Q&A

中小企業経営者からの質問

最近、取引先からの支払いが滞っていて困っています。自社で電話やメールで支払いをお願いしても、なかなか反応がなく、債権回収が進みません。こうした場合に、どんな方法で債権を回収できるのか、また弁護士に相談することにはどのようなメリットがあるのでしょうか?

取引先との関係をなるべく悪化させず、スムーズに未払い債権を回収するための具体的なステップを知りたいです。

弁護士の回答

債権回収は、企業にとって生命線となる資金繰りを守る上で非常に重要な課題です。まずは、電話や面談などの任意交渉や、内容証明郵便で支払いを催促するなどの初期的な対応が考えられます。これらで支払いが得られない場合には、民事調停、支払督促、少額訴訟、そして通常の訴訟手続など、法的手段を活用する選択肢があります。これらの手段を適切に使い分けることで、相手方に対して法的な圧力をかけ、回収可能性を高めることができます。また、弁護士に相談すれば、相手方との交渉戦略の立案から、法的手続の申立て、強制執行手続まで一貫してサポートでき、時間と労力の削減やリスク低減が期待できます。

はじめに

上記のQ&Aでお示ししたように、債権回収は企業経営上避けて通れない課題です。ここからは、債権回収に役立つ代表的な6つの手続・方法について、ポイントや流れを整理します。また、弁護士に相談することで得られるメリットや、日頃からの売掛金管理の徹底など、経営者として知っておきたい事柄についても網羅的にご紹介します。これらを理解することで、迅速かつ適切な回収行動が可能となります。

目次

  1. 債権回収の重要性
  2. 弁護士に相談するメリット
  3. 債権回収のための具体的な6つの方法
  4. 売掛金管理と事前対策の重要性
  5. まとめ

債権回収の重要性

企業が商品やサービスを提供し、その対価である売掛金や債権を適時に回収できない場合、資金繰りに深刻な悪影響が生じます。未回収が長期化すれば、運転資金が不足し、新たな取引や投資に支障が出ることさえあります。債権回収は、単なる「お金を取り戻す」行為ではなく、「企業活動を安定的に継続するための基盤作り」です。この基盤を固めるためにも、適切な回収手段とその活用タイミングを理解しておくことが重要となります。

債権回収における手段は多岐にわたり、まずは任意の交渉(電話や面談)や書面通知(内容証明郵便)といった比較的穏便な方法から始まり、場合によっては裁判所を利用した法的手続(民事調停、支払督促、少額訴訟、通常訴訟)へとステップアップします。各手続には特徴や留意点があり、これらを正しく理解することで、コストや時間を最小限に抑えながら回収の実効性を高めることが可能となります。

弁護士に相談するメリット

債権回収において、弁護士への相談・依頼には大きなメリットがあります。

  1. 法的リスクの把握と戦略的対応
    弁護士は法律知識と経験に基づき、相手方の態度や財産状況を踏まえて最も効果的な回収手段を検討します。これにより、無駄な紛争拡大や費用・時間ロスを避けることが可能となります。
  2. 交渉力の強化
    弁護士が代理人として交渉することで、相手方に「法的措置も視野に入れている」というプレッシャーを与えることができ、早期和解や支払いを引き出す効果が期待できます。
  3. 手続の適切な遂行
    内容証明郵便の文案作成、民事調停や支払督促、訴訟手続での書類作成・提出、期日の対応など、煩雑な実務対応を弁護士が担うことで、経営者は本業に専念できます。
  4. 強制執行への対応
    判決や調停調書、支払督促正本などを得た後、実際に回収を行うには強制執行手続(財産の差押えなど)が必要なケースもあります。弁護士はこの執行手続にも精通しており、実効性のある回収を実現できます。

債権回収のための具体的な6つの方法

ここからは、代表的な6つの回収手段について、分かりやすく解説していきます。これらは、状況に応じて段階的に活用することが多く、まずは穏便な方法から始め、解決が難しければ法的手続を段階的に検討する流れが一般的です。

任意交渉(電話・面談による催促)

概要

もっとも基本的な回収方法は、債務者に対して直接電話をかけたり、面談を行うことで支払いを促すことです。ここでは、単に「いつ払いますか?」と尋ねるだけでなく、支払い条件の見直しを行ったり、分割払いに応じる代わりに連帯保証人や抵当権などの担保提供を求めたりすることで、将来的な不払いリスクを軽減できます。

