Q&A

ご質問

最近、うちの会社の資金繰りがかなり厳しくて、このままでは破産を考えざるを得ないかもしれません。でも、会社が破産したら、私自身の個人の財産はどうなるんでしょう?自宅や貯金が全部なくなってしまうのか、とても不安です。どうしたらよいか、わかりやすく教えていただけませんか?

回答

ご心配はもっともです。法人破産によって、原則的には代表者個人が会社の負債を背負うわけではありません。会社と個人は法的に別人格だからです。ただし、連帯保証をしていたり、悪意や重大な過失で会社に損害を与えた場合には個人責任が発生することがあります。このような例外に当てはまる場合、代表者個人も自己破産などで債務整理を図る可能性が出てきます。一方で、法的整理手続には、個人が一定の財産を残せる仕組みや、再起業の可能性もあります。また、弁護士に相談することで、手続や準備を円滑に進め、損失を最小限に抑えることも可能です。

はじめに

本稿では、法人破産後に代表者個人の財産がどのような影響を受けるかについて、水平思考のアプローチで整理します。原則論や例外的な責任発生のケース、代表者個人が債務整理を行う際の手続、そして破産後の再スタートや弁護士に相談する際のメリットなどをまとめています。これから法人破産を検討している方、あるいは既に財務状況が厳しく今後を案じている方の参考となれば幸いです。

目次

  1. 法人破産と代表者個人財産の原則
  2. 個人が責任を負う2つの例外
  3. 代表者個人が債務を負った場合の対処法―任意整理と法的整理
  4. 個人破産手続の流れと残せる財産
  5. 破産後の再起業は可能か
  6. 弁護士に相談するメリット
  7. 弁護士法人長瀬総合法律事務所のサポート体制
  8. まとめ

法人破産と代表者個人財産の原則

会社(法人)は法律上「法人格」という独立した存在です。そのため、会社が破産しても、原則として代表者個人が会社の債務を直接肩代わりする必要はありません。会社の財産と個人の財産は別であり、これが原則的なルールです。

個人が責任を負う2つの例外

しかし、以下の2つのケースでは、代表者個人も会社の負債に巻き込まれる可能性があります。

連帯保証債務がある場合

金融機関から融資を受ける際、代表者が連帯保証人になることは一般的です。この連帯保証をしていた場合、法人破産によって会社が返済不能となると、金融機関は代表者個人に返済を求めます。結果的に、代表者個人も多額の債務を負うことになり、個人破産などの債務整理が必要になる場合が少なくありません。

悪意や重過失による任務懈怠で第三者に損害を与えた場合

代表者は、会社から委任を受けて経営を行う「受任者」として、民法第644条(「受任者は善良な管理者の注意をもって事務を処理すべきこと」)に基づく善管注意義務を負っています。

また、代表者が悪意や重過失でこの義務に違反した場合、第三者が損害を被れば、会社法429条等を根拠に、代表者個人にも損害賠償責任が及びます。

代表者個人が債務を負った場合の対処法―任意整理と法的整理

もし代表者個人が連帯保証債務や損害賠償債務を負い、返済が難しい場合は、個人の債務整理が検討されます。主な方法は以下の2つです。

  • 任意整理
    裁判所を通さず、直接債権者と交渉して利息カットや返済計画の見直しを行う方法です。
  • 法的整理
    裁判所を通じた破産手続や民事再生手続を用いる方法で、債権者の平等を確保しつつ整理を進めます。とりわけ「個人破産」では全債務の免責を求められます。また、会社の場合の「民事再生」は事業存続を図るための手続です。

個人破産手続の流れと残せる財産

個人が破産申立てを行い、裁判所が「破産手続開始決定」を下すと、以下の流れで進行します。

  • 同時廃止事件
    破産手続開始と同時に手続を終了し、免責審理へ進むケースが多く、ほぼ免責決定が得られます。
  • 管財事件
    破産管財人が選任され、資産調査や債権者集会を経たうえで手続終了となり、その後に免責可否が判断されます。

なお、個人破産でも「99万円以下の資産」は「自由財産」として手元に残せるため、すべてを失うわけではありません。この範囲内であれば、現金・預金、あるいは車等を自由に組み合わせて残すことが可能です。

また、法人の破産と同時に代表者個人の破産を申立てることで、手続の効率化や予納金の削減が図られることがあります。

破産後の再起業は可能か

破産歴があっても、再度会社を設立し取締役になることは可能です。会社法上、破産者は取締役の欠格事由とされていません。ただし、信用情報機関に破産歴が記録され、金融機関からの借入れは一定期間難しくなるため、親族からの出資、自己資金、外部出資など融資に頼らない方法での起業が求められます。

弁護士に相談するメリット

弁護士に相談することで、以下のようなメリットがあります。

  • 戦略的な方針決定
    破産以外にも民事再生や任意整理など、多様な選択肢を専門家の視点から検討できます。
  • 債権者・利害関係者対応
    専門家が窓口となり、煩雑な交渉や対応をスムーズに進めます。
  • 手続の適正実施
    書類作成や申立手続を専門家が代行するため、ミスを回避できます。
  • 将来展望の確立
    破産後の再起業や財務戦略について、実務経験豊富な弁護士が助言を行います。

こうしたサポートにより、精神的負担も軽減され、将来への見通しを立てやすくなります。

弁護士法人長瀬総合法律事務所のサポート体制

弁護士法人長瀬総合法律事務所は、企業法務や債務整理に精通した弁護士が在籍しています。

お客様の状況を丁寧に伺い、破産や民事再生、任意整理など、最適な解決手段を総合的な観点からご提案いたします。
破産手続を選択した場合は、書類作成や手続準備、債権者対応、従業員への説明など、破産に関わる局面でサポートします。

当事務所は、多数の顧問先との豊富な実績とノウハウを活用し、依頼者を最善の方向へサポートします。

まとめ

本稿では、法人破産後の代表者個人財産がどうなるか、原則から例外、個人債務整理の手続、破産後の再スタート、弁護士活用のメリットまで解説しました。

原則として会社と個人は別人格ですが、連帯保証や悪意・重過失による任務懈怠がある場合には、代表者個人も負債を抱える可能性があります。こうした場合でも、債務整理手続を活用し、必要な財産を確保しつつ将来に向けた準備が可能です。

状況悪化を防ぐためにも、お早めにご相談ください。

動画・メルマガのご紹介

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、企業法務に関する様々な問題を解説したYouTubeチャンネルを公開しています。企業法務でお悩みの方は、ぜひこちらのチャンネルのご視聴・ご登録もご検討ください。 

【企業法務の動画のプレイリストはこちら】

また、当事務所では最新の法務ニュースやセミナーのご案内等を配信するメールマガジンも運営しています。ご興味がある方は、ご登録をご検討ください。

【メールマガジン登録はこちら】


ご相談はお気軽に|全国対応

 


トラブルを未然に防ぐ|長瀬総合の顧問サービス

長瀬総合法律事務所の顧問弁護士サービス