営業秘密とは?営業秘密管理のポイントと対策
はじめに
営業秘密は企業が持つ重要な情報資産の一つであり、これを適切に保護することは、企業の競争力維持や発展に不可欠です。しかし、営業秘密に対する不正行為は多岐にわたり、企業にとって大きなリスクとなります。ここでは、営業秘密とは何か、不正行為に該当するケース、そして企業が取り得る対策について解説します。
Q&A形式による紹介
Q: 営業秘密を適切に管理するためには、どのような点に注意すればよいですか?
A: 営業秘密とは、企業が保有する技術的・営業上の情報のうち、秘密として管理されており、事業活動に有用で、公然と知られていない情報を指します。営業秘密を適切に管理するためには、「秘密管理性」「有用性」「非公知性」の3要件を満たすことが重要です。具体的には、情報を機密として管理し、アクセス制限や秘密保持契約を通じて漏洩を防止しなければなりません。また、万が一不正行為が発生した場合の法的措置も事前に検討しておくことが必要です。以下では、営業秘密の定義や不正行為の具体例、企業が講じるべき対策について解説します。
営業秘密の定義と要件
営業秘密とは、不正競争防止法第2条第6項において「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術的又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」と定義されています。これに該当するためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
1. 秘密管理性
情報が秘密として管理されていることを証明するためには、経済合理性のある秘密管理措置を講じ、情報にアクセスした者がその情報が営業秘密であることを認識できる状態にしておく必要があります。たとえば、「機密」や「○秘」の表示をした書類を金庫に保管したり、電子データにアクセス制限を設けたりすることが有効です。
2. 有用性
営業秘密として保護される情報は、事業活動に有用であることが求められます。これは、製品の設計図や製法、顧客名簿、販売マニュアルなどが該当し、社会通念上保護に値しない情報(犯罪の手口や脱税の方法など)は除外されます。
3. 非公知性
情報が公然と知られていないことが条件です。第三者がその情報を知っている場合でも、守秘義務が課されていれば「非公知性」は失われません。また、リバースエンジニアリングによって容易に技術情報を明らかにできる場合には「非公知性」を喪失する可能性があります。
営業秘密に係る不正行為の種類
不正競争防止法第2条第1項では、営業秘密に係る不正行為が定義されており、以下の行為が該当します。
1. 営業秘密の不正取得行為、不正取得後に営業秘密を使用・開示する行為(4号)
窃盗、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為です。また、不正に取得された営業秘密を使用・開示する行為も含まれます。
2. 不正取得された営業秘密を悪意又は重過失で取得・使用・開示する行為(5号・6号)
不正取得された営業秘密を、悪意または重過失で取得、使用、開示する行為です。悪意とは、不正行為が介在していることを知っている状態、重過失とは、通常の注意義務を果たせば知り得た状態を指します。
3. 保有者から示された営業秘密を図利加害目的で使用・開示する行為(7号)
雇用契約やライセンス契約に基づき営業秘密を示された者が、自己や第三者の利益を図る目的、または保有者に損害を与える目的で営業秘密を使用・開示する行為です。
4. 不正開示された営業秘密を悪意又は重過失で取得・使用・開示する行為(8号・9号)
営業秘密を取得する際、法律上・契約上の守秘義務に反して開示されたことを知っていたか、通常の注意義務を果たせば知りえたにもかかわらず、取得・使用・開示する行為です。
営業秘密管理のポイントと対策
営業秘密を守るためには、適切な管理体制を構築し、不正行為を防ぐ対策を講じることが求められます。以下は、企業が講じるべき主な対策です。
1. 秘密管理性を担保するための措置
機密情報にアクセスできる者を限定し、情報管理体制を強化することが重要です。情報には「機密」「社外秘」などの表示を行い、秘密管理性を示すとともに、データへのアクセス制限を設けることが効果的です。
2. 就業規則や秘密保持契約の整備
営業秘密の管理に関する就業規則を作成し、従業員や役員と秘密保持契約を締結することにより、法的保護の枠を広げます。また、競業避止義務を課すことで、退職後の競合企業への転職を防止し、情報流出のリスクを軽減できます。
3. 物理的および技術的セキュリティ対策の実施
営業秘密が記載された書類を金庫や施錠できるキャビネットに保管したり、技術情報を保護するためにネットワークのアクセス制限やデータの暗号化を行うことも必要です。
営業秘密に係る不正行為が行われた場合の対応
万が一、不正行為による営業秘密の漏洩が発生した場合には、迅速かつ適切な対応が求められます。
1. 差止請求と損害賠償請求
営業秘密に係る不正行為に対しては、まず差止請求を行い、不正行為の継続を防ぎます。その上で、漏洩によって生じた損害について損害賠償請求を行います。
2. 民事・刑事手続の検討
不正行為の内容によっては、刑事事件として告発し、刑事罰を求めることも検討します。不正競争防止法第21条では、営業秘密侵害罪として「十年以下の懲役若しくは二千万円以下の罰金」が科される場合があります。
まとめ
営業秘密の保護は企業にとって極めて重要な課題です。企業は秘密管理性、有用性、非公知性の要件を満たすことで、法的保護を受けることが可能です。また、就業規則や秘密保持契約の整備、物理的および技術的なセキュリティ対策を講じることで、より確実に営業秘密を守ることができます。
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