ポイント
  • 交渉の際は、簡易な記録(メールやメモ)を残しておくと、後々の紛争時に有利です。
  • 交渉をズルズルと長引かせず、支払い期限は短期的に設定することで相手の本気度を確認できます。

内容証明郵便による督促

概要

内容証明郵便は、郵便局が「いつ、誰に、どんな内容の書面を出したか」を証明する制度です。これにより、相手方に対し正式な警告の意思表示を行えます。多くの場合、内容証明郵便には「支払期限までに履行しない場合には、法的措置を検討する」旨が記載され、心理的圧力を与えることができます。

ポイント
  • 送付により、相手方は「既に法的手段が視野に入っている」ことを強く認識します。
  • 文面は明確かつ冷静な表現に努め、後々訴訟へ進む可能性を考慮した内容にすることが大切です。
  • 内容証明そのものは法律で義務付けられた手続ではありませんが、後の法的手続(民事訴訟法全般)において有利な証拠となり得ます。

民事調停手続

概要

民事調停手続は、裁判所を利用しつつ話し合いによる解決を試みる手続です。申立は弁護士がいなくても可能で、裁判官や調停委員を交えて和解案を模索します。相手方が期日に出席し、合意すれば「調停調書」が作成され、これは判決と同等の効力を持ちます(支払いがなければ強制執行可能)。

ポイント
  • 訴訟よりも手続が簡易で柔軟性があるため、関係修復を重視しつつ解決を目指す場合に適しています。
  • 相手方が出席しなければ合意は成立せず、一定の実効性確保には限界があります。

支払督促手続

概要

支払督促手続は、「支払督促」により、債務者に支払いを命じる手続です。債務者が異議を出さなければ、督促は仮執行宣言付き支払督促となり、判決と同様の効力を有します。異議が出れば通常訴訟へ移行しますが、異議がなければ、書面手続のみで迅速な債権確定が可能です。

ポイント
  • 手続が比較的簡便で、費用も軽減できることが多い。
  • 異議が出た場合は、時間がかかる通常訴訟に移行するため、相手方の性質や反応を見極めた上で活用すべきです。

少額訴訟手続

概要

少額訴訟手続は、60万円以下の金銭支払請求に限定した特別な訴訟手続です。原則1回の期日で審理を終結し、即日判決が出ることも多く、時間と費用を節約できます。ただし、相手方が通常訴訟への移行を求めれば、結局通常訴訟になり時間がかかる場合もあります。

ポイント
  • 少額な未回収債権の回収に適しています。
  • 手続の迅速性が特徴で、早期解決を重視する場合に有効です。

通常の訴訟手続

概要

通常訴訟は、債権回収の「正攻法」です。訴状提出から判決確定まで一定の時間を要しますが、一度勝訴判決を得れば、強制執行(不動産や預金口座などの差押え)が可能です。また、訴訟途中で分割払いによる和解が成立するケースも少なくありません。

ポイント
  • しっかりと証拠を整備し、勝訴判決を得れば確実な回収につなげられます。
  • 弁護士を付けることで、法的主張・立証を的確に行い、相手方への圧力を一層強化できます。

売掛金管理と事前対策の重要性

法的手続に至ることは、企業にとって手間や費用、関係悪化のリスクを伴います。これを避けるためには、日頃から売掛金管理を徹底することが有効です。例えば、取引条件を明確化し、支払い期限を過ぎた場合には即時に督促をかけるなど、早期対応が肝心です。また、分割払いに応じる際には保証人や担保を取得し、リスクを最小限に抑えましょう。

日常的な管理の強化こそが、回収不能リスクを低減し、結果として顧客関係を長期的に安定させる鍵となります。

まとめ

以上のように、債権回収には多様な手法が存在します。電話や面談、内容証明といった初期対応から、民事調停、支払督促、少額訴訟、通常訴訟へと段階的にステップアップすることで、状況に応じた最適解を探れます。また、弁護士に相談することで、法的知識や経験を活かした戦略的かつ効率的な対応が可能となり、貴重な経営資源を本業に集中させることができます。

債権回収は、単なる「お金を取り返す」ための作業ではなく、「企業の信用と財務基盤を守り、安定した成長を支える」ための重要なプロセスです。事前のリスク管理、適切な交渉・手続の選択、そして専門家の活用を組み合わせて、ぜひより良い経営環境を築いてください。

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