原則として違法。
    • 休業中や復帰後の評価を公平に行い、本人の希望や職場の状況を踏まえた適切な配置を考慮すること。
  3. 代替要員の確保と業務引き継ぎ
    • 休業取得者が出ても業務が回るよう、代替要員の派遣他部署からのヘルプ業務マニュアルの整備などを事前に準備しておく。
    • 突発的な休業(介護や子の病気など)にも対応できる柔軟な組織体制が望ましい。
  4. 男性の育児休業推進
    • 今後は男性の育児休業取得率の向上が社会的にも要請されており、企業としては男性社員にも積極的に育休を取得させる環境作りが必要。
    • 上司や人事担当者が取得を促すメッセージを発信し、働き方改革や男女共同参画の観点から取り組みを進める。

弁護士に相談するメリット

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、育児・介護休業制度の構築・運用に関し、以下のようなサポートを提供します。

  1. 就業規則・育児介護休業規程の作成・改訂
    • 最新の法令・判例に即した規程を策定し、企業ごとの実情に合わせたカスタマイズを行います。
    • 不利益取り扱いに当たらない運用を行うための文言チェックや、実務上の留意点を解説します。
  2. 従業員からの申し出対応・トラブル防止
    • 休業申し出を拒否したり、復職後のポジションに問題があったりする場合、労使紛争に発展しやすい領域です。
    • 申請時からの対応方法や、上司・管理職への指導など、具体的な防止策をアドバイスします。
  3. 万が一の紛争対応
    • 休業取得をめぐる不当解雇やハラスメント、復職後の不利益処分などが発生した場合、労働審判や訴訟を通じて企業の正当性を主張・立証します。
    • 早期解決を図るための交渉スキルや証拠管理のノウハウを提供します。

まとめ


リーガルメディアTV|長瀬総合YouTubeチャンネル

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、育児休業・介護休業に関する最新の制度解説や実務対処法をYouTubeチャンネルにてわかりやすく配信しています。具体的な事例紹介、法改正ポイント、よくあるQ&Aなど、動画で理解を深めることができますので、ぜひご覧ください。

